経営お役立ちコラム
ブランディング手法を活用して、組織活性化を図る【第1回】

1.「家業」から、「企業」へ。

 小規模事業者には当てはまらない話だと思いますが、30〜50人規模の社歴も長い会社で、社長一人が空回りしているケースに時々出会うことがあります。業績も停滞状況が続き、どうも社内の空気が澱んでいます。社員の方たちは、“やらされている感”満載で、元気がありません。
 多分10人規模の会社であれば社長個人のリーダーシップで会社は成長していけますが、この規模ぐらいになると、なかなか難しいところです。経営者も、無意識のうちに家業意識が棲みついて、対処方法に困惑されています。プレーヤー意識が強く、どうもマネジメントや社内コミュニケーションを軽く見ているようです。

2.経営ビジョンの再定義を。

 縁あって、そのような会社とお付き合いするとき、私は2つのことを提案します。1つは経営のミッションやビジョンの再定義です。向かう方向が経営者の頭の中にはぼんやりあるのですが、顕在化できていないケースが多々あります。ですから社員の方たちにもそれが伝わっていない。それを見える化させることが重要です。
 経営のミッションやビジョンを再度、言葉にすることを勧めます。その時重要なのは「品質」とか「信頼」とか「顧客満足」とか、通り一遍の耳障りの良い言葉は絶対に使わないことです。どの会社にも通じる言葉は使ってはいけません。この会社でなければならない言葉を見つけ出すことです。その会社のコアな部分から導き出されるワードで、潜在意識のなかに隠れています。そういう言葉でなければ、社員の方たちの心に刺さることはありませんし、モチベーションをあげることにも繋がりません。1つの事例としてあるメガネ屋さんのケースを紹介します。

【事例1】

 ある私鉄沿線の駅近くで、眼鏡店を数店展開している企業です。安売りのチェーン店と高級店の狭間で、ジリ貧状況が続いています。メガネの売り上げは芳しくなく、減少傾向にあります。商品別の売上高を拝見しますと、補聴器の売上が大きく伸びていることがわかりました。
 最近の補聴器は、一昔前のものと比べると革新的に進歩しています。売上が伸びている理由をヒアリングすると、ある一人の販売員の方のカウンセリングによってよく売れているとのことが解りました。私はこの一点にフォーカスし、社長と一緒にビジョンの策定にかかりました。その主な内容は以下の図です。

 商品を売るのではなく、お客様の話を聴いてカウンセリングすることを、経営ビジョンとして掲げました。その結果として、売上に結びついていくのです。
しかし言葉を掲げても、実態が伴わなければ、ただの言葉遊びに終わります。カウンセリング・イメージを実体化するために、この販売員の方のノウハウをマニュアル化することを提案しました。暗黙知を形式知に替える取り組みです。マニュアル化が組織活性化のキーになると判断しました。
 この手法、考えてみれば、ブランディングの手法に通じるものがあります。経営ビジョンは、裏を返せば企業がお客様に提供する「顧客価値」の言葉化です。結果的にインナー・ブランディングが促進され、社員の方たち一人一人がタッチポイントとなって、お客様やステイクホルダーにコミュニケーションされます。企業のブランディングに繋がっていきます。

(次号に続く)


<<執筆者>>


石井 秀明(いしい ひであき)

クリエイティブ・ディレクター、マーケティング・ディレクターとして広告会社に勤務し、2010年中小企業診断士に登録し独立。
新規事業、新商品開発、マーケティング、ブランディング、販売促進、プロモーション等を中心に支援する。他に創業支援、経営改善や経営革新計画も手掛ける。

20/12/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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