経営お役立ちコラム
新規事業に必要な会計の知識(後編)

1.はじめに
先月の前編では、「想像する力」、「変換する力」について、ご説明しました。
今月の後編では、「まとめる力」、「見通す力」について、ご説明します。

2.まとめる力
仕訳を財務計画に「まとめる力」とは、仕訳に変換された取引を損益計算書(PL)および貸借対照表(BS)の形に集約することです。
まとめる力が必要な理由は二つありあす。

一つ目は、集約することで全体を俯瞰して考えられるようになります。
俯瞰することで、売上を伸ばすのか、原価を減らすのか、販管費を減らすのかという、新しい事業の計画を見直すポイントを見定めることができるようになります。

二つ目は、集約することで人に説明するのが簡単になります。
A社には100円で仕入れたキャベツを1個200円で、B社には150円で仕入れたキャベツを2個400円で売った結果、200円儲かりましたと具体的に説明すると、非常に分かりやすいです。
しかし、説明が長くなるという欠点があります。そのため、売上は600円、原価(仕入)は400円、利益は200円と、まとめて説明した方が分かりやすくかつ端的に説明できます。
まとめる力を身に付けるには、「変換する力」と同様に日商簿記3級を勉強するのが一番の近道となります。3級では変換する力の基礎だけではなく、まとめる力の基礎も学ぶことができます。
また、人に分かりやすく説明したいという場合は、2級の「報告式」という財務諸表の作り方も併せて学ぶこともお勧めします。この報告式ですが、決算短信および有価証券報告書で用いられている方法となります。つまり、多くの人が見慣れて
いる財務諸表の形です。そのため、分かりやすく説明できます。

3.見通す力
入出金サイクルを「見通す力」とは、仕入の費用や従業員の給料をいつ・いくら支払う必要があるのか、また、販売した代金がいつ・いくら振り込まれるのかをできるだけ具体的にイメージすることです。
つまり、新しい事業の在庫回転期間(商品を仕入れてから販売出来るまでの日数)がどの程度なのかを、事前に予測することとも言えます。事前の予測により黒字倒産を防ぎ新しい事業を着実に運営することができます。
具体的には、キャベツ1玉の取引の場合、以下のようになります。

<1か月目>
 入金 0円
 出金 20円(仕入5円、光熱費15円)
<2か月目>
 入金 0円
 出金 15円(光熱費15円)
<3か月目>
 入金 0円
 出金 20円(光熱費10円、出荷運搬料10円)
<4か月目>
 入金150円(売上150円)
 出金 0円

見通す力を身に付けるには、物の動きとお金の動きの時期が異なることに慣れることが重要です。
会社の経理に携われる場合は、向こう3~6か月分の予測現金出納帳を作成します。
そのうえで、毎月、どの程度、異なっているかの振り返りを行います。
こうすることで、見通す力が徐々に身に付いていきます。
会社の経理に携われない場合は、普段の支払いを現金からクレジットカードにして、家計簿を付けます。
こうすることで、予測現金出納帳と似た状況を作ることができるため、見通す力が身に付いていくと思います。

4.おわりに
こんなモノやコトがあったら社会の役に立つはず、これなら儲かるはずと、新しい事業を考えるのは非常にワクワクします。
しかし、実際に新規事業を創める時、多くのケースでは先行投資が必要となります。
先行投資のためのお金を工面するには、予測PL(売上・利益予測)を作り、支援先に説明することが重要です。
この予測PLを作る時に、前編と後編の2回に渡ってお伝えした「4つの力」が参考になれば幸いです。

森本 晃弘

19/02/28 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

このページの先頭へ戻る