経営お役立ちコラム
小売業における収益改善策

「商品は売れないのが当たり前、お客様は来て下さらないのが
当たり前、問屋さんは商品を卸していただけないもの、銀行はお金
を貸していただけないもの」

以上の言葉は、今では日本を代表する小売業となった企業の
創業時、ある家の軒先を借りて商売をスタートした母親の言葉です。
私はこの言葉がとても好きです。商売は常にこの気持ちを長く持ち
続けることが大切であると思っています。どんなに繁盛店になろう
とも、この気持ちが従業員全体に浸透していれば、自然と来店された
お客様を大切にすることでしょうし、取引先からやっと仕入れる
ことができた商品と思えば大切に扱い、安易に値下げしたり、
返品できるか等考えることはなくなるでしょう。また、銀行はお金
を貸していただけないのが当たり前と思えば、資金繰りをどうするか
真剣に考えることになるでしょう。常に原点に立ち返り真摯に
どうすれば良いか考えることが、現状を打破する原動力になると
思っています。
さて、前置きが長くなりましたが、小売業の収益を改善するため
には3つの方法があります。

(1)売上を上げる

どこの企業も血眼になって考えていることと思います。ですが、
ものが充足した成熟社会では売り上げを上げることが一番難しいと
思います。特に安易に売り上げを上げる方法など極端なセールでも
しない限り困難であると思った方がよいでしょう。売り上げは結果
であり、あとから付いてくるものであると認識された方が良いと
思います。コツコツとじっくり、お客様の立場に立ちどのような
商品・サービスが必要か、仮説を立て実行し、結果を検証し、
また仮説を立てて検証することの繰り返しが大切です。
では具体的にどういう方法があるのでしょうか? 売上とは
客数×客単価です。

●関連販売で一お客様当たりの購入単価を上げる

例えばアパレルを販売している場合は、スカートを購入された
お客様にはそれに合わせたブラウス、アクセサリーなどを一緒に
販売員がお客様に提案すること。お客様に連想していただいて
お客様の潜在意識に働きかけ一緒に買っていただくことです。

●常に新鮮な商品が売場に並んでいるようにする

新しい商品か古い商品か、お客様は知っています。アパレルでも
雑貨でも鮮度が大事なのは生鮮食料品だけではないのです。
すべての商品は時間がたつと鮮度が落ちていきます。

●地域に密着したイベントやモチベーション需要に応じた商品展開
をする

地域にはそれぞれ運動会や文化祭、祭り、新入学、卒業、環境や
防災関連など様々なイベントがあります、それらを知り必要な
商品をこちらから仕掛けていくのです。お店で働いているパート
さん達から、地域の情報を聞くことはとても有効であると思います。

●リピート顧客を増やす

お客様との会話を増やしお客様のニーズを読み取り、品揃えに
活かすことです。お客様も常に変化しています。人間ですから
飽きも来ます。飽きることが新たなニーズを生んでいるのです。
それを把握するにはお客様との会話からくみ取っていくしか
ありません。

●セールで売り上げを増やす

やり方を間違えるとかえってお客様を減らすことになります。
理由が明確でお客様が納得するものでなければいけません。
ただ売り上げを取る為だけのセールはお客様からすぐに見破られ、
顧客離れにつながってしまうこともありますので一番注意が必要
です。

どれを取りましても、最初に述べましたように簡単に売り上げを
上げる方法は無いと思ってください、じっくりとコツコツ飽きない
で続ける覚悟と勇気、信念が必要です。

(2)限界利益率を上げる(変動費を下げる)

小売業の場合は変動費として一番大きいのは商品原価でしょうか、
その他にクレジット手数料、アルバイトなどの雑給、折り込み
チラシ代、残業代、包装代、等、売上の伸びに応じて増えたり
減ったりする経費を変動費といいますが、これを細かく分析して
少しでも下げられるものは下げていくのです。その際、一番注意
すべきことは、お客様のサービスレベルを落とさないことです。

●仕入原価を下げる

代替取引先を探して少しでも原価の低い取引先から仕入れる努力
も必要です。ただし価格だけでなく品質や納期、手配数量を
安定的に供給できる力を見ることは忘れてなりません。

●折り込みチラシの量と回数を見直す

本当に効果があるのか、お客様にとって価値のあるものなのかを
今一度考えてみたらいかがでしょうか。

(3)固定費を下げる

固定費とは売り上げに関係なく、営業を行っていく中で固定的に
経費が発生することを言います。大きいものとして基準内人件費や、
家賃地代などがあります。

●業務の外部委託を見直す

少し努力すれば自分たちでできるものを(例えば清掃作業など)
外部業者に頼んでいませんか?自分たちでできるところは自分
たちで行いましょう。

●賃借スペースを見直す

倉庫の賃借料も結構大きいものです。商品をストックするために
倉庫を借りていませんか。商売は商品の回転率を上げることが
基本です。商品回転率が高まれば陳列している商品の鮮度も自然
と高まり、お客様から信頼が高まりお店のファンの増加となり、
好循環ができます。デッドストック、長期在庫と化したものは
早期に処分し無駄な倉庫をなくしましょう。

●人件費を有効に使っていますか?

人員の削減や給与のカットは最後の手段ですが、本当に無駄は
無いか確認しましょう。パートタイマーの方の配置や勤務時間帯
など、必要とする時に必要とする人員が確保できているか、
時間外勤務手当が固定化していないか、等もう一度見直しましょう。

以上、売り上げを増やすことは、長期的覚悟でコツコツと
「継続は力なり」のつもりで行っていく気持ちが大切でしょう。
そして、小売業の利益向上策は(2)の限界利益率を高めること、
(3)の固定費の削減を、同時に行っていくことが一番効果がある
と思われます。

藤田潔

11/08/15 09:20 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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