経営お役立ちコラム
中小企業における高年齢者雇用(2)

【継続雇用者の賃金の決定】

高年齢者の雇用確保措置を講じる経営者から多く受ける質問が、
「賃金をどう決定するのか」でした。中小企業の多くが賃金を仕事
給(成果給)ではなく、年功序列体系に依っているので、未だ経験
していない高年齢者を雇用するに際して、戸惑っていることが窺え
ます。
しかし、前回も述べたように高年齢者の雇用はそれまでとは異な
った雇用であるという認識が必要なのです。多くの識者が提案して
いるのが、仕事の内容や勤務時間、責任の度合いに応じて新しい観
点から賃金を定めるということです。高年齢者の雇用確保措置の導
入に際して厚生労働省が示したQ&Aにおいても、次のように説明
されています。
「継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を
確保するという改正高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであ
れば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、
パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して事業主と労
働者の間で決めることができます。」
つまり、事業主と労働者の合意が成立すれば労働条件を自由に決
めることができるのです。このことを活用して新しい仕事に応じた
賃金を定めることも可能です。

【高年齢者雇用継続給付の活用】

60歳~65歳の高年齢者が勤務する場合、賃金月額が60歳到達時
点に比べて75%未満となった場合には、国の雇用保険から一定額が
支給されるという制度があります。受給額は賃金月額が61%未満の
場合には60歳到達時点の賃金月額の15%、61%~75%未満の場合
60歳到達時点の賃金月額の0%~15%未満となっており、支給期間
は60歳に達した月から65歳に達する月までです。受給資格として
は、「60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者で、かつ被保険者期間
が通算して5年以上あった人」です。
受給手続きは勤務先事業所が申請書に「60歳到達時賃金月額証明
書」を添付してハローワークに提出します。次に述べる在職老齢年
金と併せて受給することも可能ですが、併給調整しますので、最寄
りの年金事務所で確認する必要があります。

【在職老齢年金の受給】

厚生年金保険に加入している者に対して支給されるものとして、
在職老齢年金があります。厚生年金の支給開始年齢の引上げに伴い、
定額部分の支給は、昭和24年4月1日生まれの人(女性は昭和29
年)が65歳になるまでですが、報酬比例部分は昭和36年4月1日
生れの人(女性は昭和41年)が65歳になるまで支給されます。こ
の制度を活用して継続雇用者の賃金を定めることも可能です。しか
し、在職老齢年金の受給額は従業員個人ごとに異なりますので、年
金事務所に問い合わせることが必要です。

【時給制度の採用】

ある会社で定年年齢を65歳まで引上げて、それ以後も働くこと
を希望する従業員を対象として継続雇用しています。雇用契約の期
間を1年間として、身分は契約社員、賃金は定年到達時点の金額を
時給換算して決定していました。この結果、会社は社会保険の加入
義務を免れ、福利厚生費の節減が可能となり、従業員も実質賃金が
低下しないと喜んでいます。
この会社では、特徴として継続雇用を希望する従業員に対して、
経営者が個別に面接を行い、労働条件や健康状態についてお互いに
納得が行くまで話し合っていました。従業員の健康保持には特に強
い関心を持ち、産業医との連携を密にし、時には家族との連絡も取
り合っておりました。このような会社の姿勢に感謝した従業員は、
仕事にも意欲的に取り組みました。この会社では従業員の最高年齢
者は82歳です。これが中小企業ならではの強みだと感じました。

新井正彦

10/10/11 00:31 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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