各種報告
「財務診断エキスパート養成コース」で実践的な診断スキルを身に付ける

令和4年度に開始した「城南プログラム」では、「専門分野エキスパート育成コース」として専門分野に特化した講座が開講されています。今回のコラムでは、財務分析や診断、助言スキルの向上を目的とした「財務診断エキスパート養成コース」について、受け持たれている城南支部の大西先生からコースの内容や開講への思いなどについてお話を伺いました。大西先生がこのセミナーで大切にされていることは、城南支部のいつもの合言葉でした。

城南コンサル塾でのご縁でセミナー開講へ

■大西先生は、税理士や事業承継士、行政書士の資格も持たれながら、現在は会計事務所の代表をされているのですね。
30歳で勤めていた会社を退職して会計事務所に入り、働きながら税理士の資格を取りました。いまの会計事務所を設立して独立したのは36歳の時。中小企業診断士の資格は、その翌年の2013年に取得して登録しました。現在は税務会計の業務が中心ですが、事業承継士の資格も活かしながら事業承継センターの後継者塾の講師をしたりして、特に事業承継については力を入れて取り組んでいます。

■中小企業診断士としては、どのような活動をされていますか。
資格登録後に、城南コンサル塾に入りました。9期卒業です。きっかけは、試験合格後の実務補修の先生が、城南コンサル塾の当時の塾長の松井先生でして、実務補修参加者はみんな誘われていましたね。その時は、私も含めて3名が入塾しました。卒塾後は、本業が会計事務所での税務会計ということもあって、他の仲間と比べると中小企業診断士としての活動は少ないかもしれません。たとえば、補助金申請業務などで活躍の場が最近は増えているようですが、私にはそれほど得意ではない領域でして。それでも、城南コンサル塾でのネットワークから、創業セミナーの講師依頼があったりして、得意なことでお役に立てる機会はいろいろとありました。そのようなネットワークができるのも、城南コンサル塾の良いところでしたね。

■そのようなセミナー講師のご経験が、「財務診断エキスパート養成コース」の開講に関係していますか。
「財務診断エキスパート養成コース」の開講のきっかけは、これもまた城南コンサル塾なのですが、現塾長の星野先生からなんです。星野先生が主催されている事業承継実務研究会に参加していて、そこでお声掛けいただきました。中小企業診断士の資格を持たれていても、決算書類の読み取りなどに苦労されている方々がそれなりにいらっしゃることは感じていました。でも、中小企業の診断において、決算書類を正しく読み取ることは避けて通れません。この領域をテーマにしたコースであれば、私でも役に立てるかなと思うところはあり、城南支部の阿部正暢先生と共同で全6回のコースを2021年に開講しました。今年は、全7回のコースで継続しています。

実践的なスキルを身に付けるためのカリキュラム

(参考)「令和4年度 財務診断エキスパート養成コース カリキュラム」より抜粋

■「財務診断エキスパート養成コース」の内容を教えてください。
中小企業の財務分析と診断、助言スキルを向上させることが、このコースの目的です。例えば、全7回の最初の2回の講義では、中小企業の税務申告書と決算書の読み取り方を学びます。中小企業診断士の資格取得時の勉強だけでは、税務申告書や決算書を読み取れるまでには不十分かと思います。また、特に企業内診断士の方などは、普段の業務で触れる機会は少ないのではないでしょうか。でも、実際の中小企業の財務分析や診断、助言では、税務申告書や決算書を読み取れることはとても重要です。それは、税法や税金の計算について学ぶということではありません。これらの資料から会社の状況を知るスキルを身に付けて、経営者へ助言できることを目指しています。「実践の城南」のエキスパート養成コースですので、実践的な内容であることを重要視しています。

■経営者への助言となると、実践的なスキルは重要ですよね。
そうですね。中小企業診断士として実際の診断業務に関わり始めるときは、売上高が1億円や2億円くらい、従業員数は10名以下といった中小企業が多いかなと思います。そのような企業の財務分析をする際に、流動比率とか営業利益などの数字ではその会社の実態を正しく理解できないことがあります。その場合は、総勘定元帳をしっかり読み取れることが重要だったりします。売上や従業員数の少ない中小企業でしたら、総勘定元帳の情報量は限られるので、詳細に読み取ることは可能です。総勘定元帳の内容から、社長がどんな性格なのかも想像できたりするんですよね。そのようなことも講義で取り上げています。

忙しい受講者のために工夫されたリモート講義

■講義はどのように進行しますか
月に1回、週末に2時間ほどの講義をリアルタイムで開催します。今年は、6月から12月まで計7回の開催です。各開催日の1週間程度前には、スライドを使いながら解説している2時間程の動画教材を配信し、事前に受講してもらいます。演習問題もついていて、決算書に設けた空欄に数字を埋めてもらうなど、実際に手を動かすような設問を心がけています。リアルタイムの講義では、演習問題の解説や質疑、グループディスカッションを通じて、事前の受講内容の理解を深めます。2時間で講義は終了しますが、居残り質問タイムを設けていまして、長い時は1時間くらい続くこともありますね。

■昨年も今年も、リアルでは集まらずにZoomのみで開催されているんですね。
はい。コロナの影響などで集まりにくいということもありましたが、いまではZoomのみでの開催が良いと思っています。Zoomでは、リアルタイムの講義を録画して、受講者が後日視聴できるようにしています。受講者は忙しい方が多く、どうしても参加できない日が発生するので、この録画視聴は好評でしたね。講師だけではなく、受講者の顔と発言も収録されていますから、当日参加できなくてもキャッチアップはしやすかったようです。また、復習用として繰り返し視聴するという使い方もメリットとしてありました。来年以降もこのセミナーを開催する場合はZoomがいいかなと思います。懇親会はさすがに実際に集まりたいですけどね。

■受講者はどのような方が多いですか。
受講者は、2021年は9名ほど、今年は18名でした。2年連続でリピート受講された方が2名いらっしゃいました。全体の半分以上は企業内の診断士の方々です。財務に苦手意識をもたれていることが受講された主なきっかけのようですね。でも、勉強熱心で優秀な方が多いので、理解されるのがとても早いです。

「実践の城南」としてのエキスパートコース

■最後に、受講者や受講を検討されている方々へ、大西先生がこのセミナーで特に大切にされていることを教えてください。
繰り返しになりますが、「実践の城南」という点です。理屈ではなくて、実践的に、手を動かして理解することが重要だと思っています。また、中小企業の実態を包み隠さず解説することも、かなり意識しています。今後、受講者のみなさんが実際の診断業務の機会を広げていく際に、そこで出会う中小企業の経営者に対して、「財務診断エキスパート養成コース」で身に付けたスキルを活かせていただけたら嬉しいですね。

 

【筆者紹介】
野津 仁(のづ ひとし)
鎌倉R不動産株式会社 代表取締役。2012年に中小企業診断士登録。映像関連の会社で経営企画や新規事業推進、海外M&Aなどの業務に従事。現在は、鎌倉・湘南エリアを中心に、地域に根差したスモールビジネスの支援に取り組む。

22/12/22 11:45 | 投稿者:羽田巧

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