経営お役立ちコラム
Z世代と共に働くということ(第3回)Z世代の適性と配置

前回に引き続き、Z世代との協働に焦点を当てます。このシリーズではZ世代について3回に分けて考察しています。前回までのZ世代の働く価値観や接し方、コミュニケーション方法に引き続き、今回はZ世代にとっての適性と配置について触れます。

♦Z世代にとっての働く意味
第1回でも述べたように、終身雇用が崩壊している昨今、Z世代は一つの企業でずっと働くとは考えない傾向にあります。また、個人差はありますが、「人間関係」「タイパ(時間対効果)」「自己成長」といった点を重視する傾向にあります。
そのため、この会社の将来はどうなるのだろうか、今の仕事が自己の成長につながるのか、時間を無駄にしているのではないか、ここで働いていても将来につながらないのではと悩むことも多く、人間関係が合わないと思えば無理をして続けようと思わない傾向にあります。企業や組織に対して一体感を持とうとするよりは、一歩距離を置いた視点で関わることも多いです。

♦2種類の適性
さて、このようなZ世代の業務適性を見ていく前に、人材の分け方について考えたいと思います。近頃は個人の性格や特性に基づき様々な分類方法が考案されていますが、私がこれまで人を見てきた経験では、一つの切り口として、「オペレーション人材」と「イノベーション人材」の2種類に分かれるように思えます。
オペレーション人材とは、決められたことを間違いなく正確にこなすことを得意とし、定型業務や明確な正解がある課題に強いタイプとなります。従来の日本ではこのタイプが強く求められる傾向にありました。
一方で、イノベーション人材は、明確に答えのない課題に対して仮説を持って検証することを得意とし、非定型業務や明確な正解がない課題に強いタイプです。このタイプは、企画や営業、挑戦、不確実性に強い傾向があります。
注意しなければならない点として、これらの両立は難しく、両方の要素を持つ人材は少ないということです。私の周りでも、新しいアイディアや発想を生み出すことが得意なイノベーション人材はオペレーション的な業務を苦手とする傾向が強いように思えます。

♦必要な配置と対話
このような適性の個人差があることを踏まえ、経営者や管理者はどのようにZ世代の配置や育成をすればよいのでしょうか。
注意が必要な点として、イノベーション適性はオペレーション業務の先にあるとは限らないことが挙げられます。若手のメンバーは通常、オペレーション的な仕事を任せることが多くなります。しかし、イノベーション適性の高い人であっても、オペレーション的な適性が低いことで低評価となり、イノベーション的な仕事の機会を与えない、ということにならないように注意したいです。そのような状況になれば、特にZ世代では、このまま会社にずっと居ても冷遇され続ける、時間の無駄であると感じ、退職を選ぶ可能性が高くなります。
必要な対応としては、可能であれば配置の変更を行うこと、及び今の業務と将来について丁寧に話し続けることです。他の世代以上に、Z世代にとってはその人の能力や適性、将来に向き合ってもらえている、という感覚が重要になります。配置の変更が難しくても、「若手のうちはどうしてもあなたの適性では活躍が難しい業務が多いが、あなたのことをちゃんと見ている。将来的にはあなたの能力を発揮できる仕事に配置していきたい。今は辛いかもしれないけど頑張りをちゃんと見ている」といったメッセージを繰り返し送ることが大事になります。
その人の能力や適性、将来に向き合いメッセージを送ることは、適性がある仕事をしているZ世代に対しても大切です。メッセージを十分に言わなくても思いが伝わることを期待しない方が良いです。メッセージがなく、自身を尊重されていない、と感じれば、Z世代の多くは何も言わずに静かに見切りを付けます。
私が見聞きした限りでは、会社は将来のキャリアについて説明していても、数が少ない場合にZ世代にとっては何も言われていないと感じて退職する場合が多いように思えます。たとえ会社が将来や配置を考えていて説明していたとしても、それを本人に繰り返し丁寧に説明しなければ伝わらないと思ったほうが良いです。定期的な面談以外にも、日常の雑談の中で伝えることも大切です。

♦最後に
Z世代は、他の世代以上に「この仕事をこのまま続けても大丈夫なのか」と考える傾向があります。自分に不向きな仕事であっても、辛抱強く続けることに疑問を感じやすいです。
組織における一つの業務に適性がなかったとしても、他の業務にも適性がないとは限りません。可能であれば配置の変更を行うことが望ましいです。簡単に変更ができない場合であっても、彼らの不安や悩みに向き合い丁寧に聴き、双方向のコミュニケーションを取ることが共に働くために重要となってきます。


第1回: Z世代にとっての働く価値観と接し方

第2回: Z世代とコミュニケーションしやすい仕組みの構築


<<執筆者>>

紅林 慶太

2023年 中小企業診断士登録、経営管理修士、社会福祉士、精神保健福祉士
2016年に福祉系大学に社会人入学したことでZ世代と同級生、友人となり現在でも交流を深めている。現在は、中小企業診断士として独立し、人材採用・定着、障害者雇用など人や組織を専門分野としている。経営者様と共に考え、共に価値を創り出すことをパーパスとしている。

24/02/29 21:00 | カテゴリー:,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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