各種報告
「中小企業の海外ビジネス展開への生成AI(ChatGPT)活用の可能性」

1.はじめに ~中小企業での生成AI活用のすすめ~
近年、ChatGPTを筆頭に生成AIの開発と活用が急速に進んでいます。生成AIは、作業を効率化・自動化したり、予測・分析を行ったり、サポートを行うなど、多岐にわたる分野で革新的な役割を果たしており、その可能性は今後も拡大し続けて行くことでしょう。特に経営資源に制約がある中小企業においては生成AIの利活用はもはや不可欠な状況にあるといっても過言ではないでしょう。
 
海外市場への進出は、多くの中小企業にとって大きな成長機会である一方、言語・文化の壁や現地事情の把握といった課題も伴います。こうした中、生成AIを戦略的に活用することで、これまで大企業でなければ実現できなかった海外展開の下準備や日常業務の効率化が中小企業にも可能となっています。
 
2.海外進出準備のための生成AI活用事例のご紹介
そこで今回は、生成AIの代表格であるChatGPTを中小企業の海外進出にどのように使うことができるのか、架空のシチュエーションで実際にChatGPTを使っての事例をご紹介します。
 
まず、今回利用するChatGPTの紹介です。ChatGPTはAIとの対話を通じながら情報を得られるのが特徴です。質問欄に質問や相談したい内容(「プロンプト」と呼びます)を入力すると、AIがチャット形式で回答を生成してくれます。さらに、こちらからの質問を重ねて理解を深めることができますし、逆にAIの方から「こういう視点での深堀はいかがでしょうか」と提案してくる場合もあります。
 
ChatGPTには無償版と有償版がありますが、今回は無償版を利用します。

(1)ChatGPTは何ができるか聞いてみたら
まず、ChatGPTをどのようなことに活用できるのでしょうか? ChatGPTへ「海外進出を考えている企業に対してあなたはどういう貢献ができるか、あなたのアピールポイントを記載したチラシを作ってください」と指示しました。
 
ChatGPTとの幾つかの事前確認の後、右図のようなチラシの回答を得ました。プロンプトを記入して結果が出るまで数分です。内容・デザイン共にまずまずのできで、ChatGPTがどういうことに使えそうなのか理解できると思います。
 
なお、右図はChatGPTからの一発目の生(なま)の回答ですので(日本では使用されない文字が含まれています)、自分自身で内容を確認の上、加筆修正するこが必要となります。
 
(2)ベトナムでのEC事業の展開について聞いてみたら ~深堀ブラッシュアップ事例~
次に、前項で作成したチラシに「市場リサーチの効率化」に役立つとの記述があったので、「市場リサーチ」に関する知識を得るための質問をしてみました。
 
「あなたはベトナムのECマーケットに知識を有するマーケターです。私はベトナムで日本食のEC販売を計画しておりマーケット情報を収集中です。市場動向、競合情報、文化的特徴に関する情報を教えてください。」というプロンプトを記入したところ、回答は以下でした。30秒程度です。
 
この結果もチラシの例と同様、回答の項目や記載内容を参考に、自分自身もしくは継続したChatGPTとのやりとりでさらなる深堀、ブラッシュアップをすることで、より理解を深めることができます。
 
★★★★★——<引用 ChatGPTからの回答>—–★★★★★
 
★★★★★——<引用終わり ChatGPTからの回答>—–★★★★★

3.まとめ ~グローバル市場における競争力を高めるための生成AI活用~
本コラムでは、生成AI(今回はChatGPTを紹介)の活用が中小企業の海外ビジネス展開にどのような価値をもたらすかを、具体的な事例を通じて紹介してきました。従来、大企業が多くの資源と人材を投じて行っていた海外展開の準備作業が、生成AIの活用によって中小企業でも短時間・低コストで実現可能になりつつあります。
 
実際にチラシ作成や市場調査などを通じて明らかになったように、生成AIは中小企業にとって「手軽に使える外部ブレーン」として機能します。専門的な知識やノウハウがなくとも、質問を重ねることで深い洞察を引き出すことができ、企画・マーケティング・戦略立案といった幅広い領域に貢献する可能性を秘めています。
 
もちろん、生成された情報はあくまでも出発点であり、最終的な判断や表現の磨き上げには人の手による確認と調整が不可欠です。しかし、生成AIの活用は中小企業の情報収集・仮説構築・アウトプット作成において大きな「時短」と「気づき」をもたらします。
 
今後、生成AIの性能はさらに進化し、多言語対応や専門性の深化も進むと考えられます。中小企業がこの波にいち早く乗ることができれば、経営資源の制約を乗り越え、グローバル市場における競争力を大きく高めることが可能となるでしょう。生成AIの活用こそが、中小企業の未来を拓く鍵になると考えます。

 
本コラムが、皆様の生成AIを使ってみよう! と思っていただくきっかけにつながれば幸いです。
 
【筆者紹介】
大井 隆雄(おおい たかお)
中小企業診断士 東京都中小企業診断士協会城南支部国際部所属
総合電機メーカーで約30年、主に海外ビジネス推進を担務。現在は大手通信事業者系情報通信システム企業に勤務。

 
 

25/08/10 00:00 | 投稿者:国際部

返信


返信する

コメントを投稿するにはログインしてください。


このページの先頭へ戻る