各種報告
徳田会員部長が目指す「三方よしのコンサルティング」とは?

 江戸から明治にかけて日本各地で活躍した近江商人。彼らが信用を得る上で特に大切にしていたのが、「三方よし」の精神でした。この志を胸に、100年後まで輝き続ける会社を増やすことを理念として活動している徳田部長。業績向上に貢献することで企業を元気にする【買い手よし】、それに見合う報酬を受け取る【売り手よし】、そしてそれが社会の為になっている【世間よし】。この【世間よし】が特に大切だと考えていらっしゃいます。そんな徳田部長の人となりを探っていきたいと思います。

■大手電機メーカーの技術系社員時代
 徳田部長は日本電気株式会社の研究開発部門に約30年在籍し、企画スタッフとして研究戦略の立案や、中期計画・年間予算の作成等に従事されました。中でも「ナショナルプロジェクト」と呼ばれる各省庁の研究助成金等の渉外業務では、数年に渡る実用化前のテーマの研究に必要な億単位の補助金を獲得するため、名だたる大手ライバルメーカーと鎬を削る毎日をおくられました。そうした業務を担当されたことが、経営コンサルタントとして事業計画を作成する上でとても役に立っているそうです。

■中小企業診断士を目指して、苦闘の日々
 そんな徳田部長が中小企業診断士を目指すきっかけは、会社の後輩が診断士資格の勉強をしていたことでした。会社に入って約10年、このまま大企業にいたのでは数部門しかわからないが、中小企業診断士の資格をとれば会社全体がわかるようになるのでは?と思ったそうです。
 最初は、後輩が合格できるなら自分にもできるはずという気持ちもあったそうですが、それは甘い考えだったことを後々思い知ることになりました。1次試験合格後2次を2回失敗するということを数回繰り返し、それでもあきらめずに勉強を続け、2次試験を受けること7回!しかも一度は合格まであと1点!!
 さすがに心が折れて、2年間試験から離れた時期がありました。そんな時、「このままでいいの?」という奥様からの励ましの言葉に奮起し、8回目で見事2次試験に合格されました。その後、診断士予備校より2次試験の講師としてお声がけを頂き、週末を中心に活動しておりました。今の診断士としての自分があるのは奥様のおかげということで、全く頭が上がらない!と笑顔でおっしゃっていました。

■城南支部会員部長として
 苦労の末に獲得した中小企業診断士の資格を活かすべく、実務補習の指導員の先生が城南支部の方だったことから、すぐに城南支部に入会しました。会員部に入り、協会への入会促進と組織の活性化を目指して、会員のモチベーションを高める様々な施策に取り組まれました。その後、城南支部会員部長として、オンライン対話型アート鑑賞等の見学型、オンライン手前味噌づくりや世田谷のブラ歩き等の体験型、オンライン酒造訪問等の交流型など様々なリクリエーションイベントを企画・実施してこられました。コロナ収束後のリアルイベントの再開が待たれるところです。
 会員部は、上記イベントだけなく、新緑フェスティバル、企業内診断士フォーラムやチューター制度、2~5年目の会を主催・共催するなど、入会歴が浅い会員からベテランの会員まで幅広い階層の方々の活動を積極的にフォローしており、それが会員数の増加と多士済々な層の厚さに繋がっています。会員部の「旗振り役」として、歴代部長が取り組んできたことを次に繋げていくことが自分の役割とのことです。多忙な中で会員部の活動を続けるモチベーションは城南支部会員のアンケートに見られるような満足度向上にあるといいます。会員部の様々な活動を通じて、これからも支部の活性化に寄与したいとのことでした。

