経営お役立ちコラム
これならできる、初めての障害者雇用(第1回) 障害者の雇用状況と厚労省の新たな施策

◆はじめに

2024年4月に民間企業の障害者法定雇用率は2.5%に上昇し、2026年7月には2.7%となることが決まっており、障害者の採用に関してはすでに売り手市場となっています。
こうした状況で、中小企業はどのようにして障害者雇用を進めればよいのでしょうか。
これから3回にわたり、最新の施策を確認し、雇用のための実践的なノウハウをご紹介いたします。

◆障害者の雇用状況と厚労省の新たな施策

2023年12月に厚生労働省が発表した「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用される障害者は64万2178人で、前年より2万8220人増加(対前年比4.6%増)し、20年連続で過去最高となりました。また実雇用率は、12年連続で過去最高の2.33%(前年は2.25%)となり、着実に障害者雇用は拡大しています。

1.半数は精神・発達障害者
雇用率の算定に含まれる障害者は、手帳を保持していることが要件です。手帳には、身体障害者の身体障害者手帳、知的障害者の療育手帳、精神・発達障害者の精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。
精神障害者や発達障害者に多くみられる、障害の診断を受けていても手帳を取得していない人は、障害者雇用率の計算では対象外であることにも注意が必要です。
新規求職者と就職者の推移を見ると、発達障害を含む精神障害者(以下、精神障害者と表記します)は右肩上がりのグラフとなっています。身体障害者(1976年)、知的障害者(1998年)の順で雇用義務の対象となり、精神障害者の雇用が義務化されたのは、2018年と最近のことです。このため、精神障害者は就業意欲と能力があるのに就業していない人が多い状況となっています。

図表1 新規求職件数と就職件数

出典)厚生労働省「令和4年度のハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」

2.障害者雇用政策の方向性

①法定雇用率の引き上げ(量的拡大施策、2024年4月1日から)
障害者雇用率制度とは、国や地方公共団体、民間企業は常時雇用している労働者に障害者雇用率を乗じた数以上の障害者の雇用を義務付ける制度です。
2024年4月1日に、民間企業の法定雇用率はそれまでの2.3%から2.5%(従業員40.0人以上)に引き上げられました。2026年7月1日には2.7%(従業員37.5人以上)に引き上げられます。

②雇用率の算定対象の拡大(量的拡大施策、2024年4月1日から)
雇用率の計算は、障害の程度によって決められているポイントに換算して計算を行います。
現状では週所定労働時間20時間以上30時間未満の精神障害者は0.5ポイント(政策的に1.0ポイント換算とされており、当面の間継続されます。)となっていますが、2024年4月から、週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者が0.5ポイントとして算定の対象に加えられました。これにより、体力面などで20時間以上の勤務は難しい精神障害者の就労の促進が見込まれています。

図表2 雇用率の算定対象の拡大

③キャリア形成と定着(質的向上施策、2023年4月1日から)
障害者雇用促進法の第5条が改正され、事業主の責務として障害者の能力の正当な評価と適当な雇用の場の提供および適正な雇用管理に加えて、「職業能力の開発・向上措置」が努力義務として規定されました。
これは、ジョブコーチ(職場適応援助者)の活用による障害者社員の定着促進や資格取得・職業訓練や研修の実施等によるキャリア形成を促し雇用の質の向上を促進させるものです。

図表3 キャリア形成と定着

3.企業に求められること

図表1から確認できるように、就職する障害者の約6割は精神・発達障害者です。私の実務上の経験ですと、感覚的には求人をかけるとほぼ全てが精神・発達障害者の応募です。
依然として身体障害者の雇用にこだわる企業は多いですが、これは自らハードルを上げてしまう行為です。これからは、精神・発達障害者の雇用ノウハウを積み上げてゆくことが企業に求められています。

次回は、障害者雇用のフローと留意点についてお話しします。

◆参考資料
1)「令和5年障害者雇用状況の集計結果」厚生労働省2023年12月
2)「令和4年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況を公表します」厚生労働省2023年5月
3)「第124回労働政策審議会障害者雇用分科会資料」厚生労働省2023年2月


<<執筆者>>

木下文彦(きのしたふみひこ)

中小企業診断士・特定社労士、ラグランジュサポート株式会社代表取締役
前職では、障害者雇用部門の責任者として、雇用戦略の立案・社内理解促進・業務創出・採用・定着・教育研修・評価など全社70名の障害者社員の雇用管理を行った。
現在は、企業に対する障害者雇用コンサルティングや人材関連の補助金・助成金業務を展開している。
2024年11月1日「従業員300人以下の企業の障害者雇用」(中央経済社)出版予定。

24/05/31 21:00 | カテゴリー:, ,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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