経営お役立ちコラム
会社を守る、社長を守る、中小企業のミニマムコンプライアンス術

 ここ数年大企業の不祥事やトラブルが相次いで発覚し、連日関連記事が新聞の紙面をにぎわせています。コンプライアンス違反やリスクマネジメントができていないなど、カタカナ英語を多用した難解な記事が多く、ともすれば大企業を対象とした遠い世界の話しだ、なんて思っていませんか? 本稿では、中小企業の日常の基本業務に焦点をあて、中小企業の身の丈にあった、ミニマムコンプライアンス術(必要最低限の法令遵守の態勢づくり)を考えてみたいと思います。

(1)今や、社会の目は中小企業にも厳しい

 厚生労働省は、2017年から労働基準法や労働安全衛生法など労働関連法令違反企業をHPで公表し始めました。(労働基準関係法令違反に係る公表事案:458社公表・2018年5月31日公表分)。同省は、このような違反状態にある労働環境の改善を企業に強く促すため、違反企業の公開に踏み切りました。公表されている企業の70-80%は中小企業といわれています。法令違反について、会社規模の大小は関係ないという同省の厳しい姿勢が感じられます。

 また、東京商工リサーチ(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180404_02.html)によると、法令違反に関連した倒産は年間200件ほど発生し、そのうち半数が中小企業です。法令違反による倒産のリスクは、中小企業にとっても切実な問題となってきたといえそうです。違反原因のトップは、横領や粉飾などの経理関連、2番目は労務・業法などの法令違反となっています。

(2)ミニマムコンプライアンス術にはメリットがある

 「法令遵守の重要性は理解できるが、時間がない、面倒くさい」と二の足を踏んでいる経営者の方もおられるでしょう。そこで、実践することの意義・メリットを考えてみます。
対外的には、お客様を含めた外部関係者との信頼関係の醸成や企業の評判向上が期待できます。金融機関の中には、このような取り組みを積極的に評価する動きも出てきています。
社内では、経営者と社員が連携してこの取り組みを実践することで、明るく風通しの良い職場に生まれ変わることでしょう。また、定着率向上や採用にも役立ちます。結果として、将来発生するかもしれない損失を未然に防止する態勢が整うことになります。

(3)ミニマムコンプライアンス術を考える

 「ミニマム」で対応するポイントを考えてみましょう。一つ目は、発想の転換です。法令を面倒くさいルールと考えるのではなく、会社を、社員を、そして何よりも社長自身を守る、心強い「無料の保険」と捉え直し、徹底的に利用してはいかがでしょうか。二つ目は、日常の基本業務に特化した取り組みです。分野としては、三つ考えられます。社員の労務管理、製造や品質管理、及び経理などのお金管理です。新たに一から作成するのではなく、既存の基準・ルールを見直し、活用しましょう。そして一番重要な三つ目は、経営者の心構えと行動です。経営者が宣言・行動することで、初めて社員の納得感が得られます。社員は、経営者の行動を見ています。

(4)おわりに

 大企業と違って、ひとたび不祥事やトラブルが発生すると、中小企業は会社存続の危機に直面しかねません。資金や人材が十分とはいえない中小企業にとっては、身の丈に合ったミニマムのコンプライアンス態勢の整備が急がれます。まずは日常の基本業務の焦点をあて、そこに潜む弱点をひとつずつ改善する所から始めてはいかがでしょうか。

木村 充

18/10/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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