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診断士の1番の業務は日々の勉強である―荒木会員が語る中小企業診断士像―

 中小企業診断士は様々なバックグラウンドをお持ちの方が目指す資格ですが、中でも多いのが金融機関出身者です。今回インタビューさせていただいた荒木俊輔さんも、銀行出身の中小企業診断士です。「金融の知識を持っていると診断士の業務にも有利なのでは?」とお思いの方も多いと思いますが、金融業界出身だからこそ苦労する点もあると荒木さんは話します。そんな荒木さんの人となりを探っていきたいと思います。

■銀行員時代
 大学卒業後、荒木さんは都市銀行に新卒で入行されました。入行店は名古屋支店でしたが、海外志向の強かった荒木さんは次店でニューヨーク支店へ赴任しました。その後30年のキャリアのうち、11年半を海外で過ごすことになります。「海外は1回いくと抜け出せなくなりましたね。」海外赴任期間以外の国内勤務地は主に東京で、サービス企画等を担当していたそうです。
銀行員として輝かしいキャリアを歩んでこられた荒木さんですが、苦労したこともたくさんあったと言います。「オーストリアの銀行に出向していた時は、行員が1000人以上いる中で日本人は自分1人だけでした。いい経験にはなりましたけどね。あとはサービス企画部署にいた時です。当時、システム開発に強く関与するサービス周りを担当したのですが、苦労しました。」

■中小企業診断士を目指したきっかけ
 そんな荒木さんが中小企業診断士を目指すきっかけは2017年、役職定年を迎える前のことでした。「定年になる前に何かスキルを身に付けようと、この頃から様々な資格の取得を考え始めました。その中で、先駆けて取得していた公認不正検査士の登録ポイントが足りず、何の資格でポイントを取得しようかと考えた時、中小企業診断士なら手が届くのではないかと思ったんです。」このような経緯から、50歳の時独学で勉強を始めた荒木さん。しかし実際は考えが甘かったそうで、合格には3年の期間を要したそうです。このように苦労して診断士資格を取得された後も精力的に資格学習を続け、昨年はITストラテジストに合格されています。

■資格取得後
 苦労の末に取得した中小企業診断士の資格を活かすべく、2022年2月の診断士登録後、荒木さんは城南コンサル塾を受講されました。「城南コンサル塾では、診断士として知っておくべき補助金の話や経営革新計画の話、経産省が実施している施策、独立するために必要な営業スキルなど、様々な知見を会得することができました。城南コンサル塾は幅広い業界出身の受講生がおり、模擬講演や企画書の作成に対して受講生同士で相互評価を行います。他者の意見が聴ける貴重な機会でした。あとは期日管理ですね。提出物の期日が厳しく、働きながらだったためきつかったですが、非常に勉強になりました。」
城南コンサル塾で診断士に必要な幅広い知見を習得された荒木さん。今年は補助金・経営革新計画エキスパートコースを受講されているそうです。「エキスパートコースでは、補助金と経営革新計画の申請書作成支援業務について学んでいます。補助金は実際に求められるスピード感に合わせて7000字程度の宿題が出ます。いかにエッセンスだけで分かるようにするかが大変です。また、経営革新計画は1カ月半の間に20ページほど自分で書いてみて、受講生同士で相互評価する流れです。申請書を作るためのスキルをスピード感を持って習得できる点に加えて、相互評価を通じて他の人の良いところを知ることができる点がいいですね。」城南コンサル塾、エキスパートコースを受講している荒木さんですが、「両方とも費用は掛かりますが、得られるものを考えるととてもお買い得だと思います。」と話しておりました。

