経営お役立ちコラム
新規事業に必要な会計の知識(前編)

1.はじめに
 新しい事業を始める場合、多くのケースで「事業計画書」を作成します。
「事業計画書」を作成するにあたり、事業戦略、市場規模(マーケット)、顧客像(ペルソナ)、ビジネスモデル(どんな価値を提供してどこから対価を得るのか)、売上・利益予測(予測PL)など多くのことを整理する必要があります。

ここで特に頭を悩ませるのが売上や利益などの会計面かと思います。
なぜならば、既存の事業とは異なり売上・利益を把握する仕組みが無かったり、経験から何となく分かる“勘”が利かなかったりするためです。そこで新しい事業を始める時に必要となる会計の知識をご紹介します。
この知識とは、「想像する力」、「変換する力」、「まとめる力」、「見通す力」の4つです。
イメージしやすいようにキャベツを例にして、具体的にご説明します。

2.想像する力
 未来の取引を「想像する力」とは、新しい事業の流れをできるだけ具体的にイメージすることです。新しい事業にも現在の事業と同じように、仕入れる、作る、流通させる、販売するという一連の流れがあります。
具体的には、A社からキャベツの種を買って、畑で育て、生育したキャベツを市場に出荷して、小売店が販売する、というイメージです。一言で言うと、商流と物流を具体的に考えるということです。
想像する力を身に着けるためには、普段の生活の中で取引をしていると意識したり、お店で買った物は誰がどこで作ったのかを考えてみたりすることが重要です。
例えば、スーパーでキャベツ1玉200円をレジに持って行ってカードで支払ったとします。
レジに持って行ったというのは「買いますという意思表示」なので、この時点で売買契約が成立します。また、カードで支払ったというのは掛取引(厳密には、スーパーとクレジットカード会社間での掛取引)となります。
また、1玉200円のキャベツは、スーパーが農家より1玉100~150円で仕入れた物と想像できます。
スーパーは、輸送・陳列・販売という付加価値を提供した結果、1玉50~100円の粗利を得ます。
さらに、農家はキャベツの種を1玉数円で仕入れ、種まきや水・温度管理などの育成という付加価値を約3か月間行います。
その結果、スーパーなどの小売店に1玉100~150円で販売します。この時の粗利も1玉50~100円ぐらいと想像できます。

3.変換する力
 取引を仕訳に「変換する力」とは、財産(物やお金など)の動きを勘定科目と金額で表すことです。上記の取引の場合、以下のようになります。
(実務上良く使われる三分法で記載します。また、労務費等は省略します。)

<消費者>
仕入  200円 / 買掛金 200円
<スーパー>
売掛金 200円 / 売上 200円
仕入  150円 / 買掛金 150円
<農家>
仕入   5円 / 現金 5円
光熱費等 50円 / 現金 50円

変換する力を身に着けるためには、商工会議所が主催している日商簿記3級を学ぶのが一番の近道となります。なぜならば、取引を行ったときにどのような勘定科目を使い、どのように変換(処理)するのかという基礎を体系的に学ぶことができるからです。
基礎を学んだ後は、現在のビジネスの取引を変換してみることをお勧めします。
これにより、学んだ基礎が定着する上に、応用力も身に付きます。
なお、簿記3級で学べる内容は、「簿記 出題区分表」と検索すると調べられます。

4.おわりに
 今回は「4つの力」のうち、「想像する力」、「変換する力」についてご説明させていただきました。
想像する力が身に着くだけで、モヤモヤとしていた新しい事業のイメージが、かなりハッキリしてくるかと思います。新しい事業だけではなく、現在の事業にも応用が可能な力となりますので、ぜひ、身に着けていただければと思います。
森本 晃弘

19/01/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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