経営お役立ちコラム
リモートワークの可能性について

このところのコロナ禍で「テレワーク」「リモートワーク」「ワーケーション」と言った言葉を最近よく耳にするようになりました。いずれも、働き方改革の一つとして以前からあった言葉でしたが、コロナにより密を控える状況が出てきたためにこれらの導入が大手を中心に一気に進んだ感じがあります。

1.テレワークとリモートワークの違い

テレワーク(telework)とリモートワークは会社の仕事を会社以外のところで行うこととして同じ意味で使われることが多いのですが、厳密にはその定義は少し異なります。

◆テレワーク(tele=離れている場所 + work=働く)

実は1980年代より使われている言葉で、総務省により「テレワークとは ICT と呼ばれる情報通信技術を活用し、場所や時間を有効に活用する働き方」と定義されています。要するに国で定義が定められている言葉ということです。

また、テレワークには以下の3つの区分が定められています。

1:在宅勤務  自宅で働く勤務

2:モバイル勤務  移動中やカフェなど外の場所からモバイル通信機器を接続して勤務すること。IT関連や営業職の人が自分の会社へPCで接続して働く場合はこれに該当します。

3:サテライト勤務 自社以外の定められた場所(特定の施設やシェアオフィス、コワーキングスペース)で勤務すること。通信環境は揃っているケースが多い

◆リモートワーク(remote=遠隔 + work=働く)

こちらは明確な定義がなく、ほぼテレワークと同じ意味で使われることが多いのです。公的機関は「テレワーク」、民間企業は「リモートワーク」を使う傾向にあります。また、以前からコワーキングスペース等を利用するフリーランスやスタートアップの人の働き方を指す言葉(リモートワーカー)に使われることもあります。テレワークが明確に企業の制度としての勤務を指しているのに対して、リモートワークは自発的に働き方を変える人が使うとも言えますね。

2.コワーキングスペースの活用と効果

今回のテレワークが広まった結果、自宅では家族がいるため仕事がしにくいと言う声も多く聞かれました。家族からみれば家庭の中に仕事が持ち込まれた感じになるため、双方にとってやりにくい状況が多かったようです。

そこで、注目されるのがサードプレイス(第三の場所)としてのカフェやコワーキングスペースです。特にコワーキングスペースは「ふらっと行ける働く場所」として通信環境も揃っており(多くの場合は)、セキュリティー的にも安心して使えます。(通信機器自体のセキュリティーは利用者が注意する必要があります。)

ちなみに、コワーキングスペースと言っても、大手企業が運営する不動産系の設備や環境に力を入れているもの、商業施設併設や託児所完備など利便性を重視したもの、地域に暮らす人々と密接無関係にあるもの、スペース内のコミュニケーションに重点を置いているもの、インキュベーションマネージャがいるもの、と様々な個性を持つスペースがあります。

コワーキングスペースがシェアオフィスと異なるのは、働く行為をシェアしコミュニティーを形成するというところです。そのコミュニティーの中から新しいモノやコトが生まれていく(一種のオープンイノベーションとも言えますね)ところが大きな特徴です。

3.アフターコロナに向けて

これから(現在もですが)の中小企業では人材不足とアフターコロナへの対応が必要になってきています。

人材不足の面では働く側の意識の変化があります。デジタルネイティブと言われている90年代以降に生まれた世代では、都心で働くよりも地元で働きたいと人数の割合も増えています。また、コロナ禍で地方(首都圏の場合は関東圏が多い)への移住ニーズも高まってきました。そこで、会社に社員を集めるのではなく、やる気があり有能な社員を会社のメンバーとしてリモートワークを活用して迎え入れるという形が考えられます。リモートワークの導入はそう言った環境の変化に対応することにもなります。

アフターコロナへの対応では国からも事業再構築補助金が出てきたように既存事業の転換(アフターコロナへの事業の最適化)が求められつつあります。そこで必要なのはイノベーションです。ここでも、コワーキングスペースのコミュニティーを活用することが可能になります。現在はコワーキングに集まる会社は個性的な会社の従業員や個性的な能力を持つフリーランサーが多い状況です。自社の社員がコワーキングスペースを利用し、このような人々との交流をすることで、自社のイノベーションにつながる可能性があります。

4.ワーケーションと2拠点活用した働き方

さらにもう一つの流れが、ワーケーション(work=働く + vacation=余暇)・コロナで打撃を受けた観光業へのテコ入れとしたGo Toキャンペーンとセットで各地方自治体が働く場所の受け口になり、余暇をしながら働くワークスタイルを薦めたことから有名になりました。地方自治体主催のワーケーションモニター募集なども多くあり、中には参加者に地方の課題解決の手を貸して欲しいと言った内容のものもありました。コロナ以前から、人口減少に悩む地方にとっての移住目的としたのワーケーションはありましたが、実際に移住となると転職を始め人間関係の再構築などハードルはなかなか高いものでした。しかし、リモートワークをはじめとするIT活用が一般化したことで、転職せずに移住することが可能になりつつあります。さらに、ワークスタイルとして週の数日は都心で他は地方といった働き方や、常に多拠点を巡りながら東京の仕事をする働き方をする人も出てきました。これらの人々が働き場所として地方のコワーキングスペースを活用し始めています。

これを企業から見れば、社員を通して地方の課題解決や地方発のイノベーションと関わるきっかけになります。そういった時に、地方のコワーキングスペースを社員が利用することで加速させることが可能です。ちなみに、余暇として地方でコワーキングスペースを活用するのでこれをコワケーション(Coworking + Vacation)と言うそうです。

ちなみに、コロナが落ち着いたらこの地方が世界各地になるかもしれません。そう考えるとワクワクしますね。

このように、人材不足を補い、イノベーションを起こすための一手段として、リモートワークやコワーキングスペース、ワーケーションを活用することは、企業のBCP対策や持続的成長につながります。今まで無理だと思っていたことが覆りつつある今回のコロナ禍。あなたの企業の働き方も見直してみてはいかがでしょうか?


<<執筆者>>

平野 匡城(ひらのまさき)
2018年診断士登録、城跡広場(https://siroato.net)主宰。
移働(リモートワーク・多拠点・コワーキングスペース運営)、IT導入・改善、スタートアップ、
創業・新規事業などを知的資産経営の観点から支援している。

21/04/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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