経営お役立ちコラム
少ない経営資源でイノベーションに挑戦!

1.はじめに
「今年こそイノベーションに着手する!」と一度は思い立った中小企業は数多くあるのではと思います。2021年の東京商工会議所調査(注1)によれば、都内中小企業の約70%は既に何らかのイノベーションに着手しています。一方で、差別化に繋がる“革新的イノベーション”となると約30%であり、さらに“新商品・新事業開発に関するイノベーション”は約21%程度にとどまっています。また、外部連携してイノベーションする場合の相手先として、「異業種」「提携先」「大学・高等教育機関」「研究機関」などを“これまで以上に新たに連携を希望する相手”と回答する割合が他を大きく上回っています(注2)。このあたりに経営者の期待と悩みが垣間見てとれます。

2.企業活動のどの分野からはじめるのか、特別な着想が必要か?
イノベーションといっても、定義も様々で対象分野も多岐にわたります。例えば、企業活動の“何が変化するのか”の視点では、「プロダクツ・サービス」「プロセス」「メンタル」に大別されます。また、“どう変化するのか”では、「破壊的」「持続的」に分けられます。
対象とする分野によって進め方も変わってきますが、例えば、「プロダクツやサービス」「プロセス」の分野を対象にして、ヘンダーソンとクラークによる「要素(コンポーネント)」と、「全体構成(アーキテクチャ)」に基づく4種類モデル(注3)を用いて既往事例を整理してみると、必ずしも「破壊的」な着想でなくても、既往の取り組みの見直しで様々なイノベーションになっていることがわかります。いずれにしても、イノベーションの元になるアイデアをいかに出すかが重要にはなります。

3.“オープンプラットフォーム”で高度なR&D機関を巻き込もう!
従来、イノベーションは専ら社内だけで自前に頼る垂直統合型で行われていましたが、アイデアの枯渇、持続性の欠如、コスト高騰などその限界が顕在化してきたため、米国の経済学者ヘンリー・チェスブロウは“オープンイノベーション”の概念を提唱しています(注4)。
オープンイノベーションとは、「社内外の技術やアイデアの相互の流動性を高め、組織内で創出されたイノベーションをさらに組織外に連携し展開するモデル」といった概念です。とはいえ、日々の忙しさの中では、誰を巻き込んだら良いのか考える余裕がないものです。
もちろん、東京都など自治体には相談窓口があり、東京商工会議所はイノベーション専用ポータルサイトを用意してサポートしています。さらなる方法として、アイデアを発展させ製品・システム化するためには、実は高度なR&D(研究開発)機関である大学などを巻き込んでオープンプラットフーム化して、自社だけでは難しいハイレベルな製品やビジネスモデルに仕立てていくことは有効な手段なのです。全国にはいろいろな視点から取り組みをしている研究室が多数あります。また、中小企業と大学の組み合わせは、国・自治体等の補助金を獲得するうえでも良い相性となります。
2019年の段階では、大学と企業の連携開発件数は約29,900件を超え、そのうち30%が中小企業です(日本政策金融公庫論集第44号、2019年(注5))。約90万社ある建設・製造・情報系の中小企業のうちわずか1%にも満たない状況です。ちなみに中小企業との連携数1位は東京大学なのです。敷居は決して高くなく大学も窓口(産学連携本部等)を用意しその機会を待っています。

4.イノベーションアイデアは身近な課題解決からまずは取り組もう!
革新的なイノベーションを考えねば!と意識しすぎると往々にして行き詰りがちです。まずは、日常の活動や生活の困りごとをやりくりでかわさず解決アイデアを考え続けることで、身近な課題解決からイノベーションにつなげることは十分に可能です。
例えば、以下のような事例が見られます。
①建設現場施工管理支援システム:一人で何十件もの現場を回さねばならない中小建設会社の手戻り・施工ミスを減らすことに貢献、現場変更に追随したコスト管理も可能。小規模事業者の多い当業界で急速に広がりつつある。
(参考例:http://it.kensetsu-plaza.com/cad/index.html
②旅館運営支援システム:例えば、鶴巻温泉の旅館経営者が開発した予約管理・裏方作業管理などの一体的な運営支援クラウドシステム。自身の旅館の経営改善のために開発したものが今や300以上の旅館で導入。
(参考例:https://www.jinya-connect.com/

以上はごく一部の例ですが、身近な課題をそのままにせずに率直に取り組んだもので、特別なものではありません。ただし検討を進めるには、突拍子もないアイデアも含めて許容し解決の努力を継続するといった意識共有が出来るかどうかが成否に大きく影響しそうです。

◆参考文献
1)「中小企業のイノベーション実態調査」報告書:東京商工会議所、2021年
2)2021年版 中小企業白書:中小企業庁HP
3)Rebecca Henderson and Kim Clark:「Architectural In novation: The Reconfiguration of Existing Product Technologies and the Failure of Established Firms」、 Administrative Science Quarterly、1990年
4)ヘンリー・チェスブロウ:「Open Innovation: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology」、2003年
5)日本政策金融公庫論集第44号 、2019年:日本政策金融公庫HP


<<執筆者>>


山村 真司(やまむら しんじ)
2010年 中小企業診断士登録、博士(工学)、技術士、認定都市プランナー
不動産・都市・環境・脱炭素経営コンサルタント、不動産開発事業からまちづくり、脱炭素経営やイノベーション推進まで専門分野として取り組んでいる。

23/07/31 21:00 | カテゴリー:, ,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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