経営お役立ちコラム
反社会的勢力の実態と取り締まる法律

ここでいう反社会的勢力とは、市民生活や企業活動に脅威を与える
組織のことです。反社会的勢力には暴力団や暴力団関係企業、総会屋、
悪質クレーマなどがありますが、その主なものは暴力団です。
企業の社会的な責任として、暴力団などの反社会的勢力に対しては
毅然とした姿勢でのぞむことが求められます。
本コラムでは、次の3点について解説します。
・反社会的勢力の実態と取り締まる法律
・暴力団排除条例の内容
・反社会的勢力への対応方法

1.暴力団対策法と暴力団の定義

暴力団を取り締まる法律として暴力団対策法(暴力団員による
不当は行為の防止等に関する法律:平成3年5月 以下暴対法とよぶ)
があります。
暴対法が制定された背景には次のようなことがあります。以前
から暴力団は威力をもって資金かせぎをしてきましたが、警察の
取締りや市民の暴力排除意識の高まりから、取締りを逃れるために
企業活動を装ったり、社会運動を標榜したり、違法な証券取引や
不動産取引を行ったりしてきました。そのために、刑法などの従来の
取締り法規では対応が困難になってきたのです。

暴対法には暴力団の定義があります。それによると「その団体の
構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は
常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体を
いう」となっています。暴力的不法行為等とは、暴力という威力を
悪用して行う不法行為ですが、暴対法には54種類の不法行為が述べ
られています。
「その団体の構成団体の構成員を含む」という言葉ですが、その
意味は、暴力団はいくつかの暴力団がピラミッド式にヒエラルキー
を構成していることを示します。ピラミッドの頂点ともいうべき
組織は、指定暴力団として公安委員会から指定を受けていて、現在
22団体あります。

暴対法による暴力団に対する規制は、暴力的要求行為の禁止、
暴力団同士の抗争時の規制、暴力団への加入等への規制、事務所への
制限、暴力団の組長の責任など、多岐にわたっていますが、ここでは
次の2点について取り上げます。

2.暴力的要求行為の禁止(第9条)

暴対法では暴力的要求行為が禁止されています。暴力的要求行為
とは威力を使用して違法な行為を行うことです。法では20種類の
禁止事項が定義されていますが、その主なものは次のものです。

(1)ある人物の秘密をばらさないための口止め料の強要
(2)寄付金などの金品を要求すること
(3)縄張り内で営業する者に対し営業を容認するための金品を
要求すること(みかじめ料)
(4)株式会社に対して無理に株式の買い取りを要求すること
(5)建物の正当な居住者に対し、その意思に反してその明渡し
を要求すること。
(6)交通事故を起こした者に対し、その損害に関する示談を
行い、損害賠償として金品等を要求すること

3.指定暴力団の代表者等の損害賠償責任(第31条)

暴対法では、指定暴力団の代表者(いわゆる組長)の管理責任を
定めています。暴力団同士の抗争や威力を利用した資金かせぎに
おいて、他人の生命や身体、財産などに損害を与えた場合は、代表者
(組長)がその損害賠償の責任を負うことになります。これにより
「部下が勝手にやったのだ」という暴力団幹部の責任のがれは
できなくなりました。

暴対法は以上のように暴力団そのものに対する様々な規制を
している法律ですが、企業や一般の市民と暴力団とのかかわりに
ついては、「暴力団排除条例」という都道府県で制定している条例
において定められています。これについては次回、解説します。

柄澤明久

12/08/12 10:27 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

このページの先頭へ戻る