■現在の生活
 診断士活動に精力的に取り組まれている荒木さん。現在は都市銀行からノンバンク(投資関連部署)に出向されておりますが、企業内診断士として会社業務とどのように両立されているのかお聞きしました。「今の職場では主に投資案件の収益性評価を行っています。子会社を出資設立する際などに、投資目的はちゃんとしているか、収益性はあるかなどチェックする仕事です。診断士の知見を活用する機会もあります。SWOT分析は勿論、5フォースモデル、PEST分析なども抜け漏れを無くすのに役立っています。勉強については、診断士受験生時代に朝5時頃からやっていたこともあり、現在も朝やっています。場合によっては電車の中でもやっていますね。夜家に帰ると飲んじゃうので。診断士活動に充てる時間としては、毎月50-100時間程度です。これまでは知識・スキルの習得が中心で、どうしてもインプットが多くなってしまうので、アウトプットの機会をどのように獲得していくかが課題ですね。」
一方で、金融機関出身ということが診断士業務においてデメリットになることもあるようで、「金融機関の立場と診断士の立場は似て非なるものなんです。金融機関はあくまでも債権者です。私も診断士活動中に時折考え方が債権者の立場になることがあり、診断士として支援する際には苦労します。」とおっしゃっていました。

■診断士として大切にしていること
 診断士の資格取得後も毎朝勉強しているという荒木さん。診断士となった今、大切にされていることを聞きました。「やっぱり経験を積むことじゃないでしょうか。皆さん勉強とアウトプットを繰り返しているので、それを見習いたいです。また皆さん支部の活動や研究会活動などボランティアの活動も積極的に参加されていますよね。私自身も去年チューター制度に新入会員側で参加した際、チューターの方は診断士になりたての私にご自分の知見を懇切丁寧に教えてくださいました。こうして受けた恩を私も返したいと思いました。今年度のチューターに応募したのもその一環です。」

■診断士のやりがい
 会社員としてご多忙の中、月に50-100時間を診断士業務に充てている荒木さん。そんな荒木さんに、診断士の仕事の魅力を聞いてみました。「何度も考え直して、突き詰めて診断や報告書作成を行う点に面白みを感じます。パズルが完成した時や知恵の輪が解けた時の感覚に似ていますね。そうして突き詰めた診断が診断先に評価され、改善に取り組むと言っていただけた時が嬉しい瞬間です。あと、診断士の方はバラエティーに富んでいますよね。皆さん様々なバックグラウンドをお持ちなので、他の診断士の方のスキルと自分を比較してみると、職歴でこんなにも違うのかと実感して面白いです。」

■今後の展望
 資格取得後、精力的に診断士業務に力を注いできた荒木さん。今後どのように資格を活かしていきたいかについてお聞きしました、「最終目標は70歳まで働くことです(あと約15年)。62歳の定年から先のキャリア、できるだけ長く働いていきたいです。年長の先生もたくさん活躍されているので、自分も活躍できるよう努力していきたいです。並行してスキルも身に付けていきたいですね。」

■後輩診断士へのメッセージ
 最後に、これから中小企業診断士として活動する後輩診断士に向けたアドバイスをいただきました。「私は城南コンサル塾で手一杯でしたが、1つくらいは研究会に入っておけば良かったです。私も研究会を模索している最中です。ただ、やりすぎてお腹いっぱいになる人も多いと聞くので、腹八分を意識すべきですね。時間を上手く活用して、少し余裕を持てるようにすることが大切です。それと、私はコンサル塾とエキスパートコースを受講したのですが、そこで相互評価されたことは他者から観た自分を知る貴重な機会になりました。このような機会を大切にすべきです。あとは、経歴書などに活用できる診断士活動用の写真を撮影しておくとよいですね。」

診断士はその業務の特性上、常に最新の知見が求められます。診断士資格を取得し、なお日々勉強に精力的に取り組んでおられる荒木さん。「診断士は一生勉強」。VUCAの時代において、中小企業診断士としてあるべき姿、目標とする像を見たような気がしました。

【インタビュー風景】
都内貸会議室にてインタビューさせていただきました!
  

【紹介】

〇荒木 俊輔(あらき しゅんすけ)プロフィール
 企業内診断士として活動。2022年診断士登録。銀行勤務を経て、現在はノンバンクの投資関連部署勤務。財務分析や資金調達に係る支援を得意とする。昨年城南コンサル塾(18期)を卒塾。今年度は城南支部のチューター制度にチューターとして参加。

〇筆者:岡谷 侑晟(おかや ゆうせい)プロフィール
 企業内診断士。2023年診断士登録。青年部サポーター。城南プログラムとチューター制度に興味を持ち城南支部に所属。

23/09/29 15:22 | 投稿者:羽田巧

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