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「克己」常に昨日より明日 ―中小企業診断士と社長の“二刀流”梅澤会員が語る中小企業診断士像―

 今回は、50名の社員を抱える物流子会社に出向している社長の梅澤尚稔さんにインタビューしました。社長にとって中小企業診断士の資格はどのような存在なのでしょうか?私自身物流企業の企業内診断士であり梅澤さんとは“同業者”です。色々なことを聞いてみたいと思います。

■現在の会社(親会社)に就職のきっかけ
食品に興味を持っていた梅澤さんは大学生時代に半年間のバックパッカー旅行で東南アジアと中国を巡り、旅した国々の食材・食文化の素晴らしさに触れ、「海外の食材・食文化を日本に広めたい」という思いが芽生えました。  
その後、食材輸入を行っている企業を求めて就職活動をし、現在社長を務める物流子会社の親会社にめぐり会いました。「今はプライム市場の企業ですが当時就職雑誌では“新興企業”扱いでした。この会社ならやりたいことができると考え、その会社に決めました。入社後、輸出入業務を担当し、主に輸入した食材を加工食品メーカーに販売する業務に携わりました。」

■中小企業診断士を目指したきっかけ
入社から10年以上が経ち管理職に昇進し、順調なキャリアを積んでいた頃、「このままだとただの営業だなあ」とぼんやりと不安を感じていたそうです。
そんなとき中小企業診断士の存在を知りました。書店で見たテキストのボリュームに驚きながらも中小企業診断士の勉強を始めました。「自己啓発のための勉強で、キャリア形成とか出世のための肩書とかは全然考えていなかったです。ただ試験を甘く考えていたので合格まで時間がかかってしまいました。1次試験合格の時は子供が生まれる前で、2次試験の合格は子供が1歳になる年だったので何とか勉強時間の捻出はできました。自宅の目の前に区立図書館があったので、週末は主(あるじ)のようにその図書館に籠って勉強していました。」

■資格取得後の中小企業診断士として活動開始
2016年に苦労の末に診断士資格を取得し、翌年に15日間の実務補習を経て2017年4月に中小企業診断士登録となりました。「実務補習は15日間コースで、作業が深夜に及んだり、試験合格直後のただのサラリーマンがいきなり経営者にインタビューという大変な緊張状態だったので、受験期間を通して実務補習が最もキツかったですね。ちなみに1社目と3社目の指導員は現在の宇野支部長でした」。
診断士1年目に早速城南コンサル塾に入塾。「3社目の実務補習終了後に現在の宇野支部長に“診断士の資格を取ったのに錆びるのはもったいない”と言われ、自己啓発の一環として入塾を決意しました。」 2017年後半には小規模事業者活性化事業に参加し実務従事も行いました。
本格的な診断士活動は診断士2年目の2018年からで、小規模事業者活性化事業に参加した縁で地域事業開発部(現:地域支援部)に入部しました。「部活動として地域事業開発部、エキスパートコースは食品コンサルエキスパートコースを受講しました。地域事業開発部では城南支部が渋谷区から委託を受けている渋谷創業塾での経験も積めました。現在は、部活動は地域支援部、研究会は財務診断研究会と事業承継実務研究会、そしてチューター制度にチューターとして参加しています。」
 
■子会社の社長に就任
診断士資格取得2年後の2019年1月に、30年間社長を務めた前社長の後を継ぎ物流子会社の社長に就任しました。物流子会社では独特の雰囲気や課題があり、時代遅れの会計基幹システムであったり病気で離脱している従業員がいたりして“労働集約型の会社であるにも関わらず働く環境が良くないな”という感じだったそうです。そこで新基幹システムの導入や就業規定・賃金規定の改訂、さらには会社を良くするため資格取得による会社のブランディングなど、積極的な改革を進めました。これらの取り組みにより、女性ドライバーの採用などで社員数は10名増加し、売上も倍増する成果を上げました。
 梅澤さんは当時の社内改革をこう振り返っています。「中小企業診断士の知識があったので、この会社にとって何が必要か分かりました。労働集約型の会社だから売上だけを上げればいいかというとそうではなく、一番動いてもらっているドライバーさんを大事にしなければならない(現在全社員数50名のうちドライバーさんは34名)。そのために賃金規定を改定したり働きやすい職場環境を構築したり、また人材採用のために「健康経営優良法人認定」や「働きやすい職場認定制度」を取得するなど周りの会社に比べて良い会社のイメージをつけるために会社のブランディングも図りました。これらのことは、自分がもし診断士の資格を持たずに社長に就任したらやらなかったと思うし、そういう意味で中小企業診断士の資格は活かせたと思います。」

【会社での写真】
会社のドライバーさんと談笑する梅澤社長です!

