経営お役立ちコラム
財務計画と資金計画/チェックリスト

1.財務計画の2つの切り口~トップダウンとボトムアップ

財務計画作成のプロセスは、トップダウンアプローチとボトム
アップアプローチの2方向に大きく分けられます。
トップダウンアプローチとは、まず長期的に達成すべき目標値を定め、
それをいかに達成するかを考えるやり方。反対にボトムアップ
アプローチでは、日々の売上見込みなどを積み上げた結果、計画期間
にどれだけの成果を達成できるかを見極めることになります。

トップダウンアプローチでチェックすべき事項は、やはり事業の
魅力度です。平たく言えば、「その事業は儲かるのか」ということ。
売上規模や利益額は、創業者自身だけでなく、金融機関や投資家に
とっても魅力的に映るものでなくてはなりません。
売上・利益だけでなく、経営の健全性を維持するためのその他の
数値目標も、この段階で定めていきます。たとえば飲食店経営の
場合、食材費と人件費の合計を売上高の60%程度に、また家賃は
10%程度に抑えるのが、健全な経営のための1つの指標とされています。

対するボトムアップアプローチでは、トップダウンアプローチで
定めた目標の「実現可能性」を検証していくことになります。
売上では、トップダウンアプローチで見積もった金額をどのよう
に達成するかを分解して考えます。分解の基本は、「単価×数量」です。
その切り口は事業や製品・サービスの形態によってさまざまですが、
一般的な小売店やサービス業の場合、「1人あたり平均購買単価×
単位時間あたり顧客数×稼働時間」をベースにするとよいでしょう。

一方、売上に対する費用の見積もりもたいへん重要です。費用の
洗い出しをモレなくスムーズに行うには、費用を大きく以下の3つ
に分けて考えていきます。

(1)売上に伴う費用
製造原価、仕入、宣伝広告費、販売手数料等
(2)人件費
(3)共通の費用
賃貸料、水道光熱費、通信配送費、旅費交通費、租税公課等

(3)共通の費用は、(1)や(2)に比べて見積もりが甘くなり
がちです。ヌケモレがないように、起業経験者やコンサルタントと
いった第三者にチェックを依頼するのも有効でしょう。

この費用の精査の段階で、売上・利益計画との整合性をしっかり
確認しておくことが、事業計画書の説得力を高める上でのキーポイント
となります。場合によっては売上・利益の数値目標だけでなく、事業
そのものの見直しが必要となるかもしれません。

このように、トップダウンとボトムアップの双方の観点からの
チェックを何度も重ねることが、事業計画書の完成度、ひいては
あなたの事業そのものの成功確率につながっていくのです。

2.資金計画

こうしたプロセスを経て売上と利益の見通しが立ったら、次は
資金計画の段階に入ります。
通常、資金計画といえば、「いつ、どれだけのお金が必要か」と
「そのお金をどこから調達するか」の2点に集約されますが、事業
計画書で検討が必要となるのは、主に前者の資金需要とその
タイミングについてです。

資金需要の中でも、開業時の設備投資は、金額も時期もはっきり
しており、見積もりがしやすい一方、日々の運転資金をどう考えるかは
悩ましい事項です。

まず、売上が計上月から遅れて入金される可能性。法人相手の場合は
標準でも1~2ヶ月後の支払いが大半です。個人との取引であっても、
決済手段がクレジットカードの場合、やはり入金までに1~2ヶ月かかる
上に、決済手数料の支払いが加算され、売上が目減りすることを
考慮しておかなければなりません。
さらに注意が必要なのは、事業が急拡大をする段階での資金不足です。
売上は遅れ、支出は早めにやってくるため、事業が順調に進んでいれば、
売れれば売れるほど資金が不足するという時期が訪れることがあるのです。

前のプロセスで策定した財務計画に基づき、上記のような個別の
要素を加味しながら、資金の需要量を算出します。なお創業の段階では、
設備投資とは別に、運転資金として1年半程度分を用意するのが
望ましいとされています。

3.リスクをどう考えるか

事業計画書の総仕上げとして、最後にリスクファクターについて
の検討を行います。

代表的なものは、競合企業の出現による競争環境の急激な激化と、
それに伴う売上の低下でしょう。特に、大企業の本格的な進出は常に
潜在的な脅威であると言えます。
IT系の企業の場合、技術動向の急激な変化や、開発の遅れに伴う
資金繰りの悪化など。組織内部に起因するものとしては、成長スピード
に伴った採用ができないことや、主要メンバーの(集団)退職などが
挙げられます。

こうして列挙してみるとおわかりの通り、創業段階で想定される
リスクは、膨大な量に上ります。しかし、すべてについて対策を
講じる必要はありません。事業計画「書」では、事業の本質的な
リスクと、その回避策、そのリスクが顕在化したときの業績への
インパクトに絞って記載するとよいでしょう。
このリスクについての検討を財務計画に反映し、ベストケース、
標準ケース、ワーストケースの3パターンを作成できれば、事業計画
としての信憑性を格段に上げることができます。また、戦略策定
のプロセスに立ち戻って、より競争力のある事業としての再検討が
必要になるかもしれません。
リスクの検討は、事業そのものを客観的に評価する上でたいへん
意義のあるプロセスです。全体の整合性チェックも兼ねて、第三者
の意見も取り入れながら作成してみてください。

以上、3回にわたり、事業計画書の作成プロセスと、各プロセス
における注意点などをご紹介してきました。
公的機関の融資のための必要書類としてではなく、創業者ご自身に
とって作成する意味のある事業計画書にしていただくヒントになれば、
との思いでお伝えいたしました。ご活用いただければ幸いです。

住田陽子

12/12/09 08:42 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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