経営お役立ちコラム
中小企業における高年齢者雇用(1)

【高年齢者雇用確保措置の導入】

平成18年4月「高年齢者雇用安定法(改正)」の施行により、定
年(65歳未満のもの)の定めをする事業主は高年齢者を対象として
満65歳まで雇用する制度を導入することが義務付けられました。
この雇用確保制度の内容は次のうちの一つを導入することです。

① 満65歳までの定年の引上げ
② 満65歳までの継続雇用制度の導入
(労使協定基準による選別も可能)
③ 定年の定めの廃止

法律の改正から既に4年が経過し、東京労働局が昨年発表した資
料によりますと、従業員が31人以上の事業所では既に95.7%の企
業が導入を終了しているとされております。しかし、その状況を規
模別に調べますと、大企業が98.7%であるのに対して中小企業では
95.1%となっており、今後の施策の中心は中小企業を対象とするも
のとされております。
雇用確保措置の内訳は、定年の定めの廃止が2.9%、定年の引上
げの措置を講じた企業が14.6%、継続雇用制度の導入が82.5%とな
っており、この傾向は今後も続くものと思われます。東京労働局と
しては未実施企業を対象として指導を強めるとともに、ハローワー
クと提携して、従来調査の対象となっていなかった従業員が30人
以下の企業に対しても、個別指導を強化するとしております。

【多様化する高年齢者雇用】

中小企業が高年齢者の確保措置を講ずるにあたってぜひ考慮し
たいことは、高年齢者の特性を理解して、従業員の要望を斟酌した
雇用管理を実施することです。該当する対象者との話し合いを深め、
お互いが納得のできる雇用形態を採用することが望ましいというこ
とです。
高年齢者雇用アドバイザーとして多くの企業と接触してきた経験
からすれば、従来と同じ雇用を単純に続けるのではなく、たとえば
短時間制や短日勤務を導入して勤務時間の配慮をするとか、時間外
労働を極力少なくして過度の労働負荷を避ける等の配慮は欠かせま
せん。60歳を過ぎた高年齢者の場合、単なる経済的な理由で働くこ
とを希望するだけではなく、健康を保持したいという欲求や、自分
の時間を充実させたいという人も少なくありません。

【ワークシェアリングの導入】

このような背景のもと、最近増加しているのがワークシェアリン
グです。一つの仕事を2人あるいは3人で分担することにより、生
産性を向上させようとする工場が増えています。高年齢者同士ばか
りでなく、若年者との組合せにより、きめの細かい顧客対応を図っ
ている店舗、また、早朝や週末の作業を高年齢者に任せることによ
って、設備の効率的な稼動を図っている企業、営業と物流を分けて
担当することにより、作業が専門、特化され成果を挙げている会社
などそれぞれに工夫を凝らしています。

【ペア就労による技能の伝達】

高年齢者が持っている知識や経験、熟練技術を職場に伝承するた
めに若者とペアを組んで成果を挙げている企業があります。この場
合、漠然と組合せをつくるだけではなく、「誰に」「何を」「いつまで
に」と、命題を最初に明示しておくことが大切です。そのことによ
り高年齢者も張合いを持って後輩の指導にあたり、また後輩も意欲
的に学び取ろうとする姿勢が生まれます。「ペア就労により世代間の
コミュニケーションが充実した」と語っている経営者もおりました。
一般的に新規採用が困難な中小企業にとって、永年働いてきた高
年齢者は貴重な戦力です。○○歳になったからといって機械的に排
除するのではなく、いろいろと知恵を絞ることにより、企業も従業
員も、そして顧客も満足できるような職場を構築したいものです。
雇用の多様化とも関連しますが、次回は継続雇用者の賃金について
考えてみましょう。

新井正彦

10/09/27 03:20 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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