経営お役立ちコラム
環境配慮・脱炭素経営をはじめるために

1.はじめに
2020年の国の脱炭素宣言から、官民挙げた“脱炭素“の動きが加速しています。これに伴い、国や自治体から様々な補助事業が打ち出され、環境分野は新たなビジネス領域として注目を集めています。中小企業にも脱炭素経営への取り組みが求められると共に事業機会が増えつつありますが、脱炭素経営とは具体的にどのようなものでどこから取り組みに着手すればよいのでしょうか。

2.そもそも脱炭素経営に取り組む必要あるのか?
経済産業省によれば、中小企業の約70%が何らかの形で経営に影響を及ぼすと考えているものの、80%は対策を立てていない状況です(注1)。その理由としては、コストが高い、規制やルールなど対応に関する情報が乏しい、自社経営には関係ないと考えている、などが挙がっています。必要性は感じながらもしばらくは様子見といった印象です。
しかし、脱炭素の取り組みは今後一層加速し範囲も広がると予想されるため、このまま遠巻きに見ていることも難しいと思われます。今後、脱炭素関係の法整備も一層強化されると推測されるため、早めに取り組みを始めたほうが持続可能な経営にも資するのではないでしょうか。

3.脱炭素経営とは?どのような分野が対象なのか?
環境省及び経済産業省によれば、「脱炭素経営とは、気候変動対策の視点を織り込んだ企業経営のことで、経営リスク低減や成⾧のチャンス、経営上の重要課題として全社を挙げて取り組むもの」と定義しています。中小企業にとっては脱炭素に取り組む必然性が理解し難いと思われますが、実は、電気や燃料などのコスト削減だけでなく、経営における幅広い分野を包含しており、環境的視点からビジネスチャンスを創出するきっかけにもなるのです(図1) 。

図1 脱炭素経営の対象分野の例

4.どうやって脱炭素経営を進めるのか?
中小企業の業種業態を問わず、2050年カーボンニュートラルに向けた自社の目指す姿を定めた上で、どのような事業分野であっても共通のプロセスとして、以下のプロセスで検討を進めることが実現に繋がります(注2)
①知る:情報の収集、方針の決定(経費削減、売上げ向上)
②測る:CO2排出量計算、削減ターゲットの特定
③減らす:削減計画の策定と計画実行
。CO2削減は、照明や空調の電力削減だけでなく、ITシステム導入による経理や調達の効率化等も該当します。新たなCO2削減技術や商品・システムの開発・販売も脱炭素経営の一環です。
CO2排出量という指標を通じ、経営改革の取組がほぼ定量化・可視化出来るということになります。もちろん、削減できたCO2は価格換算が可能です。
CO2排出量の可視化を通じてをCO₂を削減する対象を絞り込み、限られた予算で必要かつ十分な対策を行うことが最も重要です。そのために、自治体等も様々な脱炭素経営のアドバイザリ支援を行っています(注3)。

5.脱炭素経営推進のサポートは?
中小企業にとっては、従来のIT導入補助金に「排出量の見える化システムの導入」や、ものづくり補助金の「グリーン枠」、事業再生構築補助金の「グリーン成長枠」などが追加されています。さらに、全国の金融機関では、温暖化対策状況を加味した融資条件の優遇等を受けられる機会として、企業の環境配慮活動を勘案した低利融資商品が出てきており、資金調達機会の拡大にもなっています。詳細は全国の金融機関HPを参照してください。うまく組み合わせることで脱炭素活動をきっかけとしたイノベーション推進の機会にもなるのではないでしょうか。

◆参考文献
1)中小企業のカーボンニュートラル施策について:経済産業省HP、2022年
2)企業の脱炭素経営への取り組み状況:環境省HP
3)例えば、東京都中小企業振興公社「ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援」:東京都中小企業振興公社HP


<<執筆者>>


山村 真司(やまむら しんじ)
2010年 中小企業診断士登録、博士(工学)、技術士、認定都市プランナー
不動産・都市・環境・脱炭素経営コンサルタント、不動産開発事業からまちづくり、カーボンニュートラルやスマート化などの環境配慮経営まで専門分野として取り組んでいる。

23/06/30 21:00 | カテゴリー:, ,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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