経営お役立ちコラム
コーチング実践編(2)認める力

今回は、コーチングの要素として3番目に重要な「認める力」に
ついて解説します。

【認める力とは】

コーチングでは、「人間の可能性は無限」という前提条件を置いて
います。その可能性をうまく引き出してやるのがコーチングです。
その中で、「認める力」は、「聴く力」「問う力」に続き、3番目に
重要なものです。「認める」という言葉の語源は、「見(る)」と
「とめる」です。つまり、「認める」というのは、「相手のことを見て、
心にとめる」ということなのです。

上司が部下を動かそうとする時には、通常は「命令する」という
形を採ると思います。確かに、上司には組織から与えられた権限が
ありますから、上司の命令は聞かなくてはなりません。しかし、
「命令」だけですと、部下は理屈では従わなければならないと
分かっていても、心の中では納得感が得られず、結果としてやる気が
出ないということになりかねません。

やる気がない状態で業務を遂行したとしても、結果は良いものに
ならないでしょう。人間も動物の一種ですから、感情の部分で納得感を
得られて初めて、やる気が湧いてきて、行動の変化がもたらされます。
部下の立場からすると、「認められる」ことにより感情が良い方向に
刺激され、自発的に行動しようとするエネルギーが発生します。

「認める力」とは、部下のやる気を引き出し、その結果として組織に
良い効果をもたらすためのスキルと言えるのです。

【認める力を構成する要素】

さて、実際に「認める力」を発揮するためにはどうすればよい
でしょうか?「認める力」には2つの側面があります。すなわち、
「インプット」と「アウトプット」です。

「インプット」とは、部下との会話や日頃の行動の観察を通じて、
部下に関する情報を収集・蓄積することです。言い換えれば、
「情報収集能力」です。一方、「アウトプット」とは、部下に対し、
「この上司は自分のことを見てくれている」と思わせるための、
メッセージ伝達能力です。これは、「ほめる」という行動に重要な
能力です。

さて、まず「情報収集能力」ですが、その目的は部下の強み、
進歩、成長などを把握し、効果的なコーチングに繋げることです。
そのためには、部下は何に着目して、どのような行動を行なって
いるのか、また、その成果はどのようなものだったのか、など詳細に
観察する必要があります。そして、その結果に基づいて部下を
「ほめる」ことにより、やる気を喚起します。この際に重要なのは、
あくまで事実に基づいてほめることです。事実ではないことについて
綺麗な言葉を並べて伝えることは、「ほめる」ではなくて「おだてる」
になってしまいます。

次に、「メッセージ伝達能力」です。前述の通り、観察の結果を
もとに、良い点を言葉や態度にして部下に伝える必要があります。
この際の留意点としては、同じ言葉ばかり使わないということです。
いつも同じ言葉でほめていては、部下に「この上司は本心でほめて
くれていない」と思わせてしまいます。これを防ぐために、多様な
ほめ言葉のパターンを持っておくと良いでしょう。その他、気を
つける点は、「事実を伝える」ことと「タイミング良く伝える」
ことです。

部下の行動に対して、例えば一ヶ月後に「あの時のあれは良かった」
とほめたとしても、部下はピンときません。部下の良い所を発見したら、
すかさず褒め言葉を繰り出してあげると、部下の心に響きやすい
ものなのです。

以上、「認める力」について解説してきました。「聴く力」、
「問う」と合わせて3つのコーチングスキルを使いこなすことで、
人材管理の観点から経営を良くすることが可能になります。
もちろん、これらのスキルは最初から身につけられるものでは
ありません。日々の行動の中で意識しながら実践することで、徐々に
定着していくものなのです。是非、今日からでも実行してみてください。

中高英明

13/03/10 10:01 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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