経営お役立ちコラム
契約に関する基礎知識

(1)契約って?

 事業を進め、また日常生活を送るにあたっては、必ず別の業者、人物との間で何らかのやりとりがあり、それが契約に基づいてなされること多くあります。それでは、契約とは一体何でしょうか?

 契約とは、簡単に言えば、当事者の意思が合致した決め事であって、その内容について法的な拘束力を持つものです。つまり、当事者間の約束事があり、それが守られない場合は、国家権力である裁判所が判決のような法的な強制力を持って実現させうるものということになります。

 日本の法律上は、一定の場合を除いて(例えば、保証契約は、民法上書面作成が必要とされています。446条2項。)、契約成立のために決まった書面を作成することが必要とはされていません。そのため、口頭での合意またeメール等でのやりとりなどによっても場合によっては契約が成立することがあります。それですので、世間では、いろいろな種類の契約が、多数日常で発生し、実行されているわけです。

(2)契約書の重要性

 前述のように、契約成立のためには書面が必要というわけではありませんが、契約を結ぶときに、契約書を作成することが多いことはご承知の通りです。ではなぜ、契約書を作成するのでしょうか?

 それは、後々紛争になったときに、自らの主張できる内容を予め書面化しておくことで、裁判所に自らの主張を認めてもらいやすいようにするため、要するに証拠として残しておくことということです。口頭での合意のみでは、権利を主張する側の事実関係の証明が難しくなることは大方予想が付くと思います。

 日本人のメンタリティとして、いちいち書面で厳しいことを取り決めないほうが、逆に信頼関係が構築できるからということで、契約書をきちんと作成せず、取引を行うことがあります。良好な関係にある場合はそれでも支障がないですが、何かトラブルがあったような場合、そうはいきません。双方が合意していたと思っていたことが、実は互いに違う理解をしていたということもありえます。それ故、当事者双方が認識していることを書面化し、紛争になった場合の手がかりとする、というのが契約書を作成する意味です。

 もちろん、契約書が存在していても、その解釈をめぐって争いになることもあり、その場合は従前の経過ややり取りしていた資料が解釈の根拠となる場合もあります。また契約書を作成していても、条項の作り方によっては、記載のない口頭での約束が契約内容として認定されることもあり得ます。従って、「契約書に記載があることだけが内容」「契約書に書いてないから関係ない」などという理解のみでは、思わぬ問題が生じる可能性があります。

 ちなみに、書面の表題が「合意書」「覚書」「念書」等「契約書」となっていなくても、原則として契約書と同様の法的拘束力があります。内容によっては付随的なものにとどまることもありますし、法的拘束力が無いような場合もありますが、表題の表現を変えただけでは法的拘束力に特に差がないということは理解しておきましょう。

 中小企業の事業活動においては、契約書が存在せず、個別案件の発注書、発注請書のやり取りによって、取引を行っていることが比較的多いと思いますが、その場合でも、少しでも不測のリスクを回避し、紛争解決の手がかりとするために、基本取引契約書を作成しておくことをお勧めいたします。

丸山 幸朗

18/11/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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