経営お役立ちコラム
事業承継の問題

 事業承継を考える経営者にとって、親族内に後継者候補がいる場合と、そうでない場合では、悩みが大きく異なります。
 前者は、「どう後継者に継ぐか?どう教育するか?」となり、
 後者は、「誰に継ぐのか?どう継げばいいのか?」という悩みになります。
               
 円滑に親族が事業承継してくれたのは、もはや過去の話。多くの経営者の悩みは、後継者不在です。データを見ても、2025年において70歳以上になる経営者の割合は、60%以上になり、そのうち約半分は後継者未定(後継者が決まっていない)という推計(中小企業庁)をしています。

 つまり、後継者不在のまま、事業承継の準備もできていない経営者が多数いらっしゃるということです。

 私の周囲の経営者においては、このような声が聞こえきます。

「子どもはいるが、大手企業に勤めている。親の会社に戻ってくる様子はない。」
「この会社を無理やり継がせたら、子どもが可哀想だ。子どもの選択を優先したい。」

 など、昔のように「子どもが親の会社を継ぐ」ことが当たり前ではなくなってきています。

 このような中で、自社の資源を未来にどう残していくのか?このことに早い段階で、取り組んでいく必要があります。

第三者承継のススメ

 「子どもが継がないのなら、従業員に継がせればいい。」

 という考えもあります。ですが、実際には、株式の相続の問題、従業員の経営者になる意欲と能力など、さまざまな点で踏み切れない経営者が多いように感じています。(もちろん、従業員承継で成功している企業も多々あります。)

 子どもにも、従業員にも、事業承継しないのであれば、第三者承継(M&A)を考えることになります。

 自社に、未来に残すべき技術や社員という経営資源がまったく存在しないのであれば、「廃業(会社清算)」という選択も考えられます。しかし、本当に自社の中に次世代に残すべき技術や社員が存在しないのでしょうか?

 優秀な経営者ほど、謙遜されるので、

 「うちなんて、大したことないよ。」

 と考えているかもしれません。しかし、他社から見れば、喉から手が出るほど欲しい資源かもしれません。ですので、一度、自社の「事業性評価」を外部の専門家から受けてみるのがいいかもしれません。

 事業性評価の中では以下のような項目をチェックします。

1)財務諸表上の資産と負債の実態調査
 決算書上の資産・負債ではなく、時価ベースに沿って計算し直した資産と負債を算出します。
2)財務諸表に表せない事業・経営資源の調査
 自社でしか製造できないような特殊な設備の存在、職人の技術、営業ノウハウ、人材を育成するしくみ、など、自社独自の経営資源・強みを評価します。
3)将来の営業利益
 自社で抱える経営資源・強みを最大限活用できたときの、将来に渡って得られる営業利益を算出します。

 3つの視点で、事業性を評価し、企業価値が算出されます。その企業価値こそが、第三者に自社を売却するときの譲渡価格のベースとなります。
※そのまま譲渡価格になるかは、ケースバイケースになります。

 いきなり第三者に承継(M&A)することを考えるのは、ハードルが高いことかもしれません。自社を譲渡することが前提ではなくても、自社の企業価値を算出することにより、今後の事業の方向性を考えるきっかけになるかもしれません。自社の健康診断と思って、一度外部の専門家に、事業性評価を依頼されてはいかがでしょうか。


<<執筆者>>

田邊佑介
2005年、中小企業診断士登録。
2004年より経営コンサルタントとして活動。
営業強化の専門家として、中小企業の売上アップに貢献。
近年は、スモールM&Aのアドバイザーとして活動している。

株式会社そだてる 取締役
株式会社カンガルー 代表取締役
一般社団法人 日本M&Aファースト推進機構 代表理事

20/08/31 21:00 | カテゴリー:,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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