各種報告
事業承継実務研究会_2024年1月例会報告

日時:2024年1月5日(金)18時30分~20時00分
場所:品川区大崎1-11-1 南部労政会館 第3講義室
出席:合計13名
演題:事業会社のPMIの実践(私なりのPMI)
講師:菱田 州男(ひしだ くにお)講師
ダイヤ経営コンサルティング代表。中小企業診断士、事業承継士

内容:
1. 講師の経歴
1979年に大手商社入社。食品流通に従事し、4件のPMIを担当する。退職後は上場企業の常勤監査役を務め、内部統制の知見を深めた。
2. PMIの重要性と課題
PMIは限られた経営資源を使って企業の成長を考えることであり、経営そのもの。PMIのないM&Aは失敗する可能性が高いため一体として考える。M&Aは企業文化の融合が必要である。買収した側の文化が正しいと決めつけ、取り組みをないがしろにすると、従業員のモチベーション低下や離職を招いてしまうことがある。関係者と信頼関係を築くことが重要である。
3. 現場経験を通して学んだPMIのスキル
取締役として赴任したスーパーマーケットでの経験を通して、会社によって企業文化が大きく異なることや、その中でも社員と協力関係を築いていく方法を学んだ。
4. PMIを進めるうえでのポイント
伝わらないのは難しいからであり社員が分かるように話すこと、43か所の拠点に出向き対面して説明し社員を「さん」付けで呼ぶなどして社員に寄り添うこと、何をすれば褒められるかを伝え価値観を共有すること、情報操作を許さず情報ソースを幅広く持つことなどがポイントとなる。
5. PMIの人材育成の方法
あるべきルールをみんなで決め、標準化を推進することで、社員の能力を一定レベルまで引き上げることができる。この方法で欠品率の大幅な改善を達成した。
6. 質疑応答

所感:豊富な経歴と実務経験を持つ講師のお話から、改めてM&AとPMIが不可分な関係であることが分かった。PMIは単なる後段の作業ではなく、経営そのものであるという視点は新鮮。また、PMIの重要性に焦点を当て、中小企業庁の指針や竹林信幸氏の著書「日本型PMIの方論」などを引用しながら、その具体的な手法やアプローチについても触れられていた。PMIの実行者がこれらの要素を理解していないと、PMIが成功する可能性は低くなると感じた。
特に興味深かったのは、組織文化の融合に関する話題だった。私自身、買収される側の社員としてM&Aを経験した。社員からすると文化が違うのは当たり前で1つになるはずがない。そんな状況を打破し、社員の態度変容を促す様々なノウハウをお聞きしたが、重要なのはPMIを推し進める人の、孤独に打ち勝つ覚悟と人間力であると理解した。
今回の講演を通じて、PMIの重要性や成功のポイント、中小企業診断士としての役割など、多岐にわたるテーマに触れることができた。

24/01/05 19:25 | 投稿者:牧田和泰

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