経営お役立ちコラム
採用困難時代のSNSを活用した中小企業のブランディング戦略

人材不足が深刻化する中、中小企業が優秀な人材を確保するためには、SNSを活用したブランディング戦略で「選ばれる企業」になることが重要です。しかし、SNSができるスタッフを雇うだけでは成功しません。真に効果的なのは、社員全員が会社の魅力を発信する「社内広報チーム」なのです。
 
 
1. 中小企業こそ選ばれるブランディングが必要

「うちは小さな会社だから、ブランディングなんて大げさ」と思う経営者も多いでしょう。しかし、これは大きな間違いです。限られた人材で最大の成果を上げるためには、中小企業こそ「選ばれるためのブランディング」が欠かせません。
大手企業のような高水準の給与や充実した福利厚生で勝負するのが難しい中小企業にとって、「この会社で働きたい」と思ってもらえる魅力的な企業イメージこそが最大の武器となります。地域での認知度、企業文化の魅力、成長できる環境といった独自の価値を明確に伝えることで、企業規模の不利を覆すことができるのです。
 
 
2. 採用にブランディングが必要なわけ

現在の採用市場は完全な売り手市場です。求職者は複数の選択肢を持ち、より魅力的な企業を選ぶ傾向が強まっています。単に「人材募集」と掲げるだけでは、優秀な人材は集まりません。
採用におけるブランディングの効果は明確です。企業の価値観や文化を事前に理解した人材が応募するため、入社後のミスマッチが減少します。また、会社のビジョンに共感した人材は、長期的に働く意欲が高く、定着率の向上にもつながります。
 
 
3. SNSで選ばれるブランディングの秘訣

SNSは採用ブランディングにおいて、最も効果的なツールです。リアルタイムで企業の日常を発信でき、求職者との距離を縮めることができます。
特に効果的なのは、社員の生の声や働く様子を発信することです。求職者は給与や待遇だけでなく、「実際にそこで働く人たちがどのような表情をしているか」「職場の雰囲気はどうか」といった情報を重視します。SNSを通じて、これらの情報を自然な形で伝えることができるのです。

 
 
4. 社内広報チームでインナーブランディング

「採用に困っているから、SNSを始めよう。専任スタッフを雇おう。」これが最大の間違いです。会社の魅力や価値観を明確に発信できなければ、SNSのプロでも効果は出せません。本当に必要なのは「社長以下、自社のいいところを共有し、発信する自走できる社内広報チーム」なのです。おすすめは、社長以下、2〜4の複数の部署からベテランと若手のバランスよく兼任メンバーを集めること。
社内広報チームの最大の価値は、インナーブランディングの強化にあります。インナーブランディングとは、会社の思いや目標を社員全員で共有して、同じゴールを目指して行動することです。社員が自社の理念や価値を再認識し、SNSを通して発信することがアウトプットになり、学びが定着します。
あるメーカーでは、無料求人サイトだけでパート募集に29名もの応募がありました。チーム参加者からは「私のSNS投稿を見て応募してくれた人がいるんだって!」「他部署の仕事を知って、お互いに助け合えるようになった」「お客様からの反応が直接見られて、仕事が楽しくなった!」といった声が上がっています。
これは単なる広報活動ではなく、社員ひとりひとりが「会社の顔」になれる特別な機会です。自分の仕事への誇りと会社への愛着が自然と育まれ、それが外部への魅力的な発信につながります。

SNSを活用した広報戦略策定の7Steps
広報チームで計画的な運用を行うために必要な広報戦略の一例を示します。
①社長直下の広報チームを作る
②広報の目的を明確にする
③経営理念・ビジョンを再認識する
④社内外の広報手段を検討する
⑤SNSの選択と発信ルールを決める
⑥役割分担と発信計画を立てる
⑦定期的なフィードバックを行う
 
 
5. 終わりに

採用困難時代を乗り越えるためには、SNSを活用したブランディング戦略が不可欠です。しかし、その成功の鍵はSNS専任者の力ではなく、社員全員が会社の魅力を発信する社内広報チームにあります。
社内広報チームは、採用効果だけでなく、社員のモチベーション向上、チームワークの強化といった副次的な効果も期待できます。「みんなで輝く職場」を目指し、社員一人ひとりが誇りを持って働ける環境を作ることが、最強の採用ブランディング戦略なのです。


<執筆者>

奥野美代子
株式会社アイリスプランナー 代表取締役
外資系ブランドで27年間マーケティングに従事し、日本でのブランド確立に貢献。中小企業診断士として独立後、医療・美容・飲食など300社以上の中小企業の経営改善、マーケティング支援に携わる。独自の「魅力発信ブランディングメソッド」で採用と集客を両立させるSNS/PRの広報支援を行う。「SNS広報」「デジタル採用」のテーマでセミナー・執筆活動も多数実施。

25/06/30 18:00 | カテゴリー:, ,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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