各種報告
中小企業のカーボンニュートラル~脱炭素化で経営が変わるのです~

1.中小企業にカーボンニュートラル施策が必要な理由、背景
筆者は再生可能エネルギーの分野でビジネスさせて頂いております。昨今、国連グローバル・コンパクト、環境・社会・ガバナンス(ESG)、GHGプロトコル等、様々な項目への対応機会が増えてきました。今回は、特にカーボンニュートラルに注目したいと思います。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを指します。経済産業省及び環境省から例示されている中小企業がカーボンニュートラル対策に取り組むメリットとしては、①省エネによるコスト削減、②資金調達手段の獲得、③製品や企業の競争力向上等が挙げられています。特に③については、昨今、グローバル企業や取引先からの脱炭素化の要求が増加しており、カーボンニュートラル対策に取り組むことによって、企業の競争力は向上しますが、反面、対応次第では取引機会を失う可能性もあります。

図表1

出所:「2023年版中小企業白書」(中小企業庁編)

2.カーボンニュートラル施策の要求
日本では、2020年10月に、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しています。大手企業はサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指しており、中小企業にも具体的な施策を求めています。図表2はその一例になります。

図表2

出所:各社公表資料より筆者作成

多くのグローバル企業がサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを宣言していますが、サプライチェーン全体では図表3の通り、企業自身でコントロールできる部分(Scope1,2)は限られており、中小企業を含めた取り組み・協力が必要なScope3(サプライチェーンの上流、下流部分)の対応が必須です。中小企業を含めたサプライヤーの取り組みが求められる理由はここにあります。

図表3

出所:中小企業のカーボンニュートラル実現に向けた取り組み(環境省)
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/SME/network/03.pdf)をもとに筆者作成

3.具体的な取り組み
具体的な取り組みの1つとして、中小企業版SBT(Science Based Targets)認証を取り上げます。これは、科学的根拠に基づいたCO2排出削減目標を設定し、その達成を目指す取り組みです。SBT認証を取得することで、企業は国際的な基準に準拠したCO2排出削減を行っていることを証明でき、環境経営のアピールや取引機会喪失リスクの回避に繋がります。中小企業にとっても、SBT認証は持続可能な経営を実現するための重要なステップとなります。中小企業版は通常版に比べて、CO2削減すべきハードルが低く、費用も安価です。
大枠のステップは図表4の通りです。

図表4

出所:筆者作成

自社の排出量計算の経験がない場合、日本商工会議所が無料で配布しているCO2チェックシート(日商環境ナビ:https://eco.jcci.or.jp/checksheet)等を活用することが有効です。自社の排出量を把握することは、カーボンニュートラルに向けて大きな一歩となります。

その他、カーボンニュートラル施策を実行し、成功を収めている中小企業及び地方自治体は多くあります。図表5は経済産業省から発表されているカーボンニュートラル対応例です。取り組みに至った経緯・狙い・効果は各社の置かれた環境によって異なりますが、事業環境の変化をチャンスとして活かし、リスクに計画的に立ち向かう姿勢が大切になります。

図表5

出所: カーボンニュートラルと地域企業の対応(経済産業省)

その他、具体的に取り組み事例の参考となるサイトも以下に明記させて頂きます。

・カーボンニュートラルと地域企業の対応(関東経済産業局WEBサイト)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/ene_koho/ondanka/data/kantocn_guidance.pdf#page=59
・カーボンニュートラル取り組み事例(関東経済産業局WEBサイト)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/ene_koho/ondanka/cn_example.html
・「省エネ・カーボンニュートラル取り組み事例集」~2050年に選ばれる企業になるために~
https://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/carbon/jirei/cn.html

4.まとめ
中小企業におけるカーボンニュートラル施策は、環境保護だけでなく、経済的なメリットや社会的責任の観点からも重要です。変化が激しく、新たに学んだり、導入したりする事項も多いため大変な側面もありますが、グローバル企業と取引をする上では避けて通ることはできなくなりつつあります。また、カーボンニュートラルを目指すことで、中小企業は競争力を高め、持続可能な成長を遂げることができるのです。様々な施策や支援策も用意されていますので、これらを活用しながら、まずは一歩を踏み出してはいかがでしょうか。

≪様々な施策や支援策の参考サイト≫
・中小企業等のカーボンニュートラル支援策(経済産業省WEBサイト)
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/SME/pamphlet/pamphlet2022fy01.pdf
・我が国のグリーントランスフォーメーション政策(経済産業省WEBサイト)
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/transition/pathways_to_green_transformation.pdf
・HELLO!GREEN
https://hello-green.jp/(株式会社モジワウスWEBサイト)

【筆者紹介】

太田 聡(おおた さとし)
電機メーカーで、再生可能エネルギー関連の製品や発電プラントの建設営業に15年以上従事。
BtoB~BtoC、国内顧客~海外顧客と幅広く経験。2021年11月中小企業診断士登録。

24/12/10 00:00 | 投稿者:国際部

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