経営お役立ちコラム
新ものづくり補助金とMOT

1.MOT(Management of Technology、技術経営、技術マネジメント)とは

製造業においてMOTの重要性が唱えられて久しいが、その概念や手法の曖昧さにより、いまだ広く定着するに至っておりません。
様々な学者・専門家により不統一な概念・手法が示されており、曖昧さを助長しているという指摘もありますが、1つだけ揺るぎない概念・手法があります。それは、「(1)技術の経営(マネジメント)」、「(2)技術による経営(マネジメント)」の2本柱から成り立っているという点です。

これは、前者が技術を創出していく過程での「技術プロセスマネジメント」であり、後者が創出した技術を製品化などで収益に結び付ける過程での「技術アウトプットマネジメント」です。

さらに「技術プロセスマネジメント」は、技術創出という観点から以下の2つをマネジメントすることを意味します。
これは、「(1)技術を開発する」、「(2)開発された技術を確立・構築する」ことです。つまりMOTとは、技術を創出し、その技術を企業内に確立・構築することを通して、製品化・事業化により収益を得るものです。

「(1)技術を開発する」ことの困難性は言うまでもありませんが、「(2)技術の確立・構築」は、技術の再現性・信頼性・安定性確保など、(1)と同等またはそれ以上にマネジメントハードルが高いものです。実際のところMOTの肝となる部分は、「(2)技術の確立・構築」にあり、これがなされることで企業に「強み」が生まれ、長期的な競争力に寄与するのであると考えます。

2.中小製造業の課題

2012年版中小企業白書によれば、中小製造業における競争力低下の要因として、
   1位:「技術・技能承継がうまくいっていない」
   2位:「海外企業等の技術力向上」
が示されています。

ダントツ1位である「技術・技能承継がうまくいっていない」ことは、言い換えるならば、技術が企業内に確立・構築されていないことを意味します。つまり、中小製造業においては、MOTの肝である「技術の確立・構築」がうまく機能していないという課題が存在するのです。

3.新ものづくり補助金とMOT

ここで改めて「新ものづくり補助金」の概要を確認します。

【ものづくり・商業・サービスの分野で環境等の成長分野へ参入するなど、革新的な取組にチャレンジする中小企業・小規模事業者に対し、地方産業競争力協議会とも連携しつつ、試作品・新サービス開発、設備投資等を支援します】

上記内容はつまり、中小製造業の「技術プロセス」における新たな取り組みを支援するものです。その意味で「新ものづくり補助金」は、中小製造業が抱える「技術プロセスマネジメント」の課題に対する策となり得る良き政策と言えます。

4.最後に

MOTとは「技術プロセスマネジメント」を通して「技術アウトプットマネジメント」に繋げることであり、その肝となる部分が「技術プロセスマネジメント」内の「技術の確立・構築」にあります。

この「技術の確立・構築」がうまく機能していない現状の中小製造業に対しては、その重要性を十分に理解してもらい、機能するように体制を築いていく必要があると考えます。ここで我々診断士の出番です。

「新ものづくり補助金」の申請業務を通じてその理解を促し、補助金を活用した技術の確立・構築ストーリーを作成しなければなりません。そういった意味で、「新ものづくり補助金」の本質を認識し、MOTの肝を理解した上で、支援を行う必要があるのではないでしょうか。単なる申請支援ではなく、支援先の中小製造業ならびに我が国の「ものづくり」の競争力を高める一助になるのは、我々診断士であると考えます。

谷 信宏

14/07/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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