■社長業と中小企業診断士の両立について
社長業と中小企業診断士活動の両立について聞いてみました。「難しい質問ですね。中小企業診断士活動に月間どれくらいの時間を割いているかは分かりません。あえて分けるのであれば、今は社長業をフルでやって、出社前や就業後の時間を使って自己研鑽したり、診断士との繋がりを作ったりする活動が中心ですかね。診断士の資格や知識は社長業に活かせますが、あくまで社長は社長だと思っています。」企業内診断士活動を副業と考えて聞いてしまったのですが、私の認識が間違っていたようです。

■中小企業診断士としてのやりがい
社長業が中心である梅澤さんにとって中小企業診断士としてのやりがいについて聞いてみました「やりがいは支部活動やチューターとしての活動ですね。そこで得られる人のつながりや諸先輩診断士の方の考え方・知識が、自分個人に役立っています。また会社の経営にも役立っていますが、それは自分から役立てようと考えているわけではなく、結果的に役立っているということが多々ありますね。そして将来は、逆に今の社長業の経験が診断士として独立して中小企業を支援するときにすごく役に立つだろうなあとも考えています。」

■今後の展望
現在子会社の社長業に全力投球の梅澤さんに、今後の診断士活動についてお聞きしました。「30年間社長を務めた前社長の後を継いだ私にとって物流子会社の経営は“第二創業”です。まずは社長なので、就任後4年間で売上高は倍増したがコスト先行になっている収支構造を改善すると共に、2024年問題に対応した組織を作ることが社長として最低限やならければならないことです。」
まずは社長業が優先であることを前提に2つの展望についてお話を頂きました。「一つ目は、将来的には、今の社長業の経験を活かして伴走支援の診断士活動をしたいです。社長の気持ちを理解しつつしっかり診断して会社が自信を持って成長できるという良い方向にもっていける診断士になりたいですね。」
「二つ目は社会貢献です。これには「会社員」としてと「診断士」としての2面があります。会社員としては、現在全国食支援活動協力会に対するボランティア活動として、年に数回、週末や空いた時間を使って、子供食堂に食べ物を届ける“ラストワンマイル”配送のお手伝いをしています。物流会社としての社会貢献ですね。診断士としての社会貢献は、例えば運送の手伝いのような一部ではなく組織運営のようなかたちで困っている方々を助ける社会貢献をしたい。国家資格に恥じない活動をしたいですね。」

■後輩診断士へのメッセージ
 最後に、これから中小企業診断士として活動する後輩診断士に向けたアドバイスを頂きました。「先輩中小企業診断士にはたくさん凄い方や個性的な方がいらっしゃいます。是非自ら活動して自分を売って色々な方と出会ってネットワークを拡げて下さい。中小企業診断士という資格はそういうことが出来る資格です。ぜひこの資格を活かして自分の世界を拡げ、そうしたネットワーク作りを通して、自分の知識や世界を拡げて自分なりの診断士像を作って下さい。」

インタビューを通して、多くの社員を抱えて社長業を務める梅澤さんは“究極の企業内診断士”ではないか そんな感想を持ちました。

【インタビュー風景】一つ一つの質問に、丁寧にまた情熱的に回答いただきました。

〇梅澤 尚稔(うめざわ なおとし)プロフィール
 企業内診断士として活動。2017年診断士登録。プライム市場企業として貴金属と食品の二つの領域で事業展開する企業に入社 2019年から子会社である物流会社の社長として勤務 城南コンサル塾第13期生 城南支部地域支援部所属 今年度は城南支部のチューター制度にチューターとして参加

〇筆者:高田 浩一郎(たかた こういちろう)プロフィール
企業内診断士 2023年診断士登録 国際部サポーター

2023年診断士登録 国際部サポーター 総合物流企業に勤める企業内診断士 15日間実務補習でお世話になった診断士講師の方との縁で城南支部に入部 物流を軸にした診断士活動を模索中

24/01/29 12:26 | 投稿者:青年部

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