◆健康経営とは
経済産業省のHPでは、健康経営とは「従業員の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」と表現されています。
また健康経営を推進する政策の代表的なものに「健康経営優良法人の認定制度」があり、企業規模に関わらず健康経営への関心は高まっています。
◆中小企業で健康経営が求められる背景
健康経営の取り組みが求められる背景として、下記3点が挙げられます。
①少子高齢化
現役世代の人口は年々減少傾向です。そのため企業が今後も存続するためには、新たな労働力確保だけではなく既存従業員の生産性向上が不可欠です。
②採用難航
採用についても、大学生新卒者が考慮する要素の上位には「会社の雰囲気」や「やりたい仕事に就ける」といった点が挙げられており、健康経営の推進をきっかけにした従業員の働きやすい環境整備をアピールすることで、魅力ある企業として採用力の向上を期待できます。
③急速なテレワーク浸透や感染症対策
コロナ禍により企業の働き方は変わり、対面接触頻度の低下や感染症対策によるコミュニケーション機会の減少によってメンタル不調が顕在化してきました。これまで以上に、従業員の健康管理の重要性が高まっています。
◆健康な従業員が増えることによる企業のメリット
健康経営の推進と従業員の健康改善により、企業側にもメリットがあります。
①従業員の生産性向上
健康経営に関する調査は、アメリカを起点に様々行われております。国内の調査でも「健康リスク」と「生産性損失」は明らかな相関関係があり、従業員の健康改善が生産性向上ひいては企業業績や株価に良い影響を与えることが検証されています。
<参考URL>
経済産業省による平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業(ヘルスケアビジネス創出支援等)「健康経営評価指標の策定・活用事業」東大ワーキングループ(WG)による調査
http://square.umin.ac.jp/hpm/index.html
②ステークホルダからの信用力向上
健康経営に取り組むことで、ステークホルダからのイメージアップを期待できます。実際に健康経営優良法人の認定を受けた場合、自治体からのインセンティブや金融機関の優遇措置を受けられるなど、周囲のサポートを得ることができます。
③「ホワイト企業」としての認知度向上
健康経営の推進により、従業員を尊重していることを外部に明示できます。多くの企業は、健康経営宣言を自社のHPに掲載するなどして、外部へ情報発信を行っています。この取り組みが、採用活動への好影響や取引先との信頼獲得に繋がります。
◆健康経営推進のキーポイント
健康経営の推進は、全社的に取り組むことが重要です。一方で、健康は従業員のプライベートの範囲でもあり、会社としての関与が難しい側面があります。そのため、推進にあたっては必須ポイントが2点あります。
①経営者のリーダーシップ、②従業員の自覚
この2点が嚙み合ったときに、組織としての健康経営が促進されます。
◆健康経営の支援制度
健康経営の推進に向けては、専門家を活用することが早道です。
健康経営には、推進者の認定資格制度もあり、認定専門家の支援を受ける制度も整っております。東京都では「東京都職域健康促進サポート事業」の名称で支援活動を行っています。健康経営エキスパートアドバイザーが企業を訪問し、無料で診断と計画策定等のサポートを行うという内容です。
<参考URL>
東京都福祉保健局 職域健康促進サポート事業
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kensui/gan/torikumi-kankei/support/index.html
◆健康経営の「はじめの一歩」
健康経営の取り組みは、難しいことをやる必要はありません。いきなり大きな成果を目指すのではなく、できることから小さく始めることが重要です。
その「はじめの一歩」として、下記2点の取り組みをお勧めします。
①健康診断受診率100%達成、②ストレスチェックの実施(※)
これらを実施し、従業員と組織内の健康状態を把握することから始めましょう!
※ストレスチェックとは
労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を目的とした検査です。常時50人以上の労働者がいる事業場には実施義務があり、50名未満の場合は努力義務となっています。健康経営の観点から50人未満であっても実施することが推奨されており、厚生労働省から無料で検査できるツールも提供されております。
<参考URL>
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム ダウンロードサイト
https://stresscheck.mhlw.go.jp/
<<執筆者>>
泉 真吾(いずみ しんご)
中小企業診断士 MBA 健康経営エキスパートアドバイザー 応用情報処理技術者
インフォコム株式会社勤務
ICT領域における新規事業開発、法人営業、販路開拓、事業創出の実務経験を有している。
現在は、副業として中小企業の経営診断、事業再構築の提案や人材マネジメントの提案などの支援を行っている。