経営お役立ちコラム
中小企業における高年齢者雇用(3)

【助成措置に寄せる期待】

前2回で高年齢者の雇用確保措置の導入について説明しました。
それでは中小企業の経営者は、この問題を推進するに際してどのよ
うな公的サポートを希望しているのでしょうか。東京のある事業主
団体が平成19年に行った調査によると、「雇用継続給付金への助成」
(67.9%)、「高齢者雇用に対する中小企業への助成」(61.4%)、
「健康管理への助成」(37.4%)などが上位に挙げられます。
このうち「雇用継続給付」については前回説明しましたので、
今回はそれ以外の代表的な助成制度についてご紹介します。

【中小企業定年引上げ等奨励金】

高年齢者雇用確保措置導入企業に対する目玉の助成措置です。
「65歳以上への定年引上げ」、「定年の定めの廃止」、「希望者
全員を対象とする継続雇用制度の導入」のいずれかを実施し、
6か月以上経過した中小企業主に対して、奨励金が支給されます。
この場合の中小企業主とは常用する雇用保険の被保険者が300人以下
の事業主ですので、裾野が広くほとんどの中小企業が対象となります。
支給金額は、企業の規模(3段階)と導入した制度の内容により
きめ細かく定められており、「従業員数9人以下の企業が65歳まで
の安定継続雇用制度を導入した」場合の10万円から、「従業員数が
100人以上の企業が定年を70歳以上に引上げ、または定年の定めの
廃止をした」場合の160万円まで、22の段階に及んでおります。詳
細は高年齢者雇用問題の普及・啓発を行っている都道府県受託法人
(東京の場合は(社)東京都雇用開発協会)、またはハローワークに照
会してください。
この奨励金の申請期限は、制度導入後6か月を経過した日から1
年以内となっており、支給申請書に制度導入を確認できる就業規則
やその他の添付書類を添えて先ほどの都道府県受託法人に提出する
ことが必要です。その後独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に
よる審査を経て支給されますので、送金まで数ヶ月の時間を要しま
す。

【高齢短時間制度の導入】

高年齢者雇用確保措置を導入する際に、併せて「勤務時間の多様
化の措置(高齢短時間制度)」を講じた場合には、20万円の加算金
が支給されます。
「高齢短時間制度」とは、雇用形態を多様化することにより高年
齢者雇用の促進をバックアップする助成措置で、60歳以降の希望す
る日以後において、1週間の労働時間を一般労働者の所定労働時間
の4分の3未満かつ20時間以上とし、従業員自身が選択すること
ができる制度で、就業規則等にその旨を明記しなければなりません。
加算金の支給は前記の「中小企業定年引上げ等の措置」と同時に
導入することが要件となっており、「高齢短時間制度」のみを単独で
導入した場合には対象となりません。

【その他の助成金】

高年齢者雇用には、別に次のような助成制度があります。企業や
事業団体の実情に適合した制度を活用し、高齢者問題に積極的に
取り組むことを期待します。

○高年齢者雇用モデル企業助成金
高年齢者を対象として、「職域の拡大」、「人事処遇制度の改善」
等を積極的に活用する事業主が、モデル性や地域における波及効果
のある取組みを実施した場合、一定範囲の費用(最大500万円)が
支給されます。(事前に計画の認定を受ける必要があります。)

○高年齢者雇用確保充実奨励金
傘下の企業における高年齢者の雇用確保措置の導入や高年齢者
の雇用確保に必要な環境の整備に係る相談・助言・援助等の事業を
実施した事業主団体に対する奨励金で、事業の対象となった企業の
数に応じて100万円~300万円が、さらに事業の成果により、上限
200万円までの上乗せ支給が行われます。

新井正彦

10/10/25 05:30 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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