経営お役立ちコラム
コーチングの基本と3つのスキル

【はじめに】

企業経営において必要な資源は「ヒト」「モノ」「カネ」ですが、
その中でも最も重要なのは「ヒト」です。経営資源に制約がある
中小企業の場合、「ヒト」の育て方・使いこなし方の巧拙が業績に
与える影響が大です。
本連載では、「コーチング」というスキルの紹介を通じて、いかに
「ヒト」を育成・活用し、企業の成長に繋げていくかについて解説
します。

【コーチングとは】

コーチングは、人の可能性に制限を設けずに信じ、その人の個性
を尊重しつつ信頼関係を築き、自律的な行動を促すためのコミュニ
ケーション手法です。企業においては、経営者から見て、部下を
効果的に育てていくためのアプローチということになります。
「人を育てる」と聞くと、まず「トレーニング」という言葉を思い
浮かべるのではないでしょうか。確かに「トレーニング」は人材
育成の一手法であり、それ自体は非常に重要なものです。しかし、
「トレーニング」は教える側から教わる側への「一方的」な知識・
技能の伝授であり、対象者の個性は考慮されていません。従来に
比べ「個」が確立されている現代においては、このような一方的な
アプローチだけでは人を効果的に育てることは出来ません。

一方、「コーチング」は「双方向」のアプローチです。教わる側の
個性を踏まえてコミュニケーションをとり、その人自身の気付きや
意欲を引き出すことで、その人が本来持つ能力や意欲を引き出す
ものです。
ちなみに、「トレーニング」の語源は「トレイン(電車)」で、
文字通り既に目的地まで引かれたレールに沿って、一方的に乗客を
運んで行くやりかたです。一方「コーチング」の語源は「コーチ
(馬車)」で、目的地まで運ぶという目的は一緒ですが、
予め決められたコースはありません。状況によって最適な道筋を
選ぶことになります。「コーチング」の方が目的地に至るまで
ルートの選択に自由度があるということです。

【コーチングの基本】

それでは、コーチングの具体的内容を解説していきます。まず、
コーチングの定義ですが、元日本コーチ協会理事 本間正人氏の
定義よると以下のようになります。

「コーチングとは、人間の無限の可能性と学習力を前提に、相手
との信頼関係のもとに、一人ひとりの多様な持ち味と成長を認め、
適材適所の業務を任せ、現実・具体的で達成可能な目標を設定し、
その達成に向けて問題解決を促進するとともに、お互いに学び合い、
サポートする経営を持続的に発展させるためのコミュニケーション
・スキルである」

長い定義ですが、その意味するところは「信じること」「認める
こと」「任せること」の三つに集約することができます。

(1)信じること

「信じる」という言葉には、「部下の可能性を信じる」という
意味と「上司部下の間の信頼関係」という二つの側面があります。
部下の可能性を信じて指導しようとしても、そもそも信頼関係が
無ければ、部下のほうは聞く耳を持たないでしょう。信頼関係は、
効果的な指導の前提条件になるものなのです。

(2)認めること

人間は誰もが「認められたい」という欲求を持っています。
認められることによって充足感を得る生き物なのです。部下を指導
する場合にもこの事実を考慮する必要があります。上司の立場から
するとどうしても部下の欠点やミスに目が行って叱責しがちですが、
それだけだと部下は萎縮してしまいます。部下の長所や進歩をほめて
やり充足感を与えることで、成長を促すことが肝要です。

(3)任せること

人間、仕事を任せられるとやる気が出るものです。部下に適切な
範囲の権限と責任を与えて仕事を任せることは、上司の重要な役割
です。ただし、その際には適材適所を強く意識する必要があります。

以上、コーチングの重要性と基本概念について解説してきました。
次回以降は具体的なコーチング・スキルについてお話していきます。

中高英明

13/02/10 09:35 | カテゴリー: | 投稿者:椎木忠行

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