経済のグローバル化が進み、越境ECをはじめ商品の輸出入は、以前にも増して身近なものとなっています。事業者の皆様の中には自社の成長のため、新たな市場を求めて海外への輸出を考える方も多いのではないでしょうか。
海外市場開拓の第一歩は市場調査です。どの国に自社商品の市場があるのか、おおよその見当をつけることから始まります。今回は市場調査の方法の一つとして特定の商品が、どの国に、日本からどのくらい輸出されているか簡単に調べる方法をご紹介いたします。
利用するのは税関ウェブサイトの「財務省貿易統計」(以下、貿易統計)です。無料で誰でも利用できます。貿易統計は、輸出入の流れを詳細に示すデータの宝庫であり、これを活用することで市場の需要動向を客観的に把握することができます。本コラムでは、具体的な手順として「①輸出統計品目番号の特定」と「②貿易統計の抽出」の2ステップに分けて紹介します。
① 輸出統計品目番号の特定
貿易統計を調べる際、まずは該当輸出品について輸出統計品目番号と呼ばれる分類コードを特定する必要があります。輸出統計品目番号は国際貿易において輸出入品の分類を統一するための数字のコードで、日本の場合は9桁で設定されています。ちなみに6桁目までは世界共通の番号となっており、HSコード(Harmonized Systemコード)とも呼ばれています。7桁目以降は各国ごとに必要に応じて細分化がされています。貿易統計はすべてこの輸出統計品目番号で分類し計上されています。
出典:「輸出統計品目表」(税関)(https://www.customs.go.jp/yusyutu/index.htm)をもとに筆者作成
輸出統計品目番号の特定に当たって利用する資料は以下になります。これらの資料は、税関のウェブサイトで誰でも閲覧できます。
・輸出統計品目表:輸出品目がどの輸出統計品目番号に該当するかまとめたもの
・関税率表解説:輸出統計品目表の内容をより詳細に解説したもの
・事前教示回答(品目分類):税関に輸出統計品目番号の問い合わせがあったものをまとめたもの
出典:税関ウェブサイト(https://www.customs.go.jp/tsukan/index.htm)
まずは輸出統計品目表を参照して、輸出品の輸出統計品目番号を検討しましょう。輸出統計品目表はあまり詳細な説明は記載していないので、分かりにくい場合には関税率表解説を参照すると良いです。輸出統計品目表と関税率表解説を見ても輸出統計品目番号が特定できない場合は、事前教示回答(品目分類)も利用してみましょう。事前教示回答(品目分類)は、過去に税関に輸出統計品目番号の問い合わせがあった事例がまとめられています。商品名や材料名などから検索できますので、似たような特徴を持つ輸出品がどのような輸出統計品目番号に分類されるかを調べることができます。
② 貿易統計の抽出
輸出統計品目番号を特定したら、その番号を使って貿易統計から情報を抽出します。貿易統計にはいくつかの統計表がありますが、中でも「品別国別表」が適しています。
出典:税関ウェブサイト(https://www.customs.go.jp/toukei/search/futsu1.htm)
品別国別表の条件入力欄で、“輸出”を選択し、”品目の指定”で該当の輸出統計品目番号を指定して検索をしましょう。具体的な例として、2025年1月の香水およびオーデコロン類(輸出統計品目番号:3303.00.000)の貿易統計を検索してみましょう。
出典:税関ウェブサイト(https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm?M=01&P=0)
“輸出先の国名”、“輸出した数量(重量)”、“輸出した金額”を抽出することができます。
では、検索した2025年1月の香水およびオーデコロン類(輸出統計品目番号:3303.00.000)の貿易統計を具体的に確認してみましょう。
出典:「2025年1月の香水およびオーデオコロン類の輸出貿易統計」(税関)
(https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm?M=01&P=1,1,,,,,,,,1,0,2025,0,1,0,2,330300000,,,,,,,,,,1,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,20)をもとに筆者作成
まず、輸出量を確認すると、台湾が最大の輸出先となっており、6,973kg(24,585千円)が輸出されています。これは、日本の香水及びオーデコロン類に対する台湾市場の需要が高いことを示しており、販路拡大の有望なターゲットとなる可能性があります。
さらに、この統計を活用すると「単価」も把握できます。貿易統計には輸出金額と輸出数量(重量)が記載されているため、「輸出金額 ÷ 輸出数量」 で単価を算出できます。計算結果を見ると、輸出量の多い国の中では中国向けの香水の単価が約25.78千円/kg と最も高いことが分かります。このことから、中国市場では比較的高級な香水が求められていることが推測されます。中国の消費者はブランド志向が強く、高品質な商品に対して高い価格を支払う傾向があるため、プレミアム商品を展開する戦略が適しているかもしれません。
このように、貿易統計を活用することで、単なる輸出量だけでなく、市場ごとの需要の特性や価格帯の傾向を把握できます。また、今回は2025年1月の1カ月だけの統計を考察しましたが、長期的なデータを分析することで、より深い市場動向を把握できる可能性があります。
統計データを、ターゲット市場の選定や販売戦略の立案に役立ててみてはいかがでしょうか。
【筆者紹介】
大島 正(おおしま ただし)
中小企業診断士 東京協会城南支部所属。物流企業に20年間勤務し、国内物流から国際物流まで幅広く物流現場を経験。
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