経営お役立ちコラム
越境ECを活用した海外B2C市場開拓のポイント

2016年の中国の日本からの購入額(越境EC:国境を越えたオンライン上での商取引)は1兆366億円となり、中国から日本への旅行者の買い物総額(インバウンド購買)の7,832億円を超えました。
(データ引用:観光庁「訪日外国人消費動向調査」・経済産業省「平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」)
今回重要度が増してきている越境ECを活用して、海外のB2C市場開拓を推進する上で押さえていただきたいポイントを、中国市場を例にして、マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)を踏まえて、ご紹介いたします。

(1)Product:ターゲット顧客と商品戦略
中国のホワイトカラーの平均賃金(月額)は年々上昇し、2017年12月時点で、北京や上海の大都市圏では約16万円、地方都市でも約12万円。共働き家庭も多いことから、世帯収入としては25~30万円となります。円換算で600円や800円の牛乳などが購入され、良質な商品が買い求めております。また中国のネット通販の環境も整い、商品に関する多数の情報が容易に手に入り、商品の価値を吟味して購入する傾向が高まっております。商品を提供する側は、現地の方であれば「どのように価値を感じてもらえるか」という視点で商品のコンセプト作りや商品設計が重要となります。
自社の商品の位置づけやマーケットニーズを確認するために、中国圏であればBaidu(検索エンジン)やWeibo(ミニブログ)での話題や商品検索を活用したり、英語圏であればGoogle Trend(https://trends.google.com/trends/)から「いつ、どの地域の人が、どの期間、そのキーワードに対して興味を持っていたか」を調べることで、市場の特徴やニーズをご確認いただけます。
また、中国市場では商標に問題があると中国での販売は大変難しくなります。越境ECでは、販売対象地域での商標登録にご留意ください。

(2) Price:価格設定
まず、越境EC販売の標準価格は、中間マージンが省略される分、従来型の小売販売の価格よりも安価な設定が基本となります。従来型の小売販売では、海外からの商品供給者→輸入通関→代理店→小売店→消費者と多段階にプレイヤーがおり、マージンや手数料が加算される一方で、越境EC型の販売では、海外からの商品供給者→EC業者→輸入通関→消費者と複数段階が省略され、中間マージンが減算された分、消費者購入価格は低くなるためです。
次に、特価については、「ネット通販の日」という1大イベントとなっている11月11日の“独身の日”や、ブラックフライデーなど中国市場特有のセールイベントにあわせた価格設定をすることが顧客関心を引き付ける手となります。
2017年11月11日のAlibaba系列T-mallでの売上は約2兆8千億円(販売におけるモバイル比率は9割)となりました。こうした大規模セールイベントに合わせた大胆な価格設定しつつ、セールで提示した価格が極端な安売り事例として残らないように、価格履歴をコントロールすることも大事なポイントです。
そして、価格を左右する越境ECに掛かる税率や規制の情報収集が大切となります。
化粧品を例に挙げますと、2016年4月7日までは行郵税(旧)は50%に対して、同年4月8日以降の業者による統一的通関処理がされるものについては、増値税・消費税のそれぞれ7割が課税となり、化粧品の税負担率は26.4%になりました。他方、統一的通関処理がされない個人輸入では税率は60%となります。このように、販売経路・消費者への販売価格を設定する上で、税率動向の把握は大事な要素となります。

(3) Place:流通経路の設定
流通経路・物流の体制の組み合わせとして、自社のECサイトからの販売、国内のECモールを利用しての海外販売、海外ECモールへの出店、海外の事業者による商品の買い上げなど様々ありますが、中小企業様が越境ECを開始する際には、中国現地会社のECモールを活用するのが方策のひとつです。契約により、ECモールサイドが販売ページの作成を含む商品掲載、配送、顧客対応や課税処理などを委託先に対応いただくことも可能となります。ECモールの選定には、商品分野ごとの集客力、初期導入・運営コスト、日本語対応の有無、支払条件など確認をお願いします。

(4) Promotion:販促活動
ECサイトにて商品を詳しく、的確に消費者に伝えるコンテンツやページ作りや、SNSを活用して商品やブランドの知名度を高めることも大変有効です。そのほか、日本貿易振興機構(JETRO)の「中国消費者の日本製品等意識調査(2017年12月)」によると越境ECで商品を購入する理由として、「日本に旅行したときに購入して気に入った製品だから」という回答が目立つことから、インバウンドでのプロモーションとの組み合わせが販促の効果を高めることになります。
(出所:「中国消費者の日本製品等意識調査(2017年12月、日本貿易振興機構(JETRO))」
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/01/871ade1910450456.html

以上のポイントが、越境ECが皆様の新たな経営の柱となるためのご参考になればと願っております。
商品をお届けするまでのサプライチェーン全体を設計して販売の仮説を立て、ECモールから上がってくるデータと仮説を検証して軌道修正することで、越境ECの効果はさらに高まります。
ご相談事項などありましたら、東京都中小企業診断士協会 城南支部へお気軽にお問い合わせください。

小島洋介

18/03/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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