PDCAサイクルを回すべきだということはなんとなくわかっている。しかし、回せないでいる経営者が非常に多く見られます。意識の問題であるケースもありますが、多くの場合、
「PDCAサイクルの回し方」
がわからないという場合がほとんどではないでしょうか。コンサルタントは「PDCAサイクルを回しなさい」と助言するものの、具体的にどのような行動をとるべきかということについては「個々の企業で違う」という理由をつけて具体的支援をしなかったりします。それでは、PDCAサイクルは回りません。
PDCAが回せていない最も多いケース
私がよく聞いているPDCAサイクルが回せていないケースは、
「年の始めに(または、年度の始めに)年間計画を立てて、
年が終わるころに今年はこういうことができなかったなどと反省する」
というものです。年の始めにいったい、どういう計画を立てているのかという疑問もありますが、一番の問題は
「年に一度しか、CAをしない」
ということです。つまり、PDCAサイクルが年に一度しか回されないということになります。3か月で1年が経つなどと言われるドッグイヤーの時代に、1年に1回のPDCAサイクルで事業は十分に改善されるのでしょうか。
「いやいや、月に一度、計画のフォローアップをしている」
という話も聞きますが、その場合は「PDCACACACA・・・」という回し方になっています。気づくと、始めのPから随分と遠くに来ているなんてことがあったりもします。
では、どのようにPDCAサイクルを回すのか
では、PDCAサイクルをどのように回せば、回るのか。
「マルチレベルで入れ子状にPDCAサイクルを回す」
ことで、回せるようになります。どういうことかというと、この図のような形です。
一番大きな円が年です(もちろん、それを3年など中期計画に割り当ててもかまいません)。その中に、月の円が入ります。大きな円の中に12個の小さな円が入ります。さらにその中を4つに分けて週の円です。それぞれの円がPDCAサイクルを示します。
つまり、
● 年初に年の計画を書いたら、
● 各月の始めにその月の計画を作り、
● 毎週の始めにその週の計画を作り、
● 実行して、
● 翌週の始めに前週の反省と今週の計画を作る
● 翌月の始めに前月の反省と今月の計画を作る
● 年の終わりに反省と来年の計画を作る
を繰り返すということになります。ポイントは、PDCAサイクルが入れ子状に回されて、CAが年に最低12回、週単位でも回すと54回程度はCAが行われることです。
こうすることで、小さなPDCAサイクルが回され、その結果が大きなPDCAサイクルにつながっていくというらせん状の効果が表れます。
大変そうだが、回し始めることが大切
このらせん状の効果を得るためには、
● 年の計画を作る
● 月の計画を毎月作る
● (場合によっては)毎週の計画を作る
という手間が発生します。とても大変そうに思えます。実践している私の例では、概ね
● 年の計画を作るのに1時間
● 月の計画を作るのに15~30分
● 週の計画を作るのに10分
といったところです。作りはじめのころはもっとかかっていましたが、一度作ると作り方がわかるので、時間が短縮されていきます。回り始めると力が減る車のエンジンのようなものです。
したがって、回し始めるところだけ、定常運用ができるまで、誰かコンサルタントに手伝ってもらって身に着けることが大切です。
守破離とよく言いますが、まずは型をしっかりと守って、回し始めてしまえば、意外とできるものです。ある程度回せるようになったら、その型を超える方法を考えて、自分の型を生み出せるとよいですね。
<<執筆者>>
佐川 博樹
2003年に個人事業主として独立。その後、株式会社あたぼうを設立。経営コンサルティング事業と共に、文房具の企画開発を行っている。自社のマーケティング戦略、事業推進結果を日々コンサルティングに役立てている。零細企業ながら、2016年に日本文具大賞のグランプリを獲得。