経営お役立ちコラム
■はじめに
我が国における中小企業は、全企業数の約99.7%、従業員数は全体の約70%、付加価値額は全体の約56%を占める地域経済や雇用を支える極めて重要な存在です。本稿では、中小企業白書を手がかりに、2015年以降の動向を中心に、中小企業の過去・現在・未来を概観します。
■ 2015年以降の動向からみる過去
2015年以降、中小企業白書では「人手不足の深刻化」「後継者難」「地域経済の低迷」など、複合的な経営課題に直面してきました。特に経営者の高齢化が進展する中、2023年時点で後継者不在率は54.5%となっており、事業承継の停滞が大きな社会課題として浮上しました。中には後継者が見つからずに黒字でもやむなく廃業する事業者も多く、地域経済の担い手の喪失が懸念されています。
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1. 香りがもたらすビジネス効果
心地よい香り(以下、アロマ)の力を活用したマーケティングは「香りマーケティング」と呼ばれ、近年導入する企業が増えています。アロマはストレスや疲労感の軽減、集中力の向上にも効果があると考えられ、接客業だけでなく、オフィスの生産性向上や健康経営にも活用されています。
2. 香りが脳にもたらす影響
香りが記憶や感情に強く結びつく現象を「プルースト効果」と呼びます。嗅覚が感情や記憶を司る大脳辺縁系を刺激することにより、他の感覚よりも感情や記憶に深く影響を与え、その香りに関連する印象を長期間にわたって記憶に残します。また、アロマは嗅覚を通じて自律神経にも作用し(*1)、これによりリラックス効果や集中力向上効果が期待されています。
3. アロマに…
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◆はじめに
そもそもリスクマネジメントとは何なのか?
少々古いが2016年の中小企業白書では「リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失等の回避又は低減を図るプロセスをいい、ここでは企業の価値を維持・増大していくために、企業が経営を行っていく上で障壁となるリスク及びそのリスクが及ぼす影響を正確に把握し、事前に対策を講じることで危機発生を回避するとともに、危機発生時の損失を極小化するための経営管理手法」と定義している。
最近では外注先の業務停止が及ぼす自社への連鎖的影響の拡大や、従業員の法令違反による品質問題の発生等の新たなリスクが顕在化しており、企業がリスクマネジメントを積極的に行うことが求められている。では、中小企業のリスクマネジメントの実態はどうであろうか?
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1.はじめに
「今年こそイノベーションに着手する!」と一度は思い立った中小企業は数多くあるのではと思います。2021年の東京商工会議所調査(注1)によれば、都内中小企業の約70%は既に何らかのイノベーションに着手しています。一方で、差別化に繋がる“革新的イノベーション”となると約30%であり、さらに“新商品・新事業開発に関するイノベーション”は約21%程度にとどまっています。また、外部連携してイノベーションする場合の相手先として、「異業種」「提携先」「大学・高等教育機関」「研究機関」などを“これまで以上に新たに連携を希望する相手”と回答する割合が他を大きく上回っています(注2)。このあたりに経営者の期待と悩みが垣間見てとれます。
2.企業活動のどの分野からはじめるのか、特別な着想が必…
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1.はじめに
2020年の国の脱炭素宣言から、官民挙げた“脱炭素“の動きが加速しています。これに伴い、国や自治体から様々な補助事業が打ち出され、環境分野は新たなビジネス領域として注目を集めています。中小企業にも脱炭素経営への取り組みが求められると共に事業機会が増えつつありますが、脱炭素経営とは具体的にどのようなものでどこから取り組みに着手すればよいのでしょうか。
2.そもそも脱炭素経営に取り組む必要あるのか?
経済産業省によれば、中小企業の約70%が何らかの形で経営に影響を及ぼすと考えているものの、80%は対策を立てていない状況です(注1)。その理由としては、コストが高い、規制やルールなど対応に関する情報が乏しい、自社経営には関係ないと考えている、などが挙がっています。必要性は感じ…
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◆はじめに
本は1人で読むもの。つまり「独」書であるという概念を打ち破るのが読書会です。テーマに沿った本を持ち寄って、コーチングの「傾聴」、ファシリテーションの「対話」、人的資本経営の「心理的安全性」を盛り込んだ手法です。所要時間は2時間ほど。事前に本を読んでこなくても大丈夫。参加のハードルが低いのが大きな特徴です。
◆中小企業を取り巻く課題
人手不足が深刻になるなか、中小企業が新規採用を行って人員を確保することはたいへんな困難を伴います。これからの時代は、ますます生産性を向上させ、限られた人員で業務をこなすという方針を採用しなければ、事業そのものが立ち行かなくなります。
さらに、新規事業や顧客の開拓、SDGsや対話型AIの登場など、次々とやってくる外部環境の変化にも対応して…
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◆はじめに
海外子会社へのガバナンスのポイントとして、第1回のコラムでは「本社と現地経営陣とのコミュニケーション」、第2回のコラムでは「現地スタッフの労務管理」について述べた。第3回の今回は「本社による内部監査の実施」について筆者の経験を中心に述べることとしたい。
◆内部監査の実施
海外子会社の実態を把握するためには、本社による定期的な内部監査が極めて有効である。それには、派遣する監査スタッフの養成や出張のための交通費、宿泊代など相応の費用負担が発生するが、これは本社による経営ガバナンスを効かせるための必要経費であり、これを出し惜しむと後々潜在的なリスクが顕在化することになり、却ってコストが嵩むことになりかねない。
中小企業の海外子会社の決算は現地会計事務所にて取りま…
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◆はじめに
海外子会社へのガバナンスのポイントとして前回のコラムでは「本社と現地経営陣とのコミュニケーション」について述べた。今回は「現地スタッフの労務管理」について筆者の経験を中心に述べることとしたい。
◆現地スタッフの労務管理
現地の法制、行政、労務、商慣習などが日本とは異なっている海外子会社を経営するにあたって、それらを見知っている現地スタッフをいかに活用できるかが大きなポイントとなる。日本人派遣者は就労ビザ枠が限られていることに加え、人件費は現地スタッフに比べ高く、派遣できる人数には限度がある。そのため海外子会社の経営を安定させるには、現地スタッフを育成し、戦力化させることが必須である。
まずは、現地スタッフと海外子会社の経営理念・経営方針を共有することから始…
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◆ はじめに
1980年代の円高、90年代の経済のグローバル化、2000年以降の少子高齢化による国内市場の伸び悩みなどを受け、海外子会社を設立し、事業展開することで活路を見出している企業が増加している。しかしながら、人材に余裕のない中小企業にとって、海外子会社の経営は、その国の法制、行政、労務、商慣習などが日本とは異なっていることもあり、極めて難しいといえる。そうした状況で海外子会社を上手く管理していくには、日本本社の踏み込んだ支援によりガバナンス体制を構築していくことが必要である。特に財務や人事などについては、現地任せにせず、本社できちんとルールを決め、確実にフォローすることが大切である。
筆者は、本社の海外子会社管理の責任者として多くの傘下子会社の運営管理を支援する立場にあっ…
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◆健康経営とは
経済産業省のHPでは、健康経営とは「従業員の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と表現されています。
また健康経営を推進する政策の代表的なものに「健康経営優良法人の認定制度」があり、企業規模に関わらず健康経営への関心は高まっています。
◆中小企業で健康経営が求められる背景
健康経営の取り組みが求められる背景として、下記3点が挙げられます。
①少子高齢化
現役世代の人口は年々減少傾向です。そのため企業が今後も存続するためには、新たな労働力確保だけではなく既存従業員の生産性向上が不可欠です。
②採用難航
採用についても、大学…
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