経営お役立ちコラム
中小企業の高年齢者雇用対策

1 高年齢者雇用の現状

(1)高年齢者を取り巻く状況

我が国では、世界に類を見ない速度で高齢化が進み、国立社会保障・人口問題研究所
「日本の将来推計人口」によると、2030年(平成42年)には、総人口の約3人に1人が
65歳以上の高齢者になることが見込まれている一方で、若い世代が減少することが
予測されることから、いわゆる生産年齢人口(15歳~64歳)は減少し、同年には総人口
の58.5%になる見込みです。
少子高齢化の進行による労働力の減少に対処するためにも、高年齢者が持っている
能力をしっかりと発揮できるような「生涯現役社会」の実現が望まれています。
このため、「高年齢者雇用安定法」では、65歳までの安定した雇用を確保するための
措置(高年齢者雇用確保措置)の実施を企業に義務付けています。

 

(2)高年齢者雇用安定法

高年齢者の就労を促進するため、事業主に以下の義務が課せられています。
1)60歳未満定年の禁止
・定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければなりません。
60歳を下回る定年の規定は無効となり、定年の規定はないものとみなされます。
2)65歳までの高年齢者雇用確保措置
・「65歳まで定年年齢の引き上げ」、「65歳までの継続雇用の導入」、「定年制の
廃止」のいずれかの措置を実施しなければなりません。
3)中高年齢者が離職する場合の措置
・解雇等により離職予定の45歳以上65歳未満の者が希望するときは、再就職の援助に
必要な措置を実施するよう努めなければなりません。

 

(3)高年齢者の雇用状況

厚生労働省の平成26年「高年齢者雇用状況調査」によると、高年齢者雇用確保措置
の実施済企業の割合は98.1%(前年比5.8%増)となっています。企業規模別に
みると、大企業(従業員301人以上)では99.5%、中小企業(31人~300人)では
98.0%となっています。
雇用確保措置の実施企業のうち、「定年の廃止」の企業は2.7%、「定年の引上げ」の
企業は15.6%、「継続雇用制度の導入」の企業は81.7%で、企業の対応は、
定年制度の変更よりも継続雇用制度導入の比率が高くなっています。
一方、60歳定年到達者の動向は、定年到達者のうち、継続雇用を希望し雇用された者は
81.4%、希望したが雇用されなかった者は0.3%、継続雇用を希望しないものは18.3%
となっています。

 

2 高年齢者雇用の実施

(1)高年齢者雇用のための労働条件の見直し
高年齢者雇用を確保するためには、賃金や勤務時間などの労働条件について見直すこと
が必要になります。高年齢者のニーズや意識を分析して、制度を見直す場合の労働条件の
ポイントは以下のとおりです。

1)賃金・人事処遇制度の見直し
・高年齢者の就業の実態、生活の安定に配慮し、能力・職務を重視した制度に向けた
見直しが必要です。
2)勤務時間・勤務日の見直し
・高年齢者の希望に応じた短時間勤務などが可能となる制度の導入が必要です。
3)能力に応じた適正な配置
・高年齢者の意欲や能力に応じた適正な配置と処遇を実現することが必要です。

 

(2)高年齢者雇用のための労働環境の整備
高年齢者が健康で意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる
「生涯現役社会」の実現を目指すため、企業が整備すべき事項は以下のとおりです。

1)高年齢者の職業能力の開発・向上
・高年齢者の有する知識・経験などを活用できる職業能力開発を推進するため、
職業訓練等を実施することが必要です。
2)作業環境の改善
・加齢に伴う身体的機能の低下にも対応できる設備や作業方法の改善が必要です。
3)高年齢者の職域拡大
・高齢化に対応した職務の再設計を行うなどにより、高年齢者の能力・知識・経験
などが十分に活用できる職域の開発が必要です。

 

3 高年齢者雇用の支援

(1)高年齢者雇用に関する助成金
政府は、高年齢者雇用を確保するために、各種の助成金による支援を実施しています。

1)事業主が利用できる主な助成金
・高年齢者をハローワーク等の紹介により雇入れる事業主へ支給
「特定就職困難者雇用開発助成金」、「高年齢者雇用開発特別奨励金」
・高年齢者の雇用環境の整備を行う事業主へ支給
「高年齢者雇用安定助成金」
2)高年齢者(雇用保険5年以上)が利用できる助成金
・60歳到達時点に比べて、賃金が75%未満に低下した65歳未満の高年齢者へ支給
「高年齢雇用継続基本給付金」、「高年齢再就職給付金」

 

(2)高年齢者雇用アドバイザ-による相談援助
企業における高年齢者雇用の取組を支援するため、経営コンサルタント、中小企業診断士、
社会保険労務士、学識経験者などを「高年齢者雇用アドバイザー」として
認定し全国に配置しております。高年齢者雇用アドバイザーによるサービスの内容は
以下のとおりです。

1)相談・助言(無料)
・高年齢者雇用の導入や拡大に取り組む企業からの要請に基づき企業を訪問し、
「企業診断システム」を活用して、問題の発見、問題解決のための方法等について
相談に応じ、専門的かつ技術的な助言を行います。
2)企画立案サービス(有料:費用の2分の1補助)
・相談・助言によって明らかになった課題について、具体的な改善策を
高年齢者雇用アドバイザーが作成し提案します。

※サービスについて詳しくは「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」の
ホームページを参照ください。

城南支部 労務管理研究会

15/06/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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