経営お役立ちコラム
中小企業の事業承継計画

高齢の経営者に代わる若い後継者を決めて事業を承継し、会社を継続・発展させることは、会社という独立した事業法人の観点からは中長期経営計画といえる。

株主の持分が分散しているため経営権をもって会社を支配する特定の株主がいない上場企業では、所有と経営は分離している。このような上場企業ではゴーイング・コンサーン(継続企業)が前提となっており、事業を途中で清算することなく、将来にわたって無期限に事業を継続することが原則である。経営者の若返りは、事業を永久に継続させるためのプロセスであり、中長期経営計画の一環と考えられる。

一方、中小企業ではオーナー経営者が会社を支配し、所有と経営は一致している。しかし、従業員の雇用、取引先の商取引の維持、顧客の要望などから、多くのオーナー経営者は引退後も事業の継続を考え、そのための方法を検討している。このような場合にも、事業承継計画は事業を継続させるための計画であり、中長期経営計画の一部といえる。

事業承継計画を立てるには、まず、会社の経営資源と経営リスク、経営者自身と後継候補者の状況、相続を行うときに予想される問題点などを整理し、現状を客観的に分析することからスタートする。

そして、相続時の税金や法的な問題に配慮しつつ、後継者の育成と社長交代の時期、社内外への発表のタイミング、後継者への自社株式の贈与、他株主からの金庫株の取得などについて、今後10年間にわたる計画を図にまとめるのである。

2008年に経営承継円滑化法が成立し、それにともない2009年4月に事業承継税制が改正された。事業承継に係わる相続税や贈与税の納税猶予制度、民法の遺留分に関する特例、金融支援など事業承継の円滑化に向けた総合的な支援策が制度化されている。事業承継計画の立案に際しては同法の適用を検討することをすすめたい。

10/06/17 23:23 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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