経営お役立ちコラム
ダーウィンの海を越えろ!~知的財産権はあるけれど~

「『若僧』中小企業経営者の奮闘記」の3回目では、新製品開発
のマーケティング実践を取り上げます。多くの中小企業が創意工夫
を凝らした新製品(新サービス)を積極的に開発しています。しかし、
新製品の多くが市場に認知されず、競合他社との熾烈な競争に敗れて
市場から撤退しています。競合他社との競争に打ち勝ち、有望な市場
にたどり着く(「ダーウィンの海」といいます)にはどうすれば
良いのか、私なりの試行錯誤の取り組みをご紹介します。

1.顧客ニーズから生まれた新製品

(1)下請けから大企業(製造業)のパートナーに
5年前、大手電機メーカー(連結従業員2万人)の人材育成支援
システムを下請けで開発しました。業績評価中心の一般的な人材育
成とは異なり、従業員のスキル定義・評価と動機づけを重視した独
自の人材育成手法です。それに惚れ込んだ私は「人材育成」を徹底
的に学び、大手電機メーカーへの直接提案とシステム改修を繰り返
すうちに、下請け企業から直接取引を行う「パートナー」として認
めてもらうことができました。
この5年間のプロジェクトによって人材育成の具体的な成果が発
揮できたため、多くの企業でこの手法を採用してもらい、人材育成
の支援を通じて社会に貢献しようと決意しました。大手電機メーカ
ーに粘り強く交渉した結果、わが社の新規事業として取り組むこと
を理解していただきました。また特許や商標に関する知的財産権の
取得に対しても支援いただくことができ、複数の特許登録と商標登
録を行うことができました。

(2)国立大学との産学連携
ちょうど同じ頃、国立大学の研究室との交流をきっかけに、ベテ
ラン技術者(造船業界)の知識・ノウハウを若手に継承する研究活
動と出会いました。そして、大学教員や学生との議論を通じて研究
室とわが社との共同開発が始まり、類似製品とは全く異なる知識伝
承支援システムを開発しました。当初、このシステムは複数の造船
会社やプラント会社にて研究目的で利用されました。

2.マーケティング活動の実践

新製品を標的顧客に認知してもらうためには、マーケティング活
動の実践が必須です。しかし、わが社にはマーケティング活動のた
めの潤沢な資金はありません。そこで、これまでの人的ネットワー
クと必死の思いで用意した僅かな資金を活用して、「できること」か
ら始めました。

(1)大手外資系コンピュータ・メーカーのビジネス・パートナー認定
制度への参加
技術およびマーケティングの豊富なノウハウを持つ外資系企業
の支援制度に参加し、製品カタログや動画製作、セミナー開催、他
のビジネス・パートナーとの協業関係の構築などを推進しました。

(2)セミナー開催
ビジネス・パートナーの研修室を無料で借りて、平均月1回の割
合でセミナーを実施しました。

(3)展示会・製品発表会への出展
外資系企業や公的機関主催の展示会や製品発表会に出展しました。

(4)学会での論文発表
学会で研究会を設立し、幹事として事務局を運営しつつ、これま
での成果を体系化し、論文を発表しました。

(5)異業種交流会
顧問弁護士の呼びかけで、さまざまな士業の先生方との交流会を
発足しました。

(6)インターネットを活用した情報発信(ホームページ、製品サイト、
YouTube、Twitter、Facebook)
製品サイトを構築して登録ユーザーに製品の評価版を無料で提供
したり、インターネット上の無料サービスを活用して、積極的な
情報発信を行いました。

3.試行錯誤の繰り返し

新製品を発表してから1年が経過し、お客様からの問い合わせや
具体的な商談・見積提出の機会がようやく出てきました。少しずつ
市場に認知されてきたことを実感しておりますが、そのスピードと
認知度には満足できておりません。その原因は、「標的顧客の不明確」
と「分かりやすい製品コンセプトの欠如」にあると考えております。
多くの方々との議論やさまざまな支援に感謝し、もう一度、「標的顧
客の再設定」と「『一言で理解してもらえる製品コンセプト』の練り
直し」を行いたいと思います。

4.おわりに

さて、「『若僧』中小企業経営者の奮闘記」はいかがでしたでしょ
うか?
中小企業経営者の皆様の実績やご苦労に比べれば、まだまだ未熟な
私ですが、多くの方々に支えられて経営者としての修行に取り組ん
でいます。依然として厳しい経営環境ですが、これからが本当の勝
負です。「若僧」らしく前向きに頑張りたいと思います。

坂口憲一

10/12/06 01:54 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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