経営お役立ちコラム
GXとは?中小企業経営への影響を考える

◆はじめに

レジ袋有料化や食器等における脱プラなど、環境問題に対する一般消費者の意識は特にここ数年で大きく高まり、さらに加速しています。
今年の中小企業白書でも「GX・サプライチェーンに関する社会的要請等の経済社会情勢への対応は、これを新たな取組に挑戦する機会と捉えて、投資やイノベーションを促進することが重要」と書かれており、今やGXは中小企業の経営に切っては切れないポイントとなっています。

◆GXとは?

GXとはグリーントランスフォーメーションの略で、「化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動」(注1)のことです。政府は2050年時点で温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルの実現を宣言しており、達成のために予算、税、規制改革などあらゆる政策を拡充しています。


出所)環境省「脱炭素ポータル」カーボンニュートラルとはより

◆なぜ中小企業にとってGXが必要なのか

SDGsやカーボンニュートラルへの社会的要請は急激に加速しており、環境関連の新たな規制・基準などが国内外で生まれています。事業者にはこのような規制に対応する負荷を求められますが、一方でGXに取り組むことで以下のようなメリットが期待できます。
① 光熱費・燃料費の低減
② 資金調達
③ 自社・商品のブランド力強化
④ 人材獲得力の強化
⑤ 競争力の強化
エネルギー効率の高い設備を導入するといった取り組みの結果、すぐに効果を実感できるメリットには光熱費・燃料費の低減が挙げられます。また、一部の金融機関においては事業者の脱炭素経営の達成状況を融資先の選定基準の1つとした商品や、貸出金利の優遇措置を設けるなどの取り組みも行われているなど、資金調達面でのメリットもあります。さらに、脱炭素の取り組みを行うことでポジティブな認知を生み出し自社や商品・サービスのブランド力・人材獲得力向上が期待できるとともに、大企業など環境意識の高い取引先を相手にする場合などにおいて訴求力や競合に対する優位性につながります。

◆GXの取り組み「中小企業向けSBT」

環境省は中小企業の脱炭素化の取り組みを応援する目的で「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」(注2)を発行しています。この中で推奨され、登場する事例企業の取り組みにおいても強調されているのが「中小企業向けSBT認証」です。SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定が求める水準と整合した温室効果ガス排出削減目標のことで、中小企業向けSBTでは自社における燃料の燃焼や電気の使用を合計した排出量の削減が求められます。比較的規模の大きな企業向けの通常SBTに比べ、中小企業向けSBTは費用や目標レベル、承認までのプロセスが簡略化されていて、中小企業にとっても取り組みやすい内容になっています。


出所)環境省「中⻑期排出削減目標等設定マニュアル」P26より

認定取得に向けてのおおまかなステップ(注3)は以下のとおりです。
① サプライチェーン排出量の把握(中小企業向けSBTでは自社における「燃料の燃焼」と「電気の使用」)
② 目標の検討
③ 取り組みに向けた社内折衝
④ SBTiに目標の申請、認証取得
⑤ 認証取得後の目標の見直し、進捗報告
なおSBTでは現状(本記事執筆2023年11月時点)目標未達のペナルティは存在せず、事業者が高い目標を掲げそれに取組む姿勢が重要視されています。

◆おわりに

消費者やサプライヤーを含むGXの社会的要請は年々高まりつつありますが、これを逆に商機・新たな取組に挑戦する機会と捉えることが必要です。SBTなどの第三者認証に加え、経済産業省の省エネルギー投資促進に向けた支援補助金など各省庁のGX関連補助金等も活用するなど戦略的なGX経営が求められるのではないでしょうか。

◆参考文献等
1)経済産業省METI Journal「知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?」
2)環境省「中小規模事業者のための 脱炭素経営ハンドブック」
3)環境省「中⻑期排出削減目標等設定マニュアル」


<<執筆者>>

吉野 一哉(よしの かずや)

東京都中小企業診断士協会 城南支部所属。大学卒業後に筆記具メーカーに入社。主に海外向けの商品開発や拡販・販路開拓に携わり、自社商品の環境対応第三者認証の業務を経験。

23/11/30 21:00 | カテゴリー:,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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