2024年5月27日から5月29日にかけて、在インドネシアの日系企業4社を訪問し、工場見学及び企業責任者から話を聞くことができました。本稿では、その中から学んだ日系企業のインドネシアでの工場経営の成功の秘訣と課題についてご紹介したいと思います。
日系企業はジャワ島西部に集積しています(図表1)。今回は、ジャカルタ周辺の日系企業4社を訪問しました(図表2)。
図表1:インドネシアの日系企業の集積状況
出所:日本貿易振興機構(JETRO)
図表2:今回訪問企業一覧
出所:筆者作成
1.訪問先日系企業の特徴
訪問先企業の特徴を、ビジネスモデルキャンパスを利用して抽出しました。
(1)A社
A社は電気メッキ加工を行う製造業者です。ローカルパートナーやローカル社員の活用により、工業団地近隣の日系企業に対して、高品質な電気メッキ加工を提供しています。今後は、新たな製品・分野への進出をしていきたいと考えています。
図表3:A社の特徴
出所:筆者作成
(2)B社
B社は精密板金加工を行う製造業者です。日本人の経営者が、ローカル社員への教育を徹底することで、工業団地近隣の日系企業に対して、高品質な板金加工を提供しています。
図表4:B社の特徴
出所:筆者作成
(3)C社
C社は電気機械器具の製造業者です。有力なローカルパートナーとの連携により、日系企業に対して、高品質で価格競争力のある電気機械器具を提供しています。日系の親会社グループにとっても、「金のなる木」として大きく貢献しています。
図表5:C社の特徴
出所:筆者作成
(4)D社
D社は特殊設備の製造を行う製造業者です。日本で学んだ技能実習生を活用し、大手日系企業に対して、日本と同等レベルの高品質な製品を提供しています。
図表6:D社の特徴
出所:筆者作成
2.訪問先4社の成功の秘訣と課題
(1)成功の秘訣
訪問先4社は、業績も好調です。成功の秘訣は、以下の通りと考えられます(図表7)。
図表7:ジャカルタ進出日系企業の成功の秘訣
出所:筆者作成
(2)課題
一方で、一層の飛躍のための課題としては、以下の通りと考えます。
図表8:一層の飛躍のための課題
出所:筆者作成
3.飛躍に向けた取り組みを行っている企業
今回、訪問はかなわなかったものの、インドネシアで日系企業がさらなる飛躍を遂げるために参考となる企業(E社)を紹介します。
E社は、Bekasi(西ジャワ)に所在する、射出成型品の製造を行う製造業者です。さらなる飛躍に向けて、加工領域の拡大や三方よし経営などに取り組み、成長機会の獲得につなげています。また、国際協力銀行の協力を得て、現地での資金調達も実現しています。
図表9:E社の特徴
出所:筆者作成
4.日系企業がインドネシアで成功をするためには
日系企業がインドネシアで成功する秘訣は、現地パートナーとの連携や高品質製品の提供などにあると考えます。その上で、さらなる飛躍のためには、経営の現地化や非日系企業との取引拡大が必要になるでしょう。
図表10:日系企業がインドネシアで成功するためのポイント
出所:筆者作成
本コラムが、インドネシアでさらなる飛躍を遂げたいと考えている企業や、これからインドネシアに進出を計画している企業の皆さまにとって少しでもお役に立てば幸いです。
【筆者紹介】
金子 啓達(かねこ ひろみち)
都市銀行で海外融資業務、証券業務に22年間従事。 その後、GSユアサ他製造業で英国、インドネシア現法社長等海外勤務。財務、経営管理に従事。2021年 中小企業診断士として独立。海外進出支援、金融機関取引支援を主軸に活動している。
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