各種報告
会員の皆さんにより多くの実践の場を ~三瀬地域支援部長の思い~

「実践の城南」。それを支えるのが、様々な実践の機会を提供する地域支援部の三瀬隆部長だ。1977年にフジカラー販売株式会社に入社し、以後一貫して写真事業に携わった。2015年、定年を機に独立し、現在はイメージワーキングサービス株式会社の代表取締役社長として、中小企業の支援に奔走する。趣味は音楽で、最近では、大学時代の音楽サークルメンバーとライブを開き(コロナ禍以前)、CDまで制作した。今回は、そんな三瀬部長に、ご自身の経験や地域支援部の活動、今後の展望についてお伺いする。

経営診断から工場・店舗診断まで、多様な経験を積んだ会社員時代

-会社員時代に診断士資格を取得したそうですね。会社員時代のご経験を教えて頂けますか?

富士フィルムの販売会社に就職し、37年間勤務しました。会社から中小企業診断士の資格取得を勧められて、20代後半の時に取得し、以来城南支部に所属しています。

会社では、多数ある関連会社の経営診断、工場診断、店舗診断など、多様な業種を経験しました。東京や大阪などの営業所も担当し、色々な人と関係を築いていく経験を積みました。特に高松は楽しかったですね。ゴルフはできるし、温泉はすぐだし、みんなお酒をよく飲むし(笑)。

他にも、写真年賀状などのポストカードのシステム開発や、社員証に使われるICカードの仕組みづくり、デジタルサイネージ事業などにも携わりました。多様な経験ができて、とても良かったと思います。

独立後、お客様目線を大事にしてきた

-定年を機に独立されたということですが、独立直後はどのように活動しましたか?

最初は会社史のアルバム事業を手がけました。一部上場企業の55年史を受託しましたが、これは、本当に大変でした(笑)。やはり、資格を活かした方が得策だということで、先輩に色々と聞きながら、活かせる仕事を探しました。

採用されたのが、大田区の商いコーディネーターという、小売店を訪問して経営支援をする事業でした。面白かったですね。小売店の玄関をトントンと叩いて「何か御用はありませんか?」と。最初は分からないことも多いですが、色々と工夫しながら徐々に慣れていきました。どんなお客様でも、自分のお店をけなす人には信頼を置かないし、褒めてくれる人がいいですよね。それが分かっていたから、何とかできたのかもしれないです。

そこから、商店街支援や商店街顧問、企業の支援もするようになり、支援する業種も多様になってきました。また、認定支援機関や事業承継士の資格も取得して、役に立っています。

-得意分野などはありますか?

事業再構築です。市場が縮小する写真事業に携わる中で、常に新規事業を考えてきた経験が生きています。写真事業では、フィルムも、プリントも、カメラも売れなくなってきました。じゃあどこに行くのか。例えば、ICカードだとか、広告業に進出するだとか、自社の既存の強みを活かしながら、事業を再構築していくわけです。

中小企業も一緒です。今般の事業再構築制度は、新分野の市場で、新商品で、多角化経営を目指すものです。支援していると、お客様が素晴らしいアイデアを持っていらっしゃることも多く、あとは背中を押すだけです。アイデアをより具体的、実践的にしていくことが我々の仕事だと考えています。

-支援の際に気を付けていることはありますか?

お客様目線です。お客様の視点に立つと、アイデアが浮かんできますので、それを一緒にやっていくという姿勢は大事にしています。

支部会員に実践の場を提供する地域支援部

-ここからは地域支援部についてお伺いします。現在の取り組みについて教えてください。

地域支援部では、大きく分けて3つの事業に取り組んでいます。1つ目が、行政からの業務を受託する「受託事業」。もう1つが、社会に貢献するようなことを行う「貢献事業」。最後が、新たな業務の受託を目指す「開拓事業」です。

-「受託事業」には、具体的にどんな事業がありますか?

5つあります。1つ目が、大田区が用意する産業支援施設に企業が入居する際、審査の材料となる経営診断報告書を作成する「工場入居診断」。2つ目が、区が用意する融資制度を利用しようという中小企業について、経営診断を実施する「融資斡旋診断」。3つ目と4つ目が、創業したい人を支援する「目黒区創業塾」と「渋谷区創業セミナー」。5つ目が、商店街に診断士を派遣して経営改善のお手伝いをする「商店街派遣」です。

城南支部が責任を持って行政から受託し、専門家登録をした支部会員の皆さんに実際に経験して頂くということです。地域支援部では、必要な仕組みを整備し、事務局を設置して運営しています。

-「貢献事業」はいかがでしょうか?

一つは、「小規模事業者活性化事業」です。お金を出すのは難しい小規模事業者と、経験を積みたい新米診断士をマッチングし、実践の場を提供しています。もう一つが「東京協会支援事業」で、地域での実践事例やノウハウをまとめる事業の他、実務従事の支援や、気仙沼での支援などの社会貢献事業に取り組んでいます。

-「開拓事業」では、どのような分野で新規受託を目指しているのでしょうか?

3つの分野です。まずは、大田区の工業診断の開拓。工程診断や販路開拓、事業承継や事業再構築など、専門性の高い内容のものも受託できるように準備しています。2つ目は、商店街派遣事業です。目黒区や世田谷区にはすでに派遣の仕組みがありますが、それを品川区や大田区に水平展開することを考えています。最後は、民間企業からの業務受託です。

城南5区は、成長事業が多いですし、工業や商業、ITなど産業も多様です。こうした機会がある中で、経験を積みたいという会員の皆さんに対して、新たな案件や実践の場を提供していきたいと考えています。

-コロナ禍において、何か特別な取り組みはありましたか?

昨年は、新型コロナ対応として、セーフティネットや制度融資など行政から様々な依頼がありました。それに対して、緊急で会員の皆さんの応援を募集し、仕組みも整えて受託したということがあります。行政のニーズに応えるということで貢献にもなりましたし、行政とのコミュニケーションや信頼関係も深められました。これは、ひとえに会員の皆さんのおかげであり、感謝しています。先日の新緑フェスティバルでも、数多く表彰させて頂きました。

診断士の良い点を照らし、輝かせたい

-課題などはありますか?また、今後の展望も教えてください。

行政からの受託を広げていくためには、さらに信頼を得ていく必要があります。そのためのコミュニケーション強化は大きな課題です。

お客様のニーズも二極化してきているように感じます。専門的な要望を持つお客様と、何から聞いたらいいか分からないというような全般対応が必要なお客様です。専門的なニーズには、販路開拓に得意な人やコストダウン工程改善に優れた人など、適材適所で専門家を派遣する必要があり、チーム化して要望に応えていきたいと考えています。一方、全般的なニーズには、何でも応えていくためのコミュニケーション能力が必須です。

こうした診断士派遣事業を維持・拡大していくには、運営管理の仕組みが必要で、改善に取り組んでいます。多種多様な経験を持つ診断士の皆さんの能力を活かせる仕組みを整え、診断士の良い点を照らして輝かせられるように努力していきたいと思います。

-最後になりますが、城南支部に入会した若手診断士にメッセージをお願いします。

とにかくチャレンジしてみてほしいです。何か機会があって、「やってみたい」と思ったら手を挙げて挑戦してみる。自分の中の興味やパワーを活かして、頑張ってほしいと思います。

-本日は、お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

【筆者紹介】
寺本 祐太郎
寺本 祐太郎(てらもと ゆうたろう)
2011年に大学卒業後、海運会社勤務(現職)。
2021年中小企業診断士登録。企業内診断士として活動中。

21/07/19 16:28 | 投稿者:羽田巧

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