経営お役立ちコラム
3分でわかる!財務諸表の見方

 中小企業診断士の大野です。これまで銀行・事業会社財務部において、財務諸表に接してきました。また、あまり詳しくない方向けのセミナーを数十回行っており、どこがわからないか、どこでつまずくのか、わかっているつもりです。

まず本題に入る前に、よくある質問にお答えします。

 Q:簿記の知識は必要ですか?
 A:簿記は財務諸表を作るための知識です。分析するために必要
   なものではありません。

 Q:どうやって勉強すればよいですか?
 A:まずは本屋に並んでいる初心者向けの書籍を読んでください。
   どれも非常によくできています。一番良いのは、自分で電卓・
   エクセルを使って指標を算出し、業界他社や過去実績との比較
   をして仮説を立てることです。

 財務分析は、これだけでメシを食っている人がいるほどの深遠な世界ですが、初級編の知識を獲得するのはそこまで大変ではありません。でも取っ付きにくい印象があり、多くの方が最初からあきらめています。だからこそ、身につければ差別化ができます。本稿がその一助になれば幸いです。

1.損益計算書(P/L)編

 ある期間の収支を表現したものです。初手として、営業利益率(営業利益÷売上高)を算出してください。それが業界他社と比較して高いか低いか、過去実績と比較して上がっているか下がっているか、確認してください。
大事なことは、その数字の確からしさではなく、その数字から得られるメッセージです。
なぜ高いか、なぜ下がってきているか、の仮説を立ててください。売上高であれば、販売個数×単価で検討してみます。費用も原材料費・人件費・販売管理費などに細分化して検討します。まずは与えられた材料から仮説を立てることが大切です。

 次に、売上高と営業利益を前年度と比較してください。増収増益・増収減益・減収増益・減収減益の4パターンしかありません。増収増益・減収減益はわかりやすいですね。でも増収減益・減収増益には必ず何か特殊な背景があります。例えば、為替・原油価格の影響などのマクロ経済環境の動きを受けた、あえて販売価格を下げてシェアを獲得にいくという経営戦略の変化があった、などの仮説を立てることができます。

2.貸借対照表(B/S)編

 ある瞬間の会社の資産・負債の状況をスナップショットで表現したものです。まず、自己資本比率(純資産÷総資産)を算出してください。すべての銀行員は、最初にこの作業をすると言っても過言ではありません。

 自己資本比率が高いと銀行が融資をしやすいので、倒産の危険性が下がります。なぜ自己資本比率が高いと銀行が融資をしやすいのかは、倒産時の財産処分の方法を考えればわかります。倒産すると、資産にある土地や有価証券や売掛金をキャッシュ化します。そのキャッシュを債権者に分配します。株主には分配しません。株主の持分が多いほど(=自己資本比率が高いほど)、債権者に分配されるキャッシュが多くなります。つまり、自己資本比率が高いほど、債権回収可能性が高いと言え、銀行は融資姿勢を緩和します。

 自己資本比率を分析することで、その会社が資金調達に悩んでいるか、それに対してどういう手を打っているか、という仮説が浮かび上がってきます。

3.まとめ

 今日は財務分析の第一歩を学びました。財務分析で、その会社のことがわかる部分もあります。でもわからない部分もあります。一番大事なことは、「何がわからないか」がわかる、ということです。仮説を立てて、先方にぶつけることで、飛躍的にその会社の理解度が上がります。

 どの会社にもストーリーがあります。そのストーリーを財務諸表から垣間見ることができます。ぜひ第一歩を踏み出していただき、財務諸表にぶつかって頂ければと思います。

大野 潔

15/07/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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