■中小企業診断士の存在価値
 冒頭で「三方よし」について触れましたが、これは徳田部長が経営コンサルタントとして独立するに際して、自ら課した「戒め」のようなものだそうです。人と人あるいは組織が触れ合うことによって生まれる新たな価値、これを正しい方向に導き、大きく育てることをモットーとしています。そんな徳田部長が独立するきっかけはなんだったのでしょうか?
 多くの企業内診断士がそうであるように、資格取得後もすぐには独立せず、おそらく定年まで今の会社に勤務するだろうと思っていたそうです。ところが早期退職制度が導入されたことを機に、徳田部長はこれをチャンスと考えて独立を決断しました。働く期間をあと20年としたら、組織の歯車でいるよりも自分がやりたいことに挑戦したほうがいいと判断したのです。
 独立1年目は生活の基盤を確保するため、安定的な収入を得られる中小企業振興公社の嘱託社員として活動しました。しかしながら労働可能時間の6~7割が拘束され、サラリーマンに逆戻りしたような状態でした。この状況から抜け出すために力を注いだのが「人とのつながり」です。診断士として独立後、各種補助金の申請、経営相談員や審査員の仕事等を通じて得た人脈を大切にして、いろいろな案件を紹介してもらうことができました。そのひとつひとつに真摯に向き合い成果を出すことによって信頼を得て、それが次の案件に繋がっていきました。
 そういった活動を通じて感じたことは、各種士業の隙間を埋めるゼネラリストとしての中小企業診断士の存在価値です。弁護士や会計士、税理士、社会保険労務士等各種専門家を上手く結び付けることにより、課題の解決や新たな価値の創造を実現することができます。診断士はそれをコーディネートする役割として最適だということに気づきました。

■充実のプライベートライフ
 そんな超多忙を極める徳田部長の息抜きは何ですかと聞いたところ、「釣り」と即答が返ってきました。特に船でいく「沖釣り」が好きだそうで、狙った魚を釣り上げた時の爽快感はこの上ないとのこと。釣った魚を自分で捌くために男の料理教室にも通ったほどの熱の入れようです。今年の釣り初めでは体長53㎝、3.5㎏の飛び切り大型の鯛を釣り上げ、刺身やソテーにして心行くまで堪能しました。葉山から相模湾へ出ることが多いそうですが、密かな野望はマグロの一本釣り。梅宮辰夫や浜崎伝助も驚くほどの釣果を期待しています。初心者には、東京湾・相模湾から出ているアジ釣りがおすすめとのこと。会員部のイベントとしてもハゼ釣りを企画されていましたが、台風による天候悪化で中止となってしまったため、今後また企画されるのが楽しみです。
 次に熱中していることは、ソフトバレー。耳慣れない競技でしたが、4人制のバレーボールで、ボールが柔らかいので突き指等の心配もありません。ネットは低く設定され、初歩的なプレーから高度なゲームまで楽しみ方も多様。会社員・学生時代にバレーボール部に所属していた徳田部長は、シニア向けの生涯スポーツとしてその普及に努め、釣りに出られない休日は近所の小学校の体育館で汗を流しているそうです。


■後輩診断士へのメッセージ
 これから中小企業診断士として活動する後輩診断士へのアドバイスを聞いたところ、まずはいろいろな経験を積んでほしいとのことです。研究会やイベントに顔を出して自分のネットワークを広げ、人との出会いを連携にまで高める努力を怠らないことが肝要で、そのためには自分から動き積極的にコミュニケーションをとることが大切だといいます。
 また、支部の部活動にも積極的に入ってきてほしいとのこと。様々な年齢層の方々との出会いは新たな視点を提供してくれるし、さらにネットワークも広がります。城南支部各部の幹部と言われている人たちは近寄りがたいイメージを持っていましたが、意外にフレンドリーだそうです。怖くないですよと笑っていらっしゃいました。
 他の士業でもそうですが、「井の中の蛙」にならないように、自分の周りのいろいろな垣根を取り払って一歩前へ進む気概が大切だと力説されていました。専門家の診断を必要とする中小企業はたくさんあり、まだまだ診断士による支援は不足しています。その橋渡しをするのが協会の役割なので、どんどん活用してほしいそうです。「実践の城南」を掲げる城南支部は、そういった機会の提供が非常に多いとのことでした。
 加えて、独立を考えているなら早いほうがいいと助言いただきました。例えば、子供がいる人ならば、子供が大きくなるにつれてかかるお金はどんどん膨らんでいくので、まだ子供が小さく、本人が若いうちに独立したほうが経済的な負担が少なくていいという考え方もあると、ご自身の経験からおっしゃっていました。
 顧客企業と自分がWIN=WINの関係になり、生産性が向上して社会の役に立つという「三方よし」を実現すべく努めていきたいとの決意を語っていただきました。公私ともに充実した時間を過ごす徳田部長。中小企業診断士としてあるべき姿、目標とする像を見たような気がしました。

 
 
 

【筆者紹介】
菊池 正治(きくち まさはる)

22/10/20 10:51 | 投稿者:羽田巧

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