経営お役立ちコラム
クラウドソーシングの活用

1.クラウドソーシングとは

 近年、ITを活用した新しい人材調達の仕組みともいえる、「クラウドソーシング」が注目されている。
クラウドソーシングとは、インターネット上の不特定多数の人々に仕事を発注することにより、自社で不足する経営資源を補うことができる人材調達の仕組みである。発注する仕事の種類は、幅広い。一例を挙げると、ウェブ開発、ウェブデザイン、記事ブログ作成、ロゴ・イラスト作成、翻訳等がある。

2.クラウドソ-シングサイト

以下に、日本の主なクラウドソ-シングサイトを紹介する。

(1)汎用型

 汎用型は、幅広い仕事を取り扱う。代表的なサイトとしては、2008年に創業した老舗のランサーズ(http://www.lancers.jp/)や2014年12月に東証マザーズに上場したクラウドワークス(http://crowdworks.jp)などがあげられる。
 両社とも、業務発注側から事前に報酬を一時的に預かり、業務完了後に業務受注側に受け渡すエスクロー方式を導入し、発注者・受注者双方が安心できる仕組みを構築している。また、発注者と受注者間の円滑なコミュケーションや双方の評価を設ける仕組みなどを構築している。

 仕事の発注は、1案件の完了時に支払う成果報酬のプロジェクト型、仕事にかかわる時間単位で支払う時給型、デザインやロゴで多いコンペ型を扱う。コンペ型では、例えば企業ロゴを発注する場合、複数の受注希望者が作成したロゴのうち1つ(複数の場合もある)のみを採用し報酬を支払うものである。

(2)イラスト・ロゴ特化型

 イラスト・ロゴ特化型は、イラストやロゴに特化したものである。ほとんどの場合コンペ型を採用している。イラスト・ロゴ特化型としては、ムゲンアップ(http://mugenup.com/)やデザインクルー(http://www.designclue.co/)などがあげられる。

(3)マイクロタスク型

 マイクロタスク型は、受注者が空き時間に簡単にできるデータ入力などのマイクロタスクを主に扱うものである。受注者は、主婦層を主な対象にしている。
マイクロタスク型としては、シュフティ(http://www.shufti.jp/)やクラウド(http://realworld.jp/crowd/)などがあげられる。

(4)翻訳型

 翻訳型としては、ゲンゴ(http://gengo.com/)やランゲート(Lang-8)(http://lang-8.com/)などがあげられる。ゲンゴは、翻訳の仲介を行う。取り扱う言語は36ヶ国語に及ぶ。ランゲートは、相互添削型の英語学習サイトでユーザは190カ国以上、学習できる言語は90言語である。

3.さらに広がるクラウドソーシング

 クラウドソーシングは、前の章で述べた形態だけではなく、より広い事業形態に発展してきている。以下2つの例を示す。

(1)AirBnB (https://www.airbnb.jp)

 B&Bという言葉をお聞きになった方もおられるだろう。Bed and Breakfastの略称で、多くの場合小規模な宿泊施設で、宿泊と朝食の提供のみで比較的低価格で利用できるものである。空いた部屋の提供者と旅行者のマッチングをネットで行うサイトが、AirBnBである。

(2)Uber

 前項は、部屋のマッチングであったが、クルマ+運転手、つまりタクシーのマッチングを行うのがUberである。日本より規制の緩いアメリカやカナダでは個人が車を提供する形で営業を行っている。日本ではタクシー会社と提供して、タクシー以上ハイヤー以下のサービスを提供している。

この2例に見るように、単なる仕事のマッチングだけではなく、サービスもクラウドソーシングで行われるようになっている。

4.クラウドソーシングを活用して経営課題を解決した中小企業の事例
(2014年版中小企業白書 第3部第5章第1節 事例3-5-3より、一部筆者編集)

 千葉県成田市の株式会社ソフトプランナー(従業員8名、資本金2,000万円)は、自動車整備システムや車両販売管理システムの制作・販売を行う企業である。小規模な自動車整備企業や中古車販売企業が主な顧客である。新規顧客が他社システムから同社システムに乗り換える際、社内のデータを移行する必要があるが、そのデータ移行を社内では技術的に実施できず、結果としてキャンセルに至ってしまうケースが全体の5~10%程度あった。

 そこで、自社内ではできないデータ移行の業務を、クラウドソーシングで外注した。これにより、技術的な理由でキャンセルに至ることを避けられた。この発注がうまくいったことをきっかけに、同社はホームページの機能追加や、会社ロゴや名刺の作成、チラシやポスターのデザイン等についてもクラウドソーシングで発注するようになった。

 クラウドソーシングを活用するメリットは、費用を抑えられることや、品質も満足のいくものである上、デザインのコンペであれば多くの提案の中から一番良いものを選べることが挙げられる。また、受注者は土日も働くことが多いため、一般企業への外注に比べて納期が早いことも魅力と感じている。
こうしたメリットを享受するために、同社は発注する業務の選定を工夫している。クラウドソーシングはインターネット上のみのやり取りであるため、同社は対面での打合せが必要になりそうな複雑な業務は発注しない。仕様書を読めば遂行できるような簡単な業務に発注を絞ることで、発注後に問題が起きるリスクを軽減している。

町田 悦郎

15/02/28 21:00 | カテゴリー:,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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