経営お役立ちコラム
中小企業におけるダイバーシティの取り組み

1.ダイバーシティ経営の必要性

 ダイバーシティとは、多様性を指します。ダイバーシティ経営が必要な理由は、大きく2点が挙げられます。1点目は人材不足の解決策として、2点目は変化が激しい市場ニーズへの対応策として活用できるためです。

2.中小企業におけるこれまでのダイバーシティ

 近年ダイバーシティ経営は、重要視されるようになってきましたが、中小企業においては、以前から「ダイバーシティ経営」は進められてきたというのが筆者の認識です。
 一般に、大学や大学院の新卒者は、大企業志向が多いかと思います。一方、中小企業は、大企業や中小企業での勤務を経験した後、中途で入社するケースや、高校や専門学校卒業者が新卒入社するケース、パートタイマーや家族労働者、外国人労働者や研修生の受け入れなど入社の形態は多様です。つまり、中小企業における人材はもともと多様でした。

3.大企業におけるダイバーシティの取り組み

 一方、近年、大企業も多様な人材に目を向けるようになりました。これまでは、大学・大学院の男性を中心とした新卒者や、即戦力と期待する中途者の採用が大半でしたが、性別・年齢などを問わず、優れた人材を採用するように変わってきています。
 
4.中小企業のこれからの人材確保

 つまり、中小企業が獲得していた人材を、大企業も求めるようになりました。よって、中小企業においては、これまで以上に人材の確保に工夫が求められると言えます。
 
 多様な人材が、「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりが、人材の確保には不可欠です。理由は、(1)働き続けられる環境を整えることで離職防止に繋がり、個人のキャリアが中断されずに済むため、(2)企業のノウハウが流出・離散するリスクを防止するため、(3)企業が手塩にかけ育てた人材が流出すると、退職人材の代替者の採用やゼロから人材を育てるコストが必要となるため、などが挙げられます。

 ダイバーシティと聞くと、出産・育児に伴い、出産前と同じ条件で働き続けることが困難な女性の活用をイメージされるかもしれません。しかし、これからは介護離職が大きな問題になります。具体的には、家族の介護のため、これまでと同じ条件では働くことが困難になるのです。出産で離職しM字カーブで表された女性だけでなく、介護は男性にも関わる現象です。一般に、介護の必要となる時期(開始・終了)は読めないと言います。例えば70-80歳の親を持つ、40-50歳の従業員が介護離職すると、同条件で再雇用されることが難しいのが実情です。理由は、(1)高齢になるほど企業側が採用に前向きにならないため、(2)求職者側が得意な仕事の募集があるとは限らずミスマッチが起こるため、などが挙げられます。

5.これからダイバーシティに取り組むことのススメ

 では、働きやすい環境づくりとは、どのような取り組みが必要でしょうか。様々挙げられると思いますが、筆者は「従業員が休みを取りやすい環境が整っていること」を挙げたいと思います。

 それを実現するためには、単能工、属人化を脱する必要があります。複能工や多能工化、チームで仕事をする体制を組むなど、誰かがすぐに代わりに対応できる状態を整えておくことが必要です。複数の仕事ができるよう人材教育・訓練の実施や、社内コミュニケーションの向上による協力体制の醸成、マニュアルの整備やIT化の推進など、一つずつ実行することが、目指す姿の実現に繋がります。

 なお、これらの取り組みは、震災や災害などがあった際にも同様に活用することができます。どのような事象が発生しても事業を継続し、事業の成長・発展を目指すため、今こそダイバーシティについて考えることが求められています。

<<執筆者>>

冨坂 明代(とみさか あきよ)
城西国際大学大学院経営情報学研究科起業マネジメント専攻修了。営業、調達、マーケティングに携わる。2019年中小企業診断士登録。経営学修士(MBA)。ITコーディネータ。事業承継士。東京都の下町出身。

20/04/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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