中小事業者から、自社の製品・商品やサービスの集客をして売上を拡大するために、デジタルマーケティング(※1)を導入・活用したいという相談をお受けすることがあります。まだ何も始めていない段階だけでなく、補助金を採択し予算が決まったうえで事業者や他社に丸投げした結果、期待通りの成果が出なかったというケースでご相談をいただくこともあります。
デジタルマーケティングの相談(特にSNSやGoogleなどへの広告を行いたい相談)を受ける際、私は半数以上の場合で、デジタルマーケティングをすぐには勧めません。それは、デジタルマーケティングが向かないということではなく、事業者側の準備が圧倒的に足りていないことにあります。
ここでは、事業者としてデジタルマーケティングを行う前に考えないといけないことを3回にわたってお伝えいたします。
(1)「戦術」よりも「戦略」が優先される
ここでいう戦略とは、誰を対象顧客とし、自社の何を強みとして、どのようなプロセスで顧客を獲得していくのか?または、売上を上げていくのか?を指します。ペルソナ分析やSWOT分析(※2)が役立つ場合もありますが、私が推奨しているのは3C分析(※3)です。これにより、対象顧客や競合、自社の強みを整理し、より具体的な方向を見出すことができます。戦術も重要ですが、戦略の方が優先されます。
戦術とは、戦略を行う上での方策です。目で見て確認できる手段を指します。Webサイトを制作することや、SEO(※4)対策、リスティング広告も、全て戦術です。
戦略は、自社のWeb担当者や他社に丸投げせずに、社長や営業責任者が責任をもって考えましょう。自社の製品・商品やサービスの市場特性や強みは、ご自身が一番よくわかっているはずですので、最も適した判断を下せます。
(2)集客施策は「ネット」と「リアル」を複合することも検討する
今日では、デジタル化やDX(※5)という用語が飛び交っており、人的コストをかけないことが流行りになっています。ましてや、デジタルマーケティングを行いたいわけですから、リアルな施策であるアナログな手段には目が向かないかもしれません。リアルの施策は以下のようなものがあります。対象顧客によっては、紙を使う施策のほか、対面での施策実施も組み合わせてみるとよいでしょう。
・ハガキ(手紙)
・DM(ダイレクトメール)
・ニュースレター
・セミナー・勉強会
コロナ禍を経てオンラインが主流になったことや、業務効率化の影響で対面活動を軽視する風潮もありますが、必要な時や差別化の1つとして対面活用の効果は大きいと考えています。
(3)売上が増加しても、利益が減少していませんか(費用対効果の検証)
デジタルマーケティング(特にSNSやGoogleなどへの広告配信)を行うと、一般的には売上が増加するといわれています。特に、新規顧客が増えたり、リピート購買が増えたりすると、事業者としてはとても嬉しいものです。しかし、利益について考えているでしょうか。
例えば、デジタルマーケティングの効果として、1か月に売上が50万円増加(1万円のものが50個販売)したと考えます。原価は25万円(1個5,000円)とします。そうすると、利益は25万円増加しますが、そのためのデジタルマーケティングにいくら費用投下しているでしょうか。ここでいう費用投下とは、他社に委託している費用、広告費用の合計を指します。利益より少ない投下費用でしたらまだよいのですが、それ以上の投下費用であれば、デジタルマーケティングの施策自体が赤字になってしまいます。
デジタルマーケティングを運用する際の考え方や方法については、次回以降でお伝えいたします。