経営お役立ちコラム
事業戦略とマーケティング

1.何から手をつけるべきか

前回、事業計画書の一般的な構成として次の8つの項目を提示
しました。
(1)エクゼクティブサマリー
(2)創業の経緯
(3)経営陣
(4)業界/市場の展望
(5)製品/サービスの特徴と優位性
(6)財務計画と資金需要、使途
(7)タイムテーブル
(8)リスクファクター/問題点とその対策

実際に事業計画書を作成する際は、おおむね以下の流れに沿って
進めていきます。
(4)(5)→(6)→(8)→(7)→(1)(2)(3)

ここで重要なのは、各ステップは常にそれ以前のステップで検討
した内容との整合性を確認しながら進めていくということです。
場合によっては、計画全体の見直しを迫られる事態も頻発するかも
しれません。逆に、辻褄あわせを財務やリスク対策で行ってしまうと、
事業計画書はただの画に描いた餅に終わってしまいます。

2.フレームワークの利用で「客観性」を担保

(4)業界/市場の展望、(5)製品/サービスの特徴と優位性についての
項目では、「なぜその製品/サービスが顧客に支持されるのか」を
客観的な事実や数値によって証明することが重要です。

ここでのポイントは、「客観的」という点です。これは、金融機関
や投資家を含む、多数のステークホルダーに、経営者の独りよがり
ではない、事業の魅力度を納得してもらうためです。それには、
ビジネスでよく使われるフレームワークに基づいた説明が適して
います。
よく使用されるフレームワークに、外部環境とそれに対する自社
の戦略を説明する「3C(Customer 市場、Competitor 競合、Company
自社)」、自社のマーケティング戦略を考える「4P(Product 製品/
サービスそれ自体、Place 流通、Price 価格、Promotion 販売促進)」、
事業の構造や、その中のどこに自社が強みを持つかを示す「バリュー
チェーン分析」といったものがあります。

3.自社の商品・サービスの魅力は?

中小企業や創業時に作成する事業計画書を念頭に置いた場合、
最低でも検討しておきたいのがマーケティングの「4P」分析ですが、
そのとき、絶対に忘れてはならないのが、お客様の視点です。
あなたがお客様に提供するのはどんな製品/サービス(Product)で、
お客様はそれにいくら支払えるのか(Price)。お客様はどうやって
あなたの製品/サービスを知り(Place)、なぜ他ではなく、あなたの
ところから買いたいと思うのか(Promotion)。

お客様から見たあなたの会社の存在理由がしっかり説明でき、
さらに財務的な裏付けがとれる(次回で触れていきます)ことが、
事業に対する外部からの評価につながります。

4.中小企業がとるべき戦略とは

問題は、その「4P」を使ってどのような戦略を立てるかです。
強い競合に、弱小企業が立ち向かうには、どんな戦略が有効なの
でしょうか。
経営戦略論としてよく知られる「ランチェスターの法則」では、
その原則を示しています。その要点をまとめると、(1) 差別化、
(2) ナンバー1、(3) 1点突破 の3点に集約されます。

この戦略によって業界独自の地位を築いている企業をご紹介しま
しょう。100円ショップ業界5位の、株式会社ワッツです。
この企業の戦略は、業界大手が着目していない、アクセスが不便
なショッピングセンターやスーパーの一角に(=差別化)、いち早く
(=ナンバー1)小規模な百円ショップを作って淡々と稼ぐ(=1点突破)」
というもの。その実行のために毎年100店出店する一方、約50店を
閉鎖しています。社長いわく「ダイソーが来たら逃げる」戦略です。

一方で、生活雑貨においては、質・量ともに「圧倒的なお買い得感」
を実現することで、お客様の満足度向上を図っています。
結果として売上高は407億円(2012年現在)と、業界最大手のダイソーの
1/8以下であるものの、景気の低迷する中にあって、売上、利益ともに
3~4%の成長を維持しているのです。
自社が、いわば「勝負をかけ(られ)る」要素を明確にし、4つの
「P」の整合性をとった戦略を考え、限られた経営資源を集中しつつ、
競争を回避する――着実な成長を達成できる方程式を、このワッツ
の事例は教えてくれます。

最終回となる第3回では、財務・資金計画、およびリスクファクター
の考え方についてご紹介していきます。

住田陽子

12/11/25 09:46 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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