経営お役立ちコラム
成長を加速させる株式公開 ~知られざるIPOの舞台裏~ 第3話 企業価値決定の舞台裏「ロードショー」とは?

ロードショーと言えば、一般的には映画の封切りを表すかと思いますが、金融業界においては、IPO前に機関投資家を訪問する一連のアクションをこのように表現します。機関投資家とのミーティング直後に「会社の魅力やリスク等」についてアンケート調査を行います。アンケート結果は、その後の公募価格決定に大きく影響するため、発行会社の資金調達を成功させる上で、ロードショーは非常に重要なイベントになります。

 

■ロードショー(プレ・マーケティング)とは?

上場承認後に行われる機関投資家とのミーティング。上場承認時に目論見書に記載された株価は、まだ投資家の需要を確認する前の「想定価格」であるため、価格発見能力に優れた複数の機関投資家による評価や株式購入意向等を把握し、それらを参考に「仮条件の価格帯」を決定していく必要がある。ロードショーでは、「One-on-One(ワン・オン・ワン)」と呼ばれる機関投資家との個別ミーティングと「ラージ」と呼ばれる大人数の投資家向け説明会の2種類がある。

ロードショーは上場承認日の翌日から10営業日程度、毎日、数社の機関投資家を訪問します。各ミーティングの間隔は30分程度と非常にタイトなスケジュール構成の為、移動はハイヤーを利用する会社が多いようです。私がIPO準備を担当した企業でも、代表取締役と1~2名のスタッフでチームを結成して、早朝からハイヤーで東京駅周辺を中心に連日、機関投資家を訪問しました。ちなみにロードショーのスケジューリングは上場承認直後(15:30頃)に主幹事証券会社の担当部署が一斉に行う為、具体的な日程は上場承認日の19:00くらいにならないと固まらないようです。

 

■ロードショーの1日

09:00-10:00 機関投資家A

10:30-11:30 機関投資家B

11:30-13:00 ランチ・移動

13:00-14:00 機関投資家C

14:30-15:30 機関投資家D

16:00-17:00 機関投資家E

 

ところで、ロードショーの成否はどのように判断するのでしょうか?実は、一般投資家であっても、目論見書に当初記載されている「想定発行価格」とロードショー後の訂正目論見書に記載される「仮条件の価格帯」の差額からロードショーの成否を推察することが可能です。一般的には、仮条件の価格帯が想定発行価格より高ければ、ロードショーは成功、低ければ失敗と判断されるようです。

平成28年にIPOした企業の事例で、具体的に見ていきましょう。例えば、6月29日に東証一部に上場した株式会社コメダホールディングスの場合、当初の想定価格1,960円に対して、仮条件の価格帯は1,780~1,960円と切り下がっており、機関投資家から厳しい評価を受けた可能性があります。一方で、7月15日に東証一部に上場したLINE株式会社の場合、当初の想定価格は2,800円であったのに対して、仮条件の価格帯は2,900~3,300円と切り上がっているので、投資家の需要が高く、ロードショーが上手くいったと考えられます。

 

さて、ロードショーではどのような説明が行われているのでしょうか?東証マザーズ上場企業の場合、その参考となる資料が「成長可能性に関する説明資料」として、開示されています。

例えば、平成28年3月に上場した株式会社PR TIMESの「成長可能性に関する説明資料」は、「1.会社概要、2.事業環境、3.会社の強み、4.成長戦略」といった構成になっています。また、6月に上場した株式会社ストライクの場合は、「1.会社概要、2.市場動向、3.当社の特徴・強み、4.成長戦略」という構成になっています。つまり、「当社がターゲットとしている市場は成長市場なのか?」、「その中で当社はどのような差別化・特徴を有しているのか?」、「今後、どのような戦略で成長する計画なのか?」という視点で、機関投資家向けに説明を行っていることが分かります。

 

中小企業の経営においても、事業計画を策定する上で、非常に参考となる内容が多く含まれていますので、興味がある東証マザーズ上場企業の「成長可能性に関する説明資料」を一度、調べてみることお勧めします。

 

吉村 崇司

17/01/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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