経営お役立ちコラム
商いの基は商品なり

「商いの基は商品なり」この言葉は本社から出向してある会社の
社長となり、一世を風靡するまで有名にしたパンチェーン店の社長
の言葉です。

その社長が私ども小売業の社長を兼務していた時に常に言われて
いた言葉です。最初はどういう意味かよく分かりませんでしたが、
毎週毎週、会議でお話を聞き、また、売場で実行していく中で徐々
にですが理解できるようになりました。口で言うのは簡単ですが、
なかなか行動に移すには難しいですね。

小売業を営んでいく中でやらなければならないこと、また、同業
他社の様子から流れに乗り遅れまいとやっていること、すべきこと
が多すぎて何からすべきか、よく分からない、となっていませんか?
売場は清掃が行き届き清潔感があるか、商品はきちんと並べられて
いるか、プライスカードはちゃんとついているか、季節感のある
商品展開となっているか、販売計画の作成、売上目標の作成、チラシ
掲載の写真撮りや校正、取引先との打ち合わせなど、毎日仕事が
たくさんで忙殺されているのが現実ではないでしょうか。

売上目標が達成出来なければ、なぜ達成出来なかったのか、今日
の負けはいつ取り返すのか、などなど、私も経験してきましたので
よく分かります。でも、よく考えてみてください、そんなに小売業
とは難しいものでしょうか?私は違うと思います、みんなでああだ、
こうだ、と難しくしているのではありませんか、本当は、商売ほど
楽しい仕事は他には無い、と私は思います。

例えば、商売を1本の木に例えるとするならば、幹となるべきもの
があって、その先に枝があって、各枝の先に葉っぱが茂っている
と考えるならば、幹となるべきものは販売している商品そのもので
あると私は思います。商品力を高めることなくして、笑顔での接客、
きれいなディスプレイ、分かりやすい商品展開・・・などにいくら
力を注いでも売り上げは向上しないと思います。では商品力を高める
にはどうすれば良いのでしょうか?

小売業にとって商品力とは?

私はこう思います。商品力とは、店(経営者)の考えや思いが
商品からにじみ出ている状態ではないかと思います。そして、
それがお客様にも理解され、受け入れられている状態だと思います。
具体的に私が体験した例でお話します。

私が紳士肌着・ナイトウェアという商品を担当していた時のこと
です。売上げは低迷を続けていました。金額にすると年間5千万円
の売上げでした。ある会議の席で社長からこう言われました。「君の
パンツはどこで買っているか、奥さんに聞いたことがあるか?」
その時に気付きました。郊外型の店舗は都心店と違って地域密着で
狭い商圏の範囲のお客様を相手にしていかないといけない。私の担当
の品揃えは都心型の品揃えとなっている。地域に密着した値ごろな商品
の品揃えが欠けている。

そしてアパレルといえども商品は鮮度が命、たとえ定番商品でも
常に新しい商品を置いておかなければ、お客様には購入していただ
けない。という思いから、早速、新規取引先を開拓し、郊外店の地域
に合った、値ごろ感のある商品の幅を多くし、価格の高い商品は
アイテム数を絞り込む、という作業を行いました。季節により、
夏は涼感のある商品を前面に、冬は防寒の肌着を前面に、基本の肌着
は年間定番として常時展開し、真夏でも需要があると仮説を立てて、
防寒肌着は1種類展開し、真冬でも涼感肌着の展開は1種類展開する、
といった大幅な展開面の見直しを行いました。

また鮮度を重視し、毎週1回から2回、発注することを心がけ、
定番といえども値札に月番を振り、古い商品は売場に出さないよう
にしました。ナイトウェアに関しても同じ考えの元、商品展開の
見直しを図りました。その結果、1年後には年間売り上げが9千万円
まで伸び、3年後には約2億円の年間売り上げを達成することが
出来ました。その間、売り場スペースが広がったわけでもなく、
平均在庫も高額品を減らしボリュームゾーンを増やしたこと、
毎週1回から2回の発注をすることにより、余分なストックを
もつことが無くなったことから、在庫は減少いたしました。商品
回転率が高くなり、常に新鮮な商品が売場に並んでいるといった
最適な状態になりました。

私がこれこそ本当の商売だ、と感じた瞬間であります。

商品自ら「当店の商品はいつも鮮度が良いですよ、値段は適切
ですよ」と訴えかけ、お客様とお店とが信頼関係で結ばれている
状態、これらのことが商品を手に取っただけで分かる状態を
滲み出るというのではないかと思います。

「商いの基は商品にあり!」

藤田潔

11/09/12 06:03 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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