近年は、多くの職場でZ世代と呼ばれる若い世代とのコミュニケーションがうまくいかない、早期退職をされてしまう、といった悩みを聞きます。そこで、本コラムでは、3回に分けてZ世代と共に働くことについて連載します。1回目はZ世代にとっての働く価値観と接し方について述べます。
Z世代とは、一般的に1990年代中盤から2000年代にかけて生まれた世代であり、2023年時点では13歳~27歳(1996年~2010年生まれ)となります。
当然に彼らには個人差があり、Z世代という一般化を避け、個別に接するべきです。しかし、生まれ育った社会的な背景や構造には一定の共通点があり、全体的な傾向も見られます。
♦Z世代の特徴
Z世代の特徴を、人事ZINE (注1)をはじめとするインターネットの様々な情報、及び私が大学に社会人入学しZ世代と接した経験から述べます。Z世代は、「人間関係を重視する」「素直」「仕事への優先度は高くない」「転職への見切りが早い」「安定性を求める」「SDGsへの意識が高い」「SNSへの感度が高い」「多様性の尊重」「キャリア形成意識が高い」「間違いを過度に恐れ、正解を求めようとする」といった傾向があります。
それらの理由としては複雑に絡み合った様々な要因が考えられますが、ここでは2点、「かつての価値観への疑問」「情報化」について述べます。
① かつての価値観への疑問
バブル崩壊以後、終身雇用や年功賃金が崩壊したことで、自分自身よりも企業を優先する動機が弱くなってきました。そのために、Z世代にとっては仕事そのものや、困難を乗り越えることよりも、自分らしさや時間を大切にしたいという価値観が強くなっております。厳しさに耐えることに対しても強く疑問を持ちます。
② 情報化
現在はインターネット検索やSNSで色々な情報が手に入るようになりました。ブラック企業やコンプライアンス違反等に気付きやすくなったプラス面もあります。しかし、SNS等では、他人の成功や輝かしい部分ばかりが見えてしまうこともあります。それらと自分自身を比較してしまい、みじめな気持ちになったり、現状への不満が強くなったりするマイナス面もあります。
また、ネガティブな情報も簡単に手に入ってしまいます。例えば、氷河期世代の課題を見て、自分もこうなるかもしれない、と不安に陥ります。様々なネガティブ情報が手に入るからこそ失敗したくない、間違いをしたくないと感じます。失敗への恐れが、過度に正解を求めようとすることや、転職への見切りの早さ、キャリア形成への焦りにつながります。
♦Z世代の働き方へのアプローチ
では、このような傾向のあるZ世代に対してどうやって接していけばよいでしょうか?最も大切なことは、相手を一人の尊厳ある人間として接することとなります。
いくつか具体的なポイントについて述べます。
① ポジティブフィードバックを行う(注2)
多様化の現代においては、大量生産の時代とは違い、仕事におけるどのような行動が望ましい行動なのか分かりづらくなっています。上司や先輩の模倣をする、言われたことを一生懸命こなせば良い、といった分かりやすい指標はありません。
仕事における工夫、アイディア、資料の作り方、会議中の発言といった行動に対して、上司が何も言わなかった場合、Z世代にとってその行動は本当に望ましかったのか分からず不安や混乱を招きます。良いと思った行動に対しては、なるべく早くその場でポジティブフィードバックをする必要があります。
② 丁寧に説明する
Z世代は、将来への不安からキャリア形成意識が強く、現在の仕事が成長につながるのか、続けていっていいのか疑問を感じやすい傾向があります。成長につながらないと感じたら転職を選ぶ可能性も高くなります。対応としては、今の仕事は何のためにやっているのか、どう成長につながるのか、将来はどういう仕事をできるのかを丁寧に説明します。勿論本人の意向を丁寧に聴き、相互のすり合わせをすることも大切です。
③ 叱り方も大切
時には叱ることが必要となる場合もあります。ただし、叱り方には注意が必要です。その場、またはなるべく早く、尊厳を潰さないように他の人がいないときに叱る必要があります。怒るのではなく対話を行う、相手の尊厳を尊重し、言い分を聴く、なぜ悪かったのか、どうして欲しいのかを丁寧に伝える必要があります。
Z世代は、厳しいだけの指導をしたところで前向きには受け入れにくいです。したがって、叱る際のアプローチは、尊重と対話を基盤とした成長につながるものである必要があります。普段からの信頼関係構築も怠ってはなりません。
このように、彼らの生まれ育った背景を理解した上で、彼らを尊厳のある一人の人間として接することが必要となります。次回は、Z世代とのコミュニケーションにおける、報連相しやすい仕組みや心理的安全性について掘り下げていきます。
♦参考文献等
(注1)Z世代の特徴は?価値観・働き方・消費行動やXY世代との違いまで解説:人事ZINE HP
(注2)実は人材育成のやり方が上手い人がやっている大切なこと・重要なこととは?:YouTube クレイジーコンサルティングオンライン
2023年 中小企業診断士登録、経営管理修士、社会福祉士、精神保健福祉士
2016年に福祉系大学に社会人入学したことでZ世代と同級生、友人となり現在でも交流を深めている。現在は、中小企業診断士として独立し、人材採用・定着、障害者雇用など人や組織を専門分野としている。経営者様と共に考え、共に価値を創り出すことをパーパスとしている。