経営お役立ちコラム
シニア人材の活用

少子高齢化が進む中、人手不足が大きな問題となっています。その一方で高年齢者雇用安定法の改正や、年金制度への先行き不安から働き続けたいと考えるシニア層は増えており、その活用は中小企業にとっても重要な経営課題です。今回はシニア人材の採用と動機づけのために企業が必要な手立てについて考えてみます。

○働きやすい環境を整備する
まず採用のために必要なのは、高齢者が働きやすい勤務条件や環境の整備です。シニア人材の採用に成功している企業には、以下のような特徴があります。

■業務が細分化され短時間勤務が可能である
■身体に配慮した勤務環境が整っている
■作業依頼や指示方法が分かりやすい

具体例でみましょう。青果卸売業者A社(北海道)では、春~秋にかけて人手のかかる青果物の梱包・搬送作業を行いますが、重労働のイメージから若手社員がなかなか集まりませんでした。そこで1日を午前と午後各4時間の短時間勤務に分割し、作業時間も2時間単位で、体力や集中力に不安のある人向けの工夫を行って募集したところ、60歳超の高齢者や主婦計10名の採用に成功しました。同社では一日の作業内容を口頭ではなく、覚えやすいように紙に書いて配布するなど、シニア社員向けの細かい配慮も行っています。

 
○シニアが働きがいを感じるための動機づけ
採用ができたら次は動機づけ。私も役職定年を迎えたシニア社員の人たちから、「現役時代に比べると補助的な業務が多いので、あまりやる気を感じない」という声を聞くことがあります。しかし若手に交じって生き生きと働く人も少なくありません。どのようにすればシニア人材が働きがいを感じるのでしょうか?
シンクタンクのアンケート調査からは、中小企業で勤務する65~70歳の男性の場合、定年前は会社の業績向上や昇給・昇進に関心が強いのに対し、定年後は自分の能力活用、顧客の喜び、同僚・部下からの信頼に働きがいを感じるという結果が出ており、こうしたシニア層の仕事観にヒントがありそうです。動機づけについては3つのポイントが考えられます。

■シニアならではの活躍の場や役割を提供する
■貢献を評価し年齢に関係なく処遇に反映する
■コミュニケーションの機会を確保する

建設コンサルティング業B社(奈良県)では、シニア社員は若手とペアを組んで作業現場へ行き、若手に指導や助言を与えています。この取組みではシニア社員が自分の能力を発揮するだけでなく、若手育成という役割も担っている点に注目です。シニア社員は、自分のスキルが後輩に引き継がれることにやりがいを感じるといいます。

処遇については不動産業C社(東京都)の事例が参考になります。C社では65 歳の定年以降、雇用形態は有期契約となり給与水準は下がりますが、給与は定年前の金額を基準に個々の社員の能力で決定され、部長や顧問等の肩書も維持されます。現役社員に比べれば金額は低くても、働きぶりや成果が処遇に反映される仕組みを継続しています。

そしてシニア社員とのコミュニケーションも欠かせません。労いの気持ちを伝えたり彼らの悩み事を聞くだけでなく、ご意見番として活用することもできます。プレス板金部品加工業のD社(岐阜県)では社長がシニア社員と毎月グループ面談を行い、彼らから遠慮のない意見を聞く機会にしています。

 
シニア人材活用のための取り組みは、シニアだけにとどまらず誰もが働きやすい職場づくりの推進につながります。人手不足問題への対処や職場の活性化のために、本稿が参考になれば幸いです。

参考文献:
「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン」(中小企業庁 17年3月)
「働くシニア世代、支える中小企業」(日本政策金融公庫総合研究所 17年3月)

大橋 功

18/09/30 21:00 | カテゴリー:,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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