経営お役立ちコラム
システム外注の前にやっておくべきこと

DX推進の波が押し寄せる今、業務効率化や新規事業創出のために、システムの導入を検討されている経営者の方も多いのではないでしょうか。しかし、専門知識を持つ人材が社内にいない場合、外部への委託は不安なものですよね。「思ったようなシステムにならなかった」「追加費用ばかりかさんで予算オーバーになった」といった失敗談は後を絶ちません。
こうした失敗の多くは、発注者側の準備不足が原因です。システム開発を成功させるには、外注する前にしっかりと社内で準備を整えておくことが不可欠です。本コラムでは、よくある失敗事例を交えながら、システムの外注で後悔しないための2つの鉄則をご紹介します。

鉄則1.内製と外注の違いを理解する
[失敗事例]
製造業を営むA社の事例です。古くなった生産管理システムを刷新するため、システム開発会社に依頼しました。しかし、開発中に要件変更が頻繁に発生し、納期が大幅に遅延。最終的には当初の予算を大きく上回る費用を請求されました。
この失敗の根本原因は、システム開発に対する認識のズレです。A社は「現行システムと同じように作ればいいだけ」と考えていました。しかし、現行システムの要件を把握していた社員はすでに離職しており、開発途中で「もっとこうしたい」という要望も次々と出てしまいました。開発会社としては、仕様変更のたびに追加作業が発生するため、その費用と時間を請求せざるを得なかったのです。
[鉄則]
外注とは、あくまで自社に代わって開発作業を請け負ってもらうことです。システムの全体像や要件を把握し、最終的な責任は自社にあるという認識を持つことが重要です。
システムの内製と外注の違いを正しく理解しましょう。内製は自社の社員が開発するため柔軟な対応が可能ですが、専門知識を持つ人材の確保や育成にコストがかかります。一方、外注は専門的なスキルを持つプロに任せられるメリットがありますが、要件定義を明確にし、密にコミュニケーションを取ることが成功の鍵となります。開発を丸投げするのではなく、システムは自社の資産として、自らもプロジェクトに参加する意識を持ちましょう。

鉄則2.要件定義を明確にする
[失敗事例]
小売業のB社は、ECサイトのリニューアルを計画しました。Web制作会社に新規作成を依頼し、デザインや機能について大まかに説明しました。しかし、納品されたサイトは、ターゲットとしていた顧客層とはかけ離れたデザインで、商品検索機能も使いにくいものでした。
この失敗の根本原因は、要件定義が曖昧だったことです。B社の担当者は、「おしゃれで使いやすいサイト」という抽象的なイメージしか持っていませんでした。そのため、開発会社は担当者の主観に基づいてデザインや機能を実装しましたが、それがB社の真のニーズとは異なっていたのです。
[鉄則]
要件定義とは、「どんなシステムを、何のために、どのように作るか」を明確に言語化する作業です。システム開発において最も重要な工程と言えます。要件定義が曖昧なまま開発に進むと、認識のズレが生じ、手戻りや追加費用が発生する原因となります。
要件は、誰にでもわかるように具体的に落とし込みましょう。例えば「使いやすい」「シンプルに」といった抽象的な表現は避け、「初めてサイトを訪れる人が、3クリック以内に購入を完了できる」「商品写真の縦横比は1:1の正方形に統一する 」など、具体的な数値や目標を盛り込むことが大切です。また、可能であれば開発会社の担当者とは、要件定義を一緒に進めるための相性を事前に確かめておくことをおすすめします。 プロの視点から、より現実的な提案をもらえる可能性もあります。

システム開発の外注は、会社の成長を加速させるための有効な手段です。しかし、その成功は、発注者である自社の準備にかかっています。今回ご紹介した2つの鉄則は、システム開発の成否を分ける非常に重要なポイントです。丸投げするのではなく、「会社の未来を担うシステムを、開発会社と協力して作り上げる」という意識を持って取り組んでいきましょう。


<執筆者> 長瀬 勝好

業務改革やDX推進をサポートするITコンサルタントです。AIなど話題のテクノロジーやビジネストレンドを日々調べながら、現場での経験を活かして、すぐに使える実践的な情報を分かりやすくお届けします。経営者の皆さまにも役立つ内容を意識し、むずかしい専門用語はできるだけ避け、最新技術や業界の動きも身近に感じていただけるコラムを発信したいと思います。

25/10/31 18:00 | カテゴリー:, , ,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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