経営お役立ちコラム
中小企業のためのメンタルヘルス対策

1.メンタルヘルスの概要

(1)労働者の心の健康に関する現状
 厚生労働省の労働健康状況調査(平成24年)によりますと、仕事において強い不安、
悩み、ストレスを感じている労働者は約6割に上がっています。精神障害を発症、
あるいは自殺したとしての労災認定が近年増加して、社会的関心を集めています。

(2)メンタルヘルス対策の重要性
 経済のグローバル化など経済情勢の悪化の影響により、心の健康面において労働者を
取り巻く状況は、今後一段と厳しさを増すことが予想され、企業において、より積極的に
心の健康の保持増進(メンタルヘルス対策)を図ることが重要な課題となっています。
また、企業には労働者への安全配慮義務(労働契約法第5条など)が課せられており、
リスク管理としての健康管理体制を整備する必要もあります。

2.4つのメンタルヘルスケアの推進

(1)セルフケア
 心の健康づくりを推進するためには、労働者自身がストレスに気づき、これに対処する
ための知識を身に付け、自身で心の健康状態にケアすることです。企業は、労働者に
セルフチェックを行うことができる機会を提供し、相談体制を整備する必要があります。

(2)ラインによるケア
 労働者と日常的に接する管理監督者が、労働者の状況を把握して、職場環境の改善や
労働者に対する相談対応を行うことです。

(3)事業所内専門スタッフによるケア
 産業医・保健スタッフは、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるように、
労働者及び管理監督者を専門的に支援します。

(4)事業場外資源によるケア
 特に、社内に産業医や専門スタッフがいない中小企業は、プライバシーが守られる
外部の専門機関を利用することで、安心して相談できるメリットがあります。
だれでも利用できる「地域産業保健センター」の積極的な活用が有効です。
また、メンタルヘルス対策の強化策として、
EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)による従業員の心の
健康をサポートする制度の導入も増加しています。

3.メンタルヘルス不調防止対策

(1)パワーハラスメント対策
 パワーハラスメントとは、「職場において、職務上の地位や影響力に基づき、相手の
人格や尊厳を侵害する言動により、身体的・精神的苦痛を与え、就業環境を悪化させること」
(出典:財団法人21世紀職業財団)と定義されています。
 パワーハラスメントは、精神障害の労災認定基準の一つに加えられており、被害者が
メンタルヘルス不調に陥った場合は、業務上災害と認められる可能性があります。
さらに、企業も損害賠償責任などの法的責任を問われる場合があり、厚生労働省の調査に
よりますと、近年、職場でのいじめに関する労働紛争相談件数は増加しており、企業は、
パワーハラスメントについて正しい認識を持ち、未然防止に努めることが必要です。
最大の原因は上司と部下のコニュミケーション不足ですので、日ごろから良好な
コミュニケーションを取り信頼関係を築くように心掛ける必要があります。

(2)セクシャルハラスメント対策
 セクシャルハラスメントは、社員の意に反する性的な言動によって、社員が解雇・降格
などの不利益を受けることを「対価型セクシャルハラスメント」と呼び、意に反する
性的な言動で、社員の就業環境が悪化することを「環境型セクシャルハラスメント」
と呼びます。
「この程度なら許される」など、自分勝手な思い込みは慎まなくてはなりません。
相手の気持ちや立場を尊重する必要があります。企業は、行為者に対する措置(処罰)
及び被害者に対する措置(救済)を迅速かつ適切に行うことが大切です。

4.メンタルヘルス不調社員の支援策

(1)休職・復職制度(私傷病)
 私傷病休職制度とは、社員との雇用関係を維持しつつ、労働を免除し病気・ケガの回復を
待つことで、社員を退職・解雇から保護する制度で、就業規則などで定めます。
 休職中は、社員が安心して療養に専念できるように、会社は必要な情報の提供などを行います。

(2)職場復帰支援プログラム
 職場復帰の可否の判断を行う前に、社内制度として次のような職場復帰支援のプログラムを
設けると、より早い段階で職場復帰の試みを開始することが出来ます。

 1)模擬出勤
 ・勤務時間と同様の時間帯に外部で模擬的な作業を行って時間を過ごします。
 2)通勤訓練
 ・自宅から職場の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に帰宅します。
 3)試し出勤
 ・職場復帰の判断等を目的として、本来の職場に試験的に一定期間出勤します。

(3)職場復帰の可否の判断
 休業中の社員から復職の意思が伝えられますと、企業は、主治医による職場復帰が可能と
判断された診断書の提出を求めますが、主治医による診断は、必ずしも職場で求められる
能力まで回復している判断とは限りません。
このため、適切な判断ができるように、主治医に職場の状況などを正確に伝え、
主治医と症状について情報交換を行い、最終的に産業医などによる意見を取り入れて
判断を行う必要があります。

(4)プライバシーの保護
 社員の健康情報は、個人情報の中でも特に繊細な情報であり、厳格に保護され
なければなりません。
とりわけメンタルヘルスに関する健康情報は慎重な取り扱いが必要です。

城南支部 労務管理研究会

15/04/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

このページの先頭へ